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メモリ喧嘩
🩵
天候が悪いせいだろうか、妙に重い空気が満ちている気がする。隣のベッドには落ち着いた呼吸を繰り返すピヤノ。よかった。もう少し寝かせておきたいしリビングへ降りよう。
階段を降りているといつもは鼻をくすぐってくるパンの匂いがしないのは、まだ回復しきってないんだろうか。
「おはよーパパ。ママの、」
「……なに。」
地を這う低音。俺を捕えたのは底のない奈落の底まで引き摺り込まれるような闇。恐怖。
息が、できない。
「…ぁ”っ……いや”、なんでも、なぃ……」
「あっそ。」
何あれ、何あれ、何あれっ!!!
あんなに怒ってるパパみたことないんだけど!!
急いで部屋まで戻り、勢いよく扉を閉める。その音でピヤノが起きてしまったようで、目を擦りながらこちらを見ていた。
「も〜、朝からうるさいで、」
「やばい!パパが激オコなんだけど!!」
「……え”。」
俺の言葉を聞くなりサッと顔色が悪くなる。
「やっぱり、昨日の…僕のせいでっ…」
ピヤノの言う通り原因は十中八九、いや百発百中で昨日のことだろう。でも、ピヤノが原因だとは考えにくい。多分だけど口下手なママがまたなにかやらかしてしまった可能性のほうが圧倒的に高い。
「大丈夫だって、昨日は怒ってなかったじゃん。とりあえずママの様子見に行って何があったか訊こ?」
小さく震えている手を握り、俺の心音が聞こえるように抱きしめる。ママはいつもこうして安心感を与えてくれた。
ピヤノが思い詰める必要ないんだよ。
そうしていると覚悟が決まったのか、胸の中でゆっくり頷く気配がした。
🟪
コンコンッ
「っ!?!!」
突如聞こえたノック音に身体が硬直する。
……シャークん、か…?
正直に言って今は会いたくない。だがここで返事をしなければ後がどうなる?作業中の物音で俺がここに居ることは分かっているはずだ。どうする?出るか?出たらなにを言われる?まだ怒っているのではないか?またあの目を見ないといけないのか?
まずい、思考がまとまらない。
「ママー?」
「お母さん?」
「っああ、お前らか……いいよ、入っておいで。」
柔らかい返事をすると隙間から顔を覗かせた2人。心なしかその表情が固いようにみえる。
「どうした?」
「もう大丈夫なんですか…?」
「ん?ああ。もう普通に動けるよ。」
「うわぁあ、よかったぁ…」
ずっと強張っていた肩を落とし安堵の表情を浮かべたピヤノは、自分のせいだと思って気負っていたのかその目元は赤みを帯びている。両手を広げると少し戸惑いながらもぽすりと腕の中に収まる。
やっぱり成長してもいつまでも子供だな。
「あのさ、ちょっとママに訊きたいんだけど…なんであんなにお父さん怒ってるの?」
「……しらん。」
「喧嘩したんじゃないの?」
「やっぱり僕のせいでっ、」
「違う。ピヤノは悪くないから安心しろ。アイツが勝手にイラついてるだけだ。」
そう。ピヤノはもちろんのこと俺も悪くない。俺の判断は正しかった。
「俺さぁ、森でなにがあったのか知らないんだけど教えてくれない?」
「え、アキラに話してないの?」
「あぁ、はい。怪我はしてなかったんですけど、話せる状態じゃなくって……」
「じゃあ知らないのか。」
昨日、俺が大怪我を負った経緯を。
暮れのことだった。ピヤノに植物について教えていた最中、近場だから大丈夫だと安心しきっていた俺らに落ちた陰。真横から聞こえた不穏な音。
ピヤノのすぐそこにまで迫ったクリーパー。
『……は、?』
『…ぇ……』
その光景に思考がとまった。
刹那、脳内に溢れる危険信号。迫られる選択。逃げる?駄目だ、俺は逃げられるけどピヤノが近すぎる。防ぐ?盾もないのにどうやっ、て……いや、それならここにあるじゃないか。目一杯の力を込めてピヤノを引き寄せ、そしてーーーー
爆風で2人とも吹き飛ばされる。
肌が焼け付く特有の匂いが鼻を刺激する。背中の表皮をすべて剥がされたみたいに酷く痛み、風が吹くだけで身体が震える。飛びそうな意識を必死にかき集めて堪える。
