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彼女がそっと腕を離す。まだ、びりびりと痺れている。
こんなに狂暴な女だったなんて…彼女の元旦那さんの苦労が目に浮かぶ。
そりゃ、浮気もしたくなるだろう。
「なあに?今、失礼なこと考えたでしょ。」
ドキッと私の心臓が跳ね上がる。
「か、考えてませんから!!ていうか、話があるなら早くしてください!!」
無理やり話題を終わらせる。この人は絶対敵に回したくないタイプだ。
「まあいいわ。私が聞きたいのはただ1つよ。」
「店長とのこと…ですか?」
さっきまでの騒ぎが嘘みたいに静寂な会話になる。
彼女は、私の問いかけに意外そうに目を丸くし、それから楽しそうに笑った。
「なあんだ、分かってるじゃない。」
「そりゃ、あんなことがあったんですから気になるかなと。」
「ふふ、話が早いわ。それでそれで?あのあとどうなったの?なあんか、仕事中の二人を見てるといつも通りに戻った感じするし、藤塚さんはいつもより嬉しそうだし、もしかしたら告白できたのかなーって♪」
この人は仕事中、そんなことしか考えていなかったのか。
いい大人が聞いて呆れる。
というか…今なんて言った?告白…?私が?店長に…
「いや、あり得ませんから。」
即答した私に、雛瀬さんはつまらなそうに口を尖らせる。
「えー?じゃあ何でそんな嬉しそうなのよ?あのあと店長と何話したの?」
「別に…お互い誤解があったようなので話し合っただけです。あと、嬉しそうに見えたのは雛瀬さんの勘違いじゃないですか?」
彼女には、あの時話した内容は死んでも知られたくない。
絶対面白がられてからかわれるに決まっている。
(嘘は言ってないよね…?これ以上詮索されませんように…)
舐め回すような彼女の視線は、私の心を見透かしているような気がした。
なるべく平常心を装いながらただ、彼女の反応を待つ。