ここのところ、太宰に会えていない。連絡もできていない。話そうとするとどうも胸が痛いのだ。
きっと今も、太宰は乱歩と話しているのだろう。たまらなく辛い。
こんなに好きになる前に…手は打てなかったのだろうか。
俺の恋は叶わない。俺が太宰の気持ちを知っているのを、太宰に云ってしまったから、気持ちも伝えられない。
でも…それでも…
太宰のことを思うと胸が高鳴る。心が踊る。興奮して夜も眠れず、仕事も手につかない。
それほどに愛おしい。
こんな気持ちになれた。それを、この気持ちを大切にしたい。
本当だ。嘘じゃない。嘘じゃない…筈だ…
会いたい。太宰に会いたい。でも、横にいても辛いだけ。乱歩と話してほしくない。俺のほうが、先に太宰と知り合って、好きになって、なのに…太宰は一度、俺の前から消えた。ポートマフィアを辞めたからだ。その後2年程消息不明だった。ついこの前、数か月前にやっと見つけた。なのに、其の時には既に太宰の目線の先には先約がいた。乱歩を見るときのあの愛おしそうな目。一生忘れられないだろう。
でも、其の目を見たからこそ分かる。俺と同じ目だ。俺が太宰を想うのと同じくらい、太宰も乱歩を想っている。
やっぱり…俺じゃ駄目なんだ。
太宰「んあ!中也ぁ!久しぶりぃ」
中也「太宰?!何でここに…」
太宰「最近会ってなかったでしょ?どうしてるかなってさぁ」
中也「そーかよ」
俺を心配してくれたってことか?
太宰「なんか…体調悪いの?てか、寝不足?」
中也「嗚呼、最近ちょっとな。」
太宰「なにぃ?好きな人に振られでもした?」
中也「…厭、振られてなんかいねぇよ」
気持ちを伝えてないから、始まっていない。振られた訳じゃない。云うならば、失恋ってやつだ。
太宰「そう…じゃあ、なんで?」
中也「…厭、体調悪くなんかねぇよ。お前の勘違いだろ」
太宰「そう…」
太宰「じゃ、私、用もないし帰るけど」
駄目だ…云いたい…太宰に行ってほしくない。乱歩と話してほしくない。俺だけ見てて欲しい。そう云いたい。
でも、それは太宰にとって重りになってしまう。これからも太宰が乱歩と付き合っていくのなら、この気持ちを伝えたら、それは一生太宰の足を引っ張り、太宰の頭に付き纏う事になってしまう。でも、もう太宰と付き合えないのなら。そうなってしまうのなら。太宰の記憶に一生残れる、とするのなら…其れでも善いのでは…
厭。俺は最初っから、太宰の’’幸せ’’しか、願っていない。
例えそれが俺じゃなくても。
太宰が幸せになるのなら、俺は太宰の背中を押す。
つまり、
俺が太宰と距離を置く。そうすれば、太宰の’’幸せ’’を遮るものが1つ減る。
それが、今俺にできる最大のことだ。
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