まだダメだ、まだ気を失うな。
『お母さんっ!?!お母さん!!』
『なか”っ、かぃふくの”、ポーション、がっぁ”る…から”……』
リュックの中には多くの物が詰まっている。その中には必ず回復ポーションを入れているため、それがあればこの程度の火傷は治せる、はずだった。
『これっ、割れて、る…』
あぁ、そういうこともあるのか。
次からは容器も考えないといけないな。
今すぐ気絶したいほどの痛みを耐えながら、上体を持ち上げる。
『っ!?!なにしてるんですか!』
『シチュ”ーな”らっ、作れ”るっ…』
『そっか!それなら僕が作るのでお母さんは寝ててください!』
俺のリュックに入っていた薬草や花を突っ込みシチューを煮出す。ポーションよりも持続時間は短いが何もしないよりマシだ。手際良く作業する逞しい後ろ姿。俺の指示がなくても作れるようになったのか、上出来だな。
温かいシチューが喉を通れば痛みが嘘みたいに消える。ほんの気休めにしか過ぎないが少しでも動けるならそれでいい。
『まだ休んだほうがいいんじゃっ、』
『いや、大丈夫っ…はやく帰ろ”。』
近場を選んでいてよかった。
シチューでの鎮痛効果は極めて短い。一歩踏み出すたびに痛みが酷くなってゆく。少しずつ、だが確実に歩を進めていると徐々に家が見えてきた。この熱傷では支えてくれていてもまともに歩けないため、ほぼ引きずられているような状態。異常事態を察してか、庭で待機していた狼たちが一斉に立ち上がってこちらへ駆け寄ってくる。
あぁ、家だ。
そう認識してからの記憶はない。
目が覚めたらシャークんの腕の中だった。
『…シャー、クん…』
『スマッッ!?!…よかった…まじでよかった……』
『はぁ?心配しすぎだろ。あの程度ならポー、』
『心配するだろ!今度こそっいなく、なるのかと…』
『…分かったから緩めてくれ。』
骨が折れてしまうんじゃないかと思うくらい、強く抱きしめられる。作り置いていたポーションをきっとシャークんが飲ませてくれたのだろう。
そう推測しながら、啜り泣く背中を撫で続けた。
『……んで、あんな傷負うって何があったんだよ。ポーション持っていってなかったわけねぇだろ。』
まぁ、そうなるよな。
先程まで大泣きしていたのが信じられないほど真面目な顔をした彼に事の顛末を話し始める。それが終わる頃にはどす黒い感情で満ちていた。
話し終えるとなんとも言えない表情をしたアキラにじっと見られていた。
「……それは…怒られるでしょ……」
「はぁ?」
「まあピヤノを守るために仕方なかったってのは百歩譲って分かるけどさ、ママが盾になるのは流石にまずいでしょ。ポーションもないのにさぁ。」
「いやだからポーションは持ってたんだって。ただ瓶が割れたのが誤算だったんだ。それにピヤノが怪我するんだったら俺が喰らった方がいいだろ。俺の命よりお前らの方が大事なんだから。」
「……もしかしてそれ、お父さんにも言いましたか?」
「?まぁ言ったけど関係なくない?」
「いや絶対そのせいじゃん!!」
「いや絶対そのせいですって!!」
「はぁあ?」
「あぁもー、ほらぁ!やっぱりママがやらかしてた!」
「なんですぐそういうこと言っちゃうんですか!?」
「あーあー!もう分かったから!作業するから部屋戻れって!」
キャンキャン鳴く子供2人を部屋から追い出す。俺はあの状況で最善の選択をしたというのに一体なにが悪いのか。
気持ちを切り替えて作業を再開させていると、ノックが鳴り響く。
また子供たちだろうか。
「なに?どうしっ…っっ!?」
確認をせずに開けたのが悪かった。勢いよく周囲が動いたかと思ったら天井を眺めていた。ベッドに投げられたんだと気づくまでに時間を要した。
「え、は?な、なに…?」
「……ヤんぞ。」
「っはぁ!?なんでだよ!」
「…忘れたのかよ。今日はする日だろ。」
確かに俺らは毎月23日に致すと決めている、だが。
「いやっだ…シたく、ない…」
初めて行為を拒否した。
これが最後の一滴だった。
手首が軋むくらい握り締められ、乱暴にスラックスと下着だけずらされる。
当てられる熱。
おいおい、嘘だろ!?
