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メカニック短編集

第42話 - 🐙🌟×💡　家出(前編)

260

2025年10月06日

#inm

#mnnm

#ご本人様には関係ありません

あしや

🐙🌟×💡。喧嘩しちゃうお話、こちらは前編。バグか仕様かよく分からないのですが、変な改行が出来ていたり空白があったりします。最善を尽くしたつもりですが、読みづらかったらすみません。

inm視点

夜の部屋は重い空気に包まれていた。リビングには、投げ出されたクッションと散らかった雑誌が散乱している。ソファの端に座り、腕を組む。

「ガチであり得ない。なんでそんなに誰これ構わず距離感バグってんの？」

「…そんなに？別に友達だから良いじゃん。俺が悪いみたいに言わないでよ」

星導は壁に寄りかかり、冷ややかな目でオレを見た。彼の声は低く、鋭い。その言葉に苛立ちを感じて反論する。

「友達だからってそんな大胆な行為して良い訳？恋人のオレなんか知らないフリしてんだ」

「はあ？俺は毎日ライのこと考えて…」

彼は言葉を切り、ため息をついた。

「…もういい。話すだけ無駄」

星導は乱暴にコートをつかみ、ドアに向かう。

「ちょ！どこ行くの！」

オレの声が追いかけるが、星導は振り返らず、ドアをバタンと閉めた。部屋に残されたオレは、ソファにドサッと座り込む。

「…バカ。最低」

hsrb視点

『家、行っていいですか』

できるだけ遠くに行きたくて、東のマナに連絡する。

『ええけど…どないしたん？』

『後で全部話す』

『はーい』

普段同居している俺がライの家を離れている時点で、何かあったことは察されているのだろう。髪の毛に染み付いたライの匂いが鬱陶しくて、途中のコンビニで買ったヘアゴムで髪を縛る。少し涼しくなってきた夜にはコートが必需品のようだったが、コレもまたライを思い出してしまうので着ないように手に持った。

「おじゃましまーす」

「いらっしゃい！」

マナの部屋は、先ほど見たライの部屋より綺麗だった。大切に育ててもらっているであろう観葉植物、細かく並べられたアクセサリー。数分前まで目にしていた歪んだラグや破れた本などは何処にもない。

