コメント
2件


みこちゃんショタは神です
カーテンの隙間から、薄い光が静かに差し込んでいた。
白いシーツの上、すちはいつものように片腕を伸ばす。
そこには、昨夜まで確かにいた恋人――みことのぬくもりがあるはずだった。
けれど、その手の先は冷たい空気しか掴まない。
ぼんやりとした頭のまま目を開ける。
布団の形も、寝息の音も、ない。
「……みこと?」
呼びかけても返事はなかった。
胸の奥に小さなざわめきが生まれる。寝室のドアを見つめながら、まだ眠気の残る身体を起こそうとした――そのときだった。
「う゛……うわぁぁぁあああん!!」
突き刺さるような泣き声。
みことの声に似ている。でも、全然違う。
高くて、泣きじゃくっていて……まるで子どもみたいな声。
すちは反射的に飛び起きた。
寝ぼけてなんかいられない。心臓が跳ね、血の気が一気に巡る。
声のしたリビングへと、ほとんど転がるように駆け込んだ。
「みことっ!?」
その名前を呼んだ瞬間、視界に飛び込んできた光景に息が止まる。
ソファの上に、小さな影。
白いシャツをぶかぶかに着て、ぐしゃぐしゃに泣き顔を歪める小さな男の子。
ふわふわの髪。見慣れた瞳。
――でも、どう見ても“幼い”。
「すちぃ……っ! すち、どこいってたのぉ……!」
泣き声の主が、確かに“みこと”の声だった。
信じられないほど小さな手が、すちのほうへ必死に伸ばされる。
「え……みこ? 本当に、みこと……なの?」
「すちぃぃ……! うえぇぇんっ、やだぁ……やだぁぁ……!」
涙と鼻水で顔をくしゃくしゃにして泣くみこと。
その姿があまりにも必死で、可哀想で、すちは一瞬で我に返った。
「わ、わかった……! 泣かないで、だっこする!」
慌てて駆け寄り、その小さな身体をそっと抱き上げる。
腕の中に収まる重さが信じられないほど軽い。
身体の温度がぴったりと胸に吸い付くように伝わってくる。
「すち、いなかった……すちがいないの、やだぁ……」
「大丈夫、大丈夫。俺、ちゃんとここにいるよ。もう離れないから」
すちは背中をゆっくり撫でる。
みことは小さくしゃくりあげながら、ぎゅうっとすちのシャツを掴んだ。
涙で濡れた頬が、すちの首筋に押し当てられる。
「ん……すちのにおい、する……」
「そうだよ。すちだよ」
その小さな声に、胸がきゅっと締めつけられる。
恋人であるはずのみことが、今はこんなに小さくて、守ってあげることしかできない。
その事実に、困惑よりも強い愛しさがこみ上げてきた。
「すち……だいすき……」
泣き疲れた声でそう呟く。
その瞬間、すちは抱きしめる腕に少しだけ力を込めた。
「……俺も。みことのこと、大好きだよ」
言葉の温度が届いたのか、みことは「ん……」と小さく息を吐いて、すちの胸の中で目を閉じる。
涙の跡を残したまま、安心したように眠りに落ちた。
すちはその頭をやさしく撫で続けながら、額にそっと唇を落とした。
その髪の感触も、ぬくもりも、すべてが懐かしくて、愛おしくてたまらない。
「みこと……どうして、こんな姿に……」
小さくつぶやいても、答えはない。
でも今は、そんなことよりも、この腕の中の小さな恋人を守ることだけが大事だった。
小さな寝息が、すちの胸に心地よく響いた。