女性客「シャンパン頼むね〜!」
「マジで〜?ありがと!」
女性客「湊のためだもん!」
「じゃあ俺も頑張っちゃおうかな〜♪」
「ッ…お”え”っ…」
先輩「おい…ガチで大丈夫か?」
「大丈夫…ッすよ…」
そう言い、俺は笑う
先輩「ちょっと今日は休め」
「無理です」
俺はすぐに答えた。
先輩「なんで」
「…お客さん、待ってるんで…行きますね」
先輩「あっ、ちょっと!」
加賀美社長「不破さん、今日もよろしくお願いしますね」
もちさん「不破くんよろしくお願いしますね〜」
甲斐田「アニキよろしくっす!」
加賀美社長「──────────」
もちさん「───────?」
甲斐田「─────!」
「───────w」
…やばいかも
少し、クラクラしてきた
言葉が、頭に響き渡る。
『不破くん今日もかっこいいね!』
『湊、私と付き合ってよ〜』
『不破くんさいこう!』
『ふわっちやっぱすき』
『やっぱりふわっちが一番!』
吐き気が、俺を襲ってくる
もちさん「不破くん?」
もちさんが、俺を呼んでる
加賀美社長「大丈夫ですか?不破さん」
甲斐田「アニキ〜?」
社長も、甲斐田も、俺を、呼んでる
…”俺”…を?
この人たちは、不破湊を呼んでいる。
ホストで、にじさんじライバーの、不破湊を。
俺を、呼んでいるのか、?
俺という存在を、本当に呼んでいるのか?
違う
必要とされているのは、俺じゃない
バーチャルホストの、不破湊だ。
不破湊だけを、必要としている
目を開けると、白い天井が見えた。
甲斐田「アニキ!?起きたんですか!」
加賀美社長「不破さん!大丈夫ですか?」
もちさん「不破くん、大丈夫ですか」
この人たちが心配しているのは
この人たちが好んでいるのは
にじさんじ所属バーチャルホストで
顔や、声が色んな人に好まれている、
不破湊だ。
加賀美「不破さん、他のライバーさんに連絡しますね!」
甲斐田「アニキが起きてくれてよかったです!」
剣持「不破くんが無事で本当によかったですよ」
「あは…ッ…は」
剣持刀也「は…?」
甲斐田晴「あ、アニキ…?」
加賀美ハヤト「不破さん…?」
意味なんて、なかったんだ
不破湊が好きなら、
声を録音したり
中身だけ変えたり
そんなことをしたって、
不破湊は好かれる
不破湊は愛される
俺の代わりは
誰でもいいんだ
俺が
俺で
永遠に
俺である限り
不破湊には、
不破湊という存在には
手が、届かない
いつも愛されるのは不破湊
いつも会話しているのは不破湊
じゃあ、俺は…?
なら俺は、なんだって言うんだ
俺は、なんなんだ?
俺は、誰だ
俺の名前は?
俺って、一体、誰なんだ?
……………………
意味があると思えなかった。
俺に意味があるなんて、考えられない。
剣持刀也「不破くん」
「どうしたんですか、?(笑)」
剣持刀也「君は、君だ」
え…?
もちさん「君は不破湊だ。
君は、君が憧れて、手が届かない存在だと思っている、不破湊だ。
他の誰でもない、不破湊なんだ。」
加賀美社長「不破さんは、いつも元気で、笑顔にさせてくれる、とても優しい人です」
甲斐田「アニキは、俺の尊敬する師匠っすよ!」
俺は───俺の、名前は──────────.
不破湊…?
そうだ
思い出した
俺は、不破湊だ
不破湊なんだ
「っ…」
目からは透明な液体が流れていた。
その雫一粒一粒が流れ落ちるごとに、
さっきまでの苦しみや、悲しみ、寂しさが一粒一粒消えていく。
あぁ、この人たちが、いてくれて本当によかった
第1話
人物:不破湊
『不破湊という存在』
終
コメント
6件
真面目にガチで考えて神作品じゃん
めっちゃめちゃいい話ですね! 手が空いてる時でいいのでこの話の 続きを待ってます!