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兄ちゃんが俺と話してくれなくなった。 家にいるときも全然。名前も呼んでくれないし、ごはんも食べてくれない。
「(兄ちゃん、どうしたのかな。)」
ドアの外から声をかけるが、反応はない。
「ねぇ兄ちゃん…どうしちゃったの?」
「なんで何も話してくれないの…?」
「………前はもっとお話してくれたのになぁ。」
「……………」
ー——ぎち、ぎち。革の擦れる音。
小さなうめき声。かちかちと歯の鳴る音。
「………兄ちゃん?」
ドアノブに手をかけた。
「兄ちゃん。俺、ここにいるよ?」
「俺が喋んなくなって心配になっちゃった?」
「……そっかぁ。」
毛布にくるまり、くるんとした毛が一本でている。
突然ロマーノの腕が飛び出し、ぐいっと服を掴まれ引き寄せられた。
「バカ……弟っ………!!」
「なぁに?」
…目腫れてる。泣いてるのバレバレ。……かわいい
「お前、またジャガイモ野郎とくっついてきたろ、匂い移ってんだよ……!」
「……ほんと?」
「………俺以外と話すなっつっただろ……!!」
「えへへ、ごめん…」
「えへへじゃねえ!!」
「このやろー…!2時間も空けやがって……!う……クソ、クソ…っ……!!」
「薬飲みすぎてぽわぽわすんだよ……ばか……っ……くそ、なんで…なんでだよ……」
床には、空になった薬のシートがいくつも散らばっている。
「…またいっぱい飲んじゃったの?だめって言ったのに…」
「っ……お前のせいだからな……!!ばか、ちくしょ〜……!」
叩く力加減が優しい。
「…てか、こんな縛らなくても俺は逃げねーっつの……」
「……ほんとに?ほんとに逃げない?兄ちゃん人気者だからさ、すぐ俺の前から居なくなっちゃうじゃん。」
ぎち。革が鳴る。
「この腕のも、兄ちゃんが俺から離れられないようにするためにつけてるんだよ。………わかってるか。兄ちゃんこれ好きだもんね。」
「っ……好きじゃねぇ、ついてたほうが安心するってだけで…」
安心、かぁ。
「………お前こそ捨てねぇだろうな。」
「………捨てる?」
捨てるわけないじゃん。兄ちゃんのこと大好きだし、兄ちゃんのことなら俺が一番理解してる。誰にも絶対、絶対奪われたくないもん。
スペイン兄ちゃんにも、プロイセンにも、イギリスにだって奪われちゃうかもしれないし…あぁ、考えたらキリがないや…
でも…でもね…すっごく、すっごく……不安で……
好きな人ができちゃったら、ただの弟の俺から離れていっちゃうんじゃないか、って……!!
「ヴェネチアーノ!!」
「っ……は……」
「に、にい…ちゃん……?」
「しっかりしろ、馬鹿弟……!!」
「………やっと名前呼んでくれた」
ヴェネチアーノ、だって。
特別な時しか呼ばないもんね、兄ちゃん。
「………その調子でご飯も食べてくれたらなぁ」
「…それは…お前が居ねぇから、食べなかっただけで…」
「俺のせい………?」
……寂しかったんだ、兄ちゃん。
「……えへへ、じゃあ一緒にご飯食べよっか。」
ベッドの脚とロマーノの手首に付けていた拘束具を片方だけ外し、自分の手首にかしゃん、とつけた。
「おまっ、自分に付けんのかよ…!」
「…こうしたら、お互い一緒じゃないとどこにも行けないよね?」
「………行く気も起きねぇよ、馬鹿。」
「……俺も〜。」
作りたてのトマトパスタがふたりぶん。
食卓には向かい合わせではなく隣に。
手首はまだ、繋がったまま。
「ずっと、ずーっといっしょだよ、兄ちゃん。」
この国が滅びるまで。
コメント
1件
**みぅ🤍🥀:** うわ……重くて、でもすごくきれいな話だった……🥀 薬のシートが散らばってる光景と、叩く力が優しいって描写のギャップに胸がぎゅっとなった。弟くんが「一緒にいるために」自分にも拘束具をつけるの、依存と愛が表裏一体で怖いけど温かい。ラストの「この国が滅びるまで」も、もう離れられない関係を象徴してて……続きがすごく気になる🌙