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傷ついた心、君のせい

第11話 - 第11話彼との秘密

2025年04月25日

#恋愛

#高校生

#青春

ハルマキ

春菜は、少し疲れた足を引きずりながら、公園のベンチに座った。夕方の涼しい風が彼女の髪をやさしく揺らし、心地よい静けさの中で、智也と一緒に過ごす時間を楽しんでいた。
「今日は、ちょっとだけゆっくりしようか？」智也は手に持っていたカフェのカップを春菜に差し出しながら微笑んだ。

春菜は少し照れくさそうにそのカップを受け取った。「うん、ありがとう。なんだか、こういう時間も久しぶりだね。」

智也は、春菜の言葉に少し頷きながら、「最近、忙しかったもんな。こうやってゆっくり話すの、すごくいいな。」と、少し照れたように言った。

二人の間に流れる時間は、まるで静かな音楽のように心地よかった。普段は話さないような小さなことや、心の中の微妙な感情をお互いに分かち合うことができるこの瞬間が、春菜にとってはとても大切だった。

「智也くん、最近、何か悩んでることとかない？」春菜はカップを少し持ち上げながら、自然に話題を切り出した。

智也は少し考え込んでから、軽く肩をすくめて答えた。「実は、少しだけ悩んでることがあるんだ。でも、別に大したことじゃないよ。」と、言いながらもその目はどこか遠くを見つめていた。

春菜はその目をじっと見つめて、少し心配そうに言った。「大したことじゃないって言うけど、もし良ければ、話してみて。気が楽になるかもしれないよ？」

智也はしばらく黙ってから、ぽつりと言った。「最近、美咲との関係がちょっと複雑なんだ。彼女と一緒にいると、楽しいし、幸せだと思うんだけど、心の中で何か足りないような気がして…。なんだか、自分でもわからないんだ。」

春菜はその言葉を聞いて、心の中で少し胸が苦しくなるのを感じた。しかし、表面では平静を保とうとし、静かに智也の話を聞いた。

「それって、どうしてだろうね…？」春菜は言葉を選ぶように、慎重に口を開いた。「美咲は大切な友達で、あなたにとっても大切な存在だって、私も知ってる。でも、もしその気持ちが複雑なら、無理に答えを出さなくてもいいと思うよ。きっと、時間が経てば、わかることもあるから。」

智也は春菜の言葉に頷きながらも、少し遠くを見つめていた。そして、ゆっくりとした口調で言った。「ありがとう、春菜。君に話してみて、少し楽になったよ。」

春菜は、智也の優しさにふと気づいた。彼が素直に自分の心を開いてくれること、それだけでも十分に嬉しい。しかし、同時に心の中でひっかかる思いがあった。智也が美咲との関係で悩んでいることが、春菜の胸の中で無意識に引っかかっていた。

「智也くん、でも…」春菜は少し言葉を止め、智也の目を見つめた。「あなたって、すごく優しいよね。いつもみんなを気遣って、何かあるたびに助けてくれる。その優しさが、どうしても私の中で…」春菜は言いかけた言葉を一瞬飲み込んだ。

智也は春菜の言葉を待って、ゆっくりと彼女の顔を見つめた。「どうしても、何？」

春菜はその問いに、少し戸惑いながらも言った。「どうしても、あなたに引かれていく自分がいる気がして…。」

その瞬間、智也は少し驚いた表情を浮かべた。しかし、すぐにその表情は優しさに変わり、春菜の手をそっと取った。「春菜、僕も…君のことを大切に思っているんだ。ただ、今はまだはっきりとした答えを出せる自信がない。でも、君が大切な存在だってことだけは、間違いない。」

春菜はその言葉を聞き、心の中で少しだけ安心した。しかし、同時に彼の言葉に込められた複雑な感情を感じ取った。智也が本当に自分のことをどう思っているのか、まだよくわからない。しかし、彼の優しさと真摯さに触れた今、春菜は自分の気持ちをどこに向けるべきか迷っていた。

公園のベンチで、二人はしばらく黙って座っていた。微かな風が吹き、心地よい時間が二人を包み込んでいた。それでも、春菜の心の中には、どこか温かいけれども少し切ない感情が湧き上がっていた。

次第に、夕日が沈み始め、空はオレンジ色に染まり、二人の影が長く伸びていった。それでも、春菜はその静かな時間を大切に思いながら、また一歩前へ進んでいく決意を固めていた。

傷ついた心、君のせい

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