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朝起きて、学校に行く。部活をして、帰って寝る。何の変哲もない、ただの高校生。だったのに僕は、
ギラギラと日差しが刺す、ある夏の日、僕は図書館に来ていた。エアコンのない僕の部屋は、夏になるとサウナかってぐらい暑くなる。だからどうしても耐えられない日は、こうして図書館に避難していた。ゲームは持って来れないから、図書館でやることと言ったら、イヤホンでYouTubeを見ることぐらいしかできない。それでも、真夏のサウナ部屋にいるよりはマシだった……
この日はたまたま、イヤホンを忘れて来てしまっていた。
「あれ…?ちゃんと入れたはずなんだけどな…」
ボソッと呟いたが、それで何かが変わる訳では無い。仕方がなく、今日は本を読むことにした。本はあまり読む方ではないが、全く読まないという訳でもなかった。あまり多人数を好まない僕は、昼休みや放課後の校門が混雑する時間は、図書館で少し暇を潰してから帰っている。今日と同じようにイヤホンを忘れた日は、本を読んで過ごしたり、学校の中を少しうろついたりして暇を潰していた……
「何読もうかな…」
学校の図書館よりも格段に多い本の数に、僕は何を読もうか迷っていた、ふと、下の段にあった本が目に留まる。
「なんだろう、これ」
取ってみると、ホラー系の小説だった。真っ青な表紙に1文字だけ、「神」と書かれてある。きっとタイトルだろう。僕は何となく立ち上がり、その本を持ち席に戻った…
小説の中身は、実際にある心霊スポットを題材にした、よくあるホラー小説だった。ただ気になったのは、一向にタイトル、「神」にまつわる話、それに関係する話すら出てこなかった事。読み進めても読み進めても、ネットでよく見かける心霊スポットを巡る話しか出てこない。どこかに伏線でもあるのか、と思っていたが、とうとう最後のページを読み切り、解説ページも無いまま終わってしまった。普通ならきっと、「まぁどこかに伏線でもあったのだろう」で終わる所なのだが、その時は異様に気になった。小説としばらくにらめっこを続けていると、あることに気がついた。表紙と表紙の間に、謎の空間があるのだ。指を突っ込み、表紙の間を覗いてみる。すると、中に何かが挟まっていることに気がついた。挟まっている、と言うよりは、表紙と表紙の間にくっついている…と言った方が正しいかもしれない。指で取ろうとしても中々取れず、シャーペンや物差しでも取ろうとしたが、結局取ることは出来なかった。そうこうしている間に日が暮れてきていることに気づき、僕はその本を借りて、家に戻った…
家に帰り、様々な方法でその謎の物体を取ろうとしたが、中々剥がれない。諦めようとも思ったが、その物体が気になって気になってしょうがない。気づくと僕はおもむろにハサミを取りだし、本の表紙に近づけていた。ハッと我に返り、その異様な執着心に対して、僕自身に恐怖を覚えた。僕は怖くなり、本を机に置いて、ぬるくなったお風呂に浸かった。
お風呂から上がり自分の部屋に戻ると、本の隣に黒い物体が転がっているのに気づいた。
「まさか…?」
駆け足で近づき、その物体を持ち上げる。黒くて細い、平べったくて軽い。黒いテカリを見せながら、ザラザラした感触が絶妙に気持ち悪かった。本の間を見てみたが、やはりくっついていた物体が無くなっている。恐らくこの物体が本に挟まっていた物だろう。だがふと疑問が湧いた。あんなにもくっついていて取れなかった物が、何故取れたのか、いつ取れたのか。そんな疑問が頭に流れ込む。だがそれ以上に黒い物体への興味が無限に湧いてくる。僕は寝ることも忘れて、その黒い物体を観察していた…