テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
R
23
#執着
さぶれ
1,448
高速を車で走りながら、
「……なぁ、俺とより戻して、よかったと思ってるのか?」
ふと沈黙が訪れた瞬間、春樹から尋ねられた。
「うん……思ってるよ」
まだ少し迷いはあったけれど、今の彼となら、復縁のかいもあったようにも感じていた。
「……。……おまえさぁ、じゃあもし、あの鷹騰社長が誘ってきたりしたら、どうすんだよ?」
急にそんな風にも訊かれて、彼との付き合いを受け入れようとしていた矢先もあり、
「えっ?」
ビクリとして問い返した。
「……鷹騰社長に誘われても、それでも、俺と復縁してよかったと思うのか?」
そう言いつのる春樹に、
「……どうして、そんなこと聞くのよ……」
膝の上で、思わず両手をギュッと拳に握り締めた。
「……なんとなくだよ。なんとなくな。もしそうなったら、おまえはどうするのかって思ってさ……」
なんとなくだなんてくり返す彼に、もしかしたら私が鷹騰社長のことばっかり気にしてたのが、知らず知らずのうちに伝わってたのかな……と勘ぐる。
「どうも……するわけ、ないじゃない……。それにだ、いたいあの社長が、私を誘ってくることなんて、あるはずがないんだから……」
自分に言い聞かせるようにもそう口にすると、
「そういえば、そうだよな? 社長には、彼女もいたしな」
春樹が、納得したような顔つきで、軽く笑った。
自分も彼につられるように、その場しのぎに笑って見せたけれど、不意の問いかけに、胸を鷲掴みにされた感は、どうにも否めなかった。
……鷹騰社長に誘われることなんかあるはずもないのに、何をドキドキしているんだろう……。
ありもしないだろうことに動揺してしまっている自分が、なんだかバカらしくも思えた……。
鷹騰社長のような人とは、せいぜいエレベーターの中で顔を合わせて、ちょっとした会話をするぐらいでしかなくて……、
……近くのバーに連れて行ってくれたのだって、きっとたまたまでしかなかったんだし、
あんな素敵な彼女だっているのに、私があの人に誘われるわけなんかないのに……。
動揺なんかしてほんのわずかでも誘いかけに期待したんだとしたら、自分はどこまでおめでたいんだろうと感じた……。
サービスエリアに到着して、2人でお昼ご飯を食べながら、
「俺たちって、なんで付き合い始めたんだっけ?」
春樹が箸を止めて訊いてくる。
「私がお店の前で雨宿りしてたら春樹が走り込んで来て、それで雨がやむのを待ってるうちにそっちから話しかけられて、」
「……俺からだったか?」と、途中で口が挟まれる。
「そうだったでしょ? 『カサ忘れたんですか?』って、そっちが言ってきて、ハイって返したら、『俺もなんですよ』とか笑って……」──そこまで話して、あの時のニッと笑うその顔に、ちょっと惹かれてしまったことが、ふと思い出された。
「確かに、そんな感じだった気もするな……」あの日と同じように、春樹が笑う。
「その後で、なかなかやまない雨にお店の中にいっしょに入らないかって誘ってきて、それから付き合うようになって……」
「ああ、そう言えば……」と、私に頷くと、「あれは、ひどい雨だったよな」と、出会った日を思い浮かべるように、春樹が呟いた。
「おまえと会う時って、よく雨が降るよな。もしかして、雨女なのか?」
紙コップの水をごくっと飲んで、茶化すように彼が口にする。
「そっちだって、雨男なんじゃないの?」自分も水を飲んで、笑って返した、その時、
なぜだか鷹騰社長との初めての出会いも雨降りの日だったことが、ふっと頭をよぎった。
「けど会う度に雨が降るのも悪くないよな。雨が降ると、おまえを思い出すみたいでさ」
「何ロマンチックなこと言ってんのよ」
少しだけ照れて口にして、
だけど、一瞬でも鷹騰社長との出会いを浮かべていた自分を顧みると、雨を私と結びつけて思ってくれていた彼に、少しばかり決まり悪さを覚えるようだった……。
コメント
2件
うわ、春樹の「鷹騰社長に誘われたらどうする?」って質問、心臓にズシンときました…。復縁したばかりなのに、心のどこかでまだ社長を意識してる自分に気づいてる主人公の複雑な心境がすごく伝わってきました。雨の日の思い出が春樹と社長の二人と重なるのも、なんとも切ないです。このもやもやした感じ、どうなるんだろう…続きが気になります🤍