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玄関のドアを開けると、すぐに亮の声が飛んできた。
「おー! おかえりー。ちゃんと買えた?」
咲が袋を差し出すと、亮は嬉しそうに受け取りながら悠真に笑いかける。
「サンキュー悠真。やっぱ頼りになるわ」
「はいはい。……俺は荷物持ち担当だからな」
肩をすくめる悠真に、咲は思わず小さく笑みをこぼす。
けれど亮の視線がすぐにこちらに向いた。
「なに笑ってんだ、咲」
「べ、別に……」
慌ててごまかしたけれど、胸の奥にはさっきまでの余韻がまだ残っていた。
兄の前では隠すしかない。
でも――悠真と並んで歩いた距離の近さは、簡単には忘れられそうになかった。