「紅茶かココア、どっちがお好みですかー？」

「あ、結構です〜」

「そんな選択肢ないです〜」

マナは問答無用で紅茶を手に持ちながら俺に問う。

「で。何があったん？」

「好き、なんだけどなあ」

思っていたことをたくさん絡ませた結果出てきた言葉がコレで、自分でも頭が痛くなる。マナは俺の様子を見て苦笑した。

「せやろなあ」

「俺は、ね。ライが俺のこと好きかはもう分かんない。なんならもう嫌われてる気もする」

「んなわけ。はよ謝り？」

「…………はあ」

ため息をついたところで、マナのスマホが震えた。その画面を見て、マナは眉の角度を変える。

「…？」

マナはスマホの画面を俺に見せた。1件の通知。

『今からマナん家おじゃましてもいい？』

飽きるほど毎日連絡をとっていたライのアイコン。2度目のため息が出る。

「会いたくない、かも」

「家居らんことにするわ」

胸を撫で下ろす。ここまで来て仲直りしろと言われても、できる気はしなかったから。マナはライへ返信をした後、通知を切った。

「詳しく聞かせてや。俺も手伝いたいし」

マナの瞳が真っ直ぐになって俺を見つめる。

「こう見えて恋愛マスターなんやで？」

はは、と笑ったマナの顔なら信頼できそうな気がして、重たい口をゆっくり開いた。

inm視点

キッチンでコーヒーを淹れながら、1週間前のことを思い返していた。胸がチクチクする。星導の態度、でもその奥にあった苛立ちに、少しだけザワッとする。

「…はあ」

確かにオレにも非があるかもしれない。でもそんなこと言ったら星導だって。

「…まだ、帰ってこないし」

賞味期限が近づいている冷蔵庫の食べ物。星導の好きなものを買ったけれど、結局オレが食べるしかないのかも。

「飽きれられちゃった、かな」

星導の仕草、言動、オレへの接し方、全部が好きだった。好きだったからちょっと、イライラしちゃっただけ。

急にインターホンが鳴り、びくっとする。ドアを開けると、星導が立っていた。無造作に髪をかき上げ、いつもより少し疲れた顔。手にコンビニの袋を持っている。

「…入っていいですか」

「…勝手に入れば？」

星導は無言でリビングに入り、袋をテーブルに置いた。袋からはオレの好きなフルーツタルトと缶コーヒーが覗く。それを見て一瞬目を丸くしたが、すぐにそっぽを向く。

「何？コレで許してもらおうって？」

「別に。ただ買ってきただけ」

「ふーん」

沈黙が続く。謝らなきゃいけないのに。

「…お風呂」

星導は素っ気なくお風呂に入っていった。1週間だけ、と言われればそうなのだが、毎日見ていた彼の姿を見るのは久々に思えて、思わずはにかんでしまう。やっぱり星導のことが好きだ。

「ごめん。星導」

なんて。早く本人の前で言えばいいのに、オレ。

hsrb視点

蓋を開けるとふわっと広がる湯気。シャワーを浴びるだけのつもりだったが、当然のように満タンに溜まっていた湯船に浸かる。ライは、今日を見越して湯船をためてくれていたのだろうか。

「…ごめん」

自分の声が浴室に小さく響く。いや、ライの前で謝れよ。なんで謝れないんだよ。たった三文字じゃないか。

お風呂から上がると、可愛い恋人の姿があった。こちらを見向きもせず、スマホを弄っている。俺と同じ部屋にライがいる。そう思うと、胃がきゅっと引き締まる。

「ライ？」

返事はなし。まだ怒ってる、かも。もう一度口を開こうとした瞬間、ライがこちらを向いた。大きな瞳からは、涙が溢れそうになっている。

「星導、別れよう」

「……は？」

「オレ、もう傷つきたくない。オレじゃないほうが良いよ、星導も」

一瞬引き留めようとしたが、プライドが邪魔をした。彼がそう言ったんだ。ライのため、だから。

「…分かった。別れよう」

胸が張り裂けそうな思いってこういうことなんだ、と実感する。さっき買ったばかりのタルトとコーヒーを持ち直して、トランクを持つ。最小限の着替えだけ持って、ヒーロー拠点へ重い足を進めた。

日曜日

鑑定士の仕事に没頭しようとしたが、集中できない。資料を眺めながら、ライの言葉が頭をよぎる。

「傷つきたくない…か」

夜、拠点に帰ると、部屋が空っぽに感じられた。着替えの中から一緒に出てきたライのキーホルダーを見つけて、胸が痛んだ。連絡しようか迷ったが、鏡の前に放置した。

月曜日

会議でぼんやりし、マナに心配された。

「なんや、ライと別れたんか？」

苦笑い。頷いた時のマナの驚いたような顔が忘れられない。仕事後、賞味期限の切れかかったタルトを食べたが、味がしない。ライの写真をスマホから削除しようとしたが、指が止まった。大きな瞳、艶のある髪、華奢なのに筋肉質な身体、あどけない笑顔。まだ、好きだなあと思ってしまう。

火曜日

残業を増やしたが、効率が悪く、残業を取っていたときよりも仕事が進まない。昼にライの好きな弁当を買ってしまい、後悔した。

「なんでこんなことしてるんだろ」

夕方、マナから『ライ、元気ない』と聞かされ、心が揺らぐ。夜、ベッドでライの体温を思い出し、孤独を感じた。

「諦められる訳ないっての……」

水曜日

仕事で失敗した。ストレスが爆発し、ライの不在が原因だと気づく。

「ライだったら、励ましてくれるのに」

家でワインを飲み、ライの声が聞きたくなった。メッセージを打ったが、送信できる訳もなく。

「俺が悪かったのに。プライド高すぎ、俺」

木曜日

休みを取って、散歩した。ライと行った場所を巡り、思い出に浸る。

「別れてよかったなんて、嘘」

決意が固まる。今は平和だが、いつ敵が襲来してくるかも分からない。それでデュオを組めなんて言われたら、気まずいに決まってる。

金曜日

俺が拠点に居ることを知っているのか、ライは今週一度も拠点に遊びに来なかった。ライの家まで行った。インターフォンに指を置いた。1週間前の感覚が俺の胃を痛めて、結局押せなかった。明日。明日こそ。

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