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久恋

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久恋

3 - 3話 久しぶりのデート?

♥

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2021年10月05日

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「志乃さん、今日いつもと何か雰囲気違いませんか?」

朝、出社した理恵子ちゃんの私に対しての第一声がコレだった。

「そう?」

変に勘ぐられないように平静を装いながらサラリとかわす。

本当に理恵子ちゃんはこういうことには、すごく鼻が利く。

先日、良子に相談した後、私はすぐに蓮くんに連絡し、今晩とりあえず会う約束になったのだ。

だけど良子が言うように私にとって蓮くんは恋愛対象外。

深入りするつもりはない。

ただ、これからも蓮くんのカフェに行くと思うし気まずくはなりたくない。

だから会ってきちんと断ることにしたのだ。

「そういう理恵子ちゃんだって、そのワンピース初めてな気がするけど」

さり気なく話題の的を自分から理恵子ちゃん自身へとスライドさせる。

「あ、分かります?実は今日、久しぶりに高校時代の友人たちと会うんで」

理恵子ちゃんの言いたいことが何となく分かる。

同性だから余計に見栄というか、良く見せたいという心が沸く。

久しぶりなら尚更。

会って自分が他の子たちより劣っていると感じたり、感じられたりするのが嫌なのだ。

周りが結婚していき、そういう集まりも減ってしまったけど、私にも同じような経験があったから理恵子ちゃんの気持ちが分かるのだ。

ただ相手が良子じゃ、そんな格好つけようとなんて思わないけど。

「週末だし、サクサク仕事して早く終わらせよう」

気づけば始業時間が過ぎていて、私たちは慌てて仕事に取り掛かった。

――…

―…

「じゃあ、志乃さんお先に失礼します」

定時が過ぎ、予告通り理恵子ちゃんが足早に帰って行った。

蓮くんとの待ち合わせは19時半。

待ち合わせ場所は会社からそう遠くもないし、まだまだ時間はある。

もう少しだけ仕事をしようかとパソコンに向かったが、どうしても集中できない。

仕事をすることを止め、とりあえず会社を後にして店で時間を潰すことにした。

でも店に着いても、やっぱり落ち着かない。

蓮くん相手に何を緊張しているんだろうか。

理恵子ちゃんに指摘されたように確かに今日の私の服装はいつもと違っていた。

別に老け顔ではないけど、やはり会う相手が8歳年下だと色々と気になってしまい、少しでも若く見えるようにいつもより明るい色の服を選んでしまった。

もし蓮くんが会社勤めだったなら、あまり気にもならなかったかもしれない。

だけど蓮くんの職種が職種だけに服装で余計に年齢差を痛感してしまいそうで、ついつい服装にこだわってしまったのだ。

これはデートではなく断るためにご飯を食べるだけ。

だから変に気合を入れるのはおかしいんだと自分でも分かっているのに、やっぱり気になってしまうのは、久しぶりに仕事抜きで異性と待ち合わせしてご飯を食べるから?

恋愛対象外とはいえ、かっこいい上に久々に告白された相手との食事に少し緊張してしまっている。

「あー、情けない……」

あまりの甲斐なさにため息が漏れる。

良子が言うように恋愛から遠退き過ぎてしまっていた。

それが無自覚だったということは、かなり重症ということだ。

「やっぱり婚活の前に恋活か……」

自覚した途端、急に危機感に襲われてしまった。

「何がブツブツ言ってるんですか?」

どこからともなく声が返ってきた。

「蓮くん!?」

驚き声のした方に振り返ると、少し息を弾ませた蓮くんが不思議そうな顔をして私を見ていた。

ひとり言を聞かれるなんて恥ずかし過ぎる……

「ううん、何でもない。それよりいつから居たの?」

「いつからって……、今来たところです」

驚く私に蓮くんが少し戸惑いの色を滲ませたことに気づき

「そうなんだ。お疲れ様」

余裕の笑みをつくって 労(ねぎら)いの言葉を掛ける。

「志乃さんもお疲れ様です。お腹空きましたね。何食べます?」

私の向かいに座るとメニューを開いて見せてくれた。

蓮くんが選んだお店はちょっと雰囲気の良い感じのパスタ屋さんだった。

変に気張ってなくて蓮くんらしいお店のチョイスだと思った。

「何でも良いよ。蓮くんに任せる」

「了解。じゃあ、何品か頼むんでシェアしましょ」

そういうと素早く何品か選ぶと注文していってくれた。

当たり前だけど蓮くんと2人きりで会うのは初めてで、会話が弾むのだろうかとか色々悩んだりしていたけど、私が答えやすいような話題をふってくれ、思いの外、楽しい時間を過ごすことができた。

その上、職業柄もあるのか、食事をしていてもサラダを取り分けてくれるし、日頃、店に食べに行っているから私がよく食べることもバレていて変に格好つけなくてもいいからすごく楽だった。

「ごめん、気が利かなくて。私やるから」

「別に気にしなくていいですよ。それよりほら、食べてください」

何か尽くされてる、て感じがしてドキドキしてしまった。

いや、ダメダメ!

今日はきちんと断るために来たんだった。

「あのね、蓮くん」

ついつい雰囲気に流されそうになったけど、ギリギリのところで思い出し気持ちを落ち着かせると、本題を切り出そうと思ったが

「断るためにここに来た、なんて言わないでくださいね」

蓮くんが真っ直ぐ私を見つめ、私の言葉を遮るように重ねてきた。

「でも蓮くんとは年齢的にも離れてるし……」

どうにか納得してもらおうと慌てて理由を口にするが

「年齢とかそういう理由で断るとかしないでください。俺、本気で志乃さんの事が好きなんです!」

「坂本 志乃さん。俺と付き合って下さい」

あまりにも真剣な眼差しに私は何も言えなくなってしまった。

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