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次の日からウィリアムは少しずつ変わった。
食事の時はユウリに積極的に話しかけている。
「ユ、ユウリ勉強の方はどうだ?」
「は、はい! がんばってます…」
ユウリはチラッと戸惑うように私の方を見た。
いつもは黙っている父親に話しかけられ困惑しているのだろう。
私はそれだけで沈黙する二人の会話に助け舟を出す。
「ユウリは本をたくさん読むから字の覚えが早いそうよ」
「そうか」
ウィリアムがうなずくだけなので私はウィンクしてもっと話せと合図を送る。
するとハッとしてウィリアムが続けた。
「す、すごいな、その調子で頑張れ」
ウィリアムが褒めるとユウリは手を止めて驚いた顔でウィリアムを見つめた。
「どうした?」
まじまじとユウリに見つめられ、今度はウィリアムが困惑している。
「あっ! いえ、がんばります」
ユウリはびっくりしながらも答えると早く終えようとしているのか慌てて食事を続けた。
まあ今まで交流が少なかった親子の会話としてはまあまあだろうと私は心の中で苦笑していた。
食事を終えてユウリを勉強部屋まで送る。
ウィリアムはこの頃忙しいのか食事以外は仕事部屋から出てこなかった。
「おかーさま…」
手を繋いで歩いているとユウリが立ち止まり話しかけてきた。
「なぁに?」
ユウリの顔を覗き込むと真剣な顔をしている。
さきほどのウィリアムの事だろうと思い私はユウリの前に膝をついた。
「なんでも言いたいことを言って」
優しく語りかける。
「おとーさまがぼくのこと…がんばってるって」
ユウリは嬉しい反面不安そうな顔をしている。
「うん、だってユウリがんばっているもの」
先程のウィリアムの言葉が引っかかっているようだ。
「おとーさま、ぼくのこときらいかとおもってた」
「なんでそう思ったの?」
「だってぼくにきょうみ、ないから」
悲しいことを寂しそうな顔で言ってくる。
私はユウリを抱きしめて話しかけた。
「違うの、お父様はユウリとどう接していいかわからなかったの。決してユウリが嫌いなわけじゃないのよ」
「ほんとう?」
ユウリはまだ信じられないようで疑っていた。
「きっとこれからもっともっとユウリに話しかけてくると思うわ、だってお父様もお母さんと一緒でユウリの事大好きなんだもの」
ユウリは恥ずかしいやら困惑するやら複雑な気持ちのようで色々と考えているようだ。
「いきなり変わってもユウリには信じられないよね。でもお母さんもお父様もユウリの為に変わろうって思ったの、だからってユウリが無理する事ないわ、ユウリは自分が思った通りに答えて接すればいいのよ」
「う、うん」
「お父様と話したいと思えば話せばいいし、嫌ならその気持ちを伝えて」
「でも、ひどいこといったら怒られる…」
「その時はお母さんが逆にお父様を怒ってあげる!」
私は力こぶを見せるふりをして強さをアピールした。
するとユウリがクスッと笑い少し緊張が解けたようにみえる。
ユウリの不安が少し解消されたようなのでホッとした。
その日はそのまま二人で寝る事にした、ウィリアムはやはり忙しいらしく先に寝ていて欲しいとアルバートが伝えに来たのだ。
いつも通り本を読んであげるとユウリはスヤスヤと寝てしまった。
私もウトウトと隣でいるとトントンと扉が叩かれる音がした。
誰だろうとガウンを羽織り扉に近づき声をかける。
「どなた?」
「私だ」
ウィリアムの声に扉を開くと入浴を終えたばかりなのか濡れた髪のままやってきた。
「ユウリは寝てしまったか?」
チラッと部屋に視線を向けるので私は静かにと唇に指をあてながら中へとウィリアムを招き入れた。
「先程眠りました」
ウィリアムは寝ているユウリを見るとそっと髪を撫でた。
「寝る前に間に合えばと思ったが…残念だ。読書も終わってしまったんだな」
「ふふ、そんなに読み聞かせが好きなんですね」
少しからかうように言うとウィリアムは「ああ」となんでもないようにうなずいた。
「君の声を聞いて眠りにつくとよく眠れるんだ」
「あっ…そうですか」
なんだかむずがゆくて熱くなる頬を隠して顔を逸らす。
「最近忙しいみたいですね」
「それなんだが、少し話さないか?」
話を逸らしたつもりが、手を取られソファへと座らされる。
ウィリアムが隣に座り肌がかすかに触れるぐらいの距離に右側が熱くなる。
ソファーに腰掛けたのに取られた手は繋いだままだった。
「実は1週間分の仕事をしてきた」
「な、なにか屋敷を開けるようでも?」
「いや、ユウリと君と出かけるためだ」
「あっ」
ちゃんと約束を覚えていて時間を作ってくれたようだ。
「あと少しで終わる、そしたら皆で出かけよう」
ウィリアムは繋いだ手の甲を指で擦る。
私の答えを不安そうに待っていた。
その顔は先程のユウリにそっくりだった。
「ええ、一緒に行きましょう。約束を守ってくれて嬉しいです」
私も繋いだ手の上からもう一つの手を乗せた。
するとウィリアムは嬉しそうな顔をする。
あの無表情だった顔から少しずつ表情が出てきたようだ。
「クシュ」
すると濡れた髪のままでいたからかウィリアムがクシャミをした。
「大変! 風邪をひいたら困るわ」
私は手を離すとタオルを持ってきてウィリアムに渡した。
ウィリアムがガサツにガシガシと拭く様子に笑うと手を差し出す。
「?」
困惑するウィリアムに「タオルを貸して」と受け取ると彼の後ろに回って髪を拭いてあげた。
「あまり強くやりすぎると髪が傷んでしまうわ」
ユウリにやるように丁寧に優しく髪を拭くとウィリアムはされるがまま大人しくしていた。
「はい、できた」
あらかた乾かせたところでウィリアムに声をかけるが反応がない。
顔を覗き込むとソファーに身を預けたまま眠ってしまっていた。
「嘘」
ぐっすりと気持ちよさそうに寝る姿に私は起こすのを躊躇してしまう。
「しょうがない」
ブランケットを持ってくるとウィリアムにそっとかけてあげる。
横にしてあげた方が楽かと思い体を動かして横にしようとした。
しかし長身のウィリアムを動かすのは簡単ではなかった。
しっかりと抱きしめてゆっくり横にしようとした時、彼の腕が背中に回ったと思うとそのまま抱きしめられた。