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第一話 神猿×人の子
ーー神猿(まさる)とは、日本の動物神の一種である。神として一部の神社に祀られているが、人身御供や生贄を要求して人里を脅かす妖怪としての二面性ももつ存在である。
某年 ーー国
ある村の外れに一人の目の見えない少年が住んでいました。
彼は物心つく前に二親を流行病で亡くし、甲斐甲斐しく面倒をみてくれた兄も昨今の戦で亡くしており、天涯孤独の身でした。
あの家に関わったら碌な目に遭わない、と村の人々からも避けられる毎日。
少年は耐えきれない程の孤独に襲われていました。
家族の元へ行こうかと、何度思ったか分りません。
そんな辛く寂しい日々を送っていた少年。
しかし、ある日彼の元にー
ー戦場に行って帰ってこなかった兄が帰ってきたのです。
「…兄ちゃん?」
少年は盲でしたので、兄の姿を見ることはできません。
ですが、伝わってくる気配は間違い無く兄だと分かるのです。
「ごめんなぁ。道に迷ってもうて帰って来れんかったんや」
「兄ちゃんッ!」
少年は兄の元に駆け寄り、力いっぱい抱きつきました。
もうとっく死んでしまったと思っていた兄が生きていたのです。
これ以上の嬉しいことがあるでしょうか。
涙枯れる程泣いて喜んだ少年は、いつしか疲れ果て兄の腕の中で眠りに落ちてしまいました。
兄は眠ってしまった弟を慈しむように撫でていました。
「…やっと見つけた、もう二度と放さんで。
儂の可愛い子…」
顔が口から真っ二つに裂けてしまうのではと思うほどに、三日月の形に口を歪ませ不気味な笑みを兄は浮かべていました。
それは兄の身体を持った得体の知れない何かのようでした。
くけけ、と猿が笑うような声が田園の広がる村に溶け込んでいきました。
神猿×人の子 導入話 了