ろくに慣らしてもいない後穴を貫かれた。
「あ”ぁ”ぁ”っ!?!」
「……うるさ…」
潤滑剤もなく一か月ぶりに挿入されたソコは悲鳴をあげていた。前後に動くたびに皮膚が引っ張られ、首にも鋭い痛いが走る。鋭い歯が肉を裂く。
痛い、痛い、痛い、痛い。
こんな抱かれ方、一度もされたことない。
内臓を抉られる感覚。
喉が引き攣り、声が出ない。
涙で視界が滲んでいく。
一方的に押し付けられる快楽。
……これは快楽なのか?
今のこの行為に恋愛感情は含まれているのだろうか。ここにあるのはただひたすらな怒りだけではないだろうか。
きっとこれは寵愛なんかじゃない。
強姦とも言えるただの暴力行為だ。
「あ”っ!?そこっやら”ッッ!いぐっいっちゃ”ッッ、〜〜ッッツ”!??」
「…無理矢理されて感じるとか淫乱だな。」
「お”まえ”のっ、せぃ”だろ”お”!!あ”っ♡ねぇ”イッてる”っ!イ”ってる”からぁ”!」
「ね、気持ちいいね。」
「きもちよくな”ぃ”っ!!」
「はっw締め付けておいてよく言うわ。」
「んお”っ、ぉ”ぐっオグッッ…♡や”っ…!」
「…好きなくせに……」
抵抗虚しく、結腸まで難なく入ってくる。
無理矢理押し込んだのか、それとも俺が奥まで入ってこれるように誘ったのか。
ぐぽぐぽと容赦なく抽挿するシャークんの性器が、精液や腸液が混じった粘液を泡立てる。
「あ”っあ”っ♡…くる”っ”ッ”……ォ”ホッッ♡♡」
「なぁ”…痛くてもいいんだろ?」
「ま”っ!!!いま”ッッだぇ”ぇ”ッッッ!ォ”……イ”ッッ、グッ、、ンォ”♡♡♡」
吹きながらも揺さぶられ、無色透明な体液で自身の身体を濡らす。
噛み跡からダラダラと流れていく血液がシーツに染み込む。痛くて痛くて抵抗しようと何度殴ってもシャークんは俺を責め立てる。
二十年近く抱かれ、知り尽くされてしまったイイトコロを、開発されてしまったトコロをひたすらに責め立てられる。
精液も潮も出切っているのに、休む暇なくイカされ続けてしまい脳が焼き切れそうだ。どうにか保っている理性は必死になって逃げようとしているのに、雌にされたこの身体はもっと深くまで愛されたいと彼の欲を渇望している。
「しぬ”っ”……しんじゃ”っ…」
「……いいよ。死にそうなら俺が殺してあげる。」
「っん”…な、なに”してっ!」
「最期まで俺のこと見てて。」
「シャ”ーグッ…」
「ずーっと、ずーっと俺のことだけ見てて?」
「ぁ”……シャ”、、ァ”グッ……」
かけられた手にグッと力が入り気管を閉鎖される。頭に血液が集まり、体内を流れる血液の轟々しい音以外聴こえなくなる。
なんで……
なんでお前が苦しそうな顔してるんだよ。
大丈夫。
お前から離れることなんてないから。
シャークんを安心させるために笑ってみせた。
「…ぃ”っ!ッ!?ゲボッゲボッッ…!ァ”、ぁ”ー…」
身体の節々が痛み、起き上がることも声をあげることすらままならない。
血だらけになったはずのシーツは真っ白になっていて、部屋も性行為特有の匂いはなにもしない。身体も丁寧に拭われ、昨夜の激しい営みの痕跡は
俺の身体に残された印以外何もなかった。
首元のガーゼを一つ、取ってみた。
何も見えはしないが、深く刻まれた噛み跡があるのだろう。空気に晒されてじんじんとした痛みが伝播する。こんな浅傷ごとき回復ポーションを飲めば簡単に消える、それはシャークんも分かっているはずなのに……
『感情的になりすぎた。ごめん。』
俺を試しているのか、俺の気持ちを知りたいのか。気絶しているとき飲ませず、綺麗な文字と共に置かれている。このまま飲まなければ噛み傷は残るだろうか。
ポーションを手に取って、すぐに置いた。
さて、この酷く痛む身体で愛する夫の顔をどうやって拝みに行こうか。