「あの…誘惑科に入りました、冬熊水梨です」
「…」
そう名乗った少女は、俺よりも年下そうだった。でも歳はそんなに変わらないはずだ。
「私の可愛い後輩ちゃんでーす」
「…そんな、恐縮です…教官」
「水梨ちゃんはちょっとずつ仕事に慣れていこうね♪」
「はい…」
俺もそんなふうにちょっとずつ仕事に慣れていきたいんですけど…
「まあ後は若い二人でー私仕事行かなきゃ」
「え…?」
「頑張ってねー」
「ひらりさんまで!?」
なにその結婚する前のカップルみたいな…気まずいんですけど!!
…やっぱり綺麗な子だ…さすが誘惑科。
「あの…そんなじろじろ見られると恥ずかしいんですけど…」
「あぁ!ごめんなさい…」
ほんっっっとに気まずい!!
どうすればいいんだよぉ!!
「…」
「彩教官ー?なにじろじろ見てるんですかー?仕事は?」
「今日はもうないわ。あれは嘘。いやぁ、あの二人、なかなか見てて面白いから」
「ふーん?」
「斗癸は?さっき拷問したやつの片付けしなくていいの?」
「あ、はーい…」
「まったく…」
「鶫も苦労してるのね…」
「そうなんですよ…彩さん。斗癸さんったら好きあらば女の子にナンパしてるし。はぁ…」
大変そうね、と彩は同情した目を向ける。
「まぁ、黙って見てましょ。ひらり先輩も」
「うん」
全部見えてますよ彩さん達!!
そーいう仕込みだったんか…?
「どうしました?」
「あ、いや何も…」
「あらもうこんな時間。配信の準備しなきゃ…」
「配信?」
「ええ。私配信者なんです」
「へぇ…俺も帰ろっと」
今日は酷い目にあったし。疲れをとりたい…
でも、なんだかそれぞれの教官によって、戦い方が違ってちょっと面白かった。彩さんはちょっと奥手だったけど、岸さんはもう速いし、動きが…
だってなんかマフィアのボスみたいだったし!!
「おい蒼。俺のこと忘れてるな?」
「わっ!フェルマータ!?」
「今日からお前の家で世話になるぞ。いいよな?拒否権ないけど」
「はっ…はぁ!?」
というかあの壁どうしよ!!今日はあの壁に触れずにここまできたけど…
ってかもうすぐ俺の母さん帰ってくんじゃん!!まじどうしよ…
と、焦りながら俺は家に帰った。
「これどういうことなんだ…?」
家に帰ると、壁がまるで何もなかったかのように元に戻っていた。
「ひらりの魔法だろ。別にこんなことしなくてもよかったのにな」
「いや…」
「どうした?」
「魔法ってすごいんだなぁ…」
と、思いました俺は。
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