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「皆さーん剣持刀也ですよ〜!」
リスナー「きちゃぁ!」
リスナー「はろはろ〜」
リスナー「こんちゃー」
リスナー「また来たのかよ」
「もうすぐでね、咎人コラボがあるんですよ〜」
リスナー「マジで!?」
リスナー「楽しみ〜」
リスナー「最高やん」
リスナー「ガッくんが可哀そう」
リスナー「ろふまおも可哀そうだな」
「俺も楽しみなんですよ〜」
リスナー「俺?」
リスナー「俺っていった!」
あ、
「僕!僕僕僕僕僕僕僕僕僕!僕ッ!」
リスナー「俺助かる」
リスナー「草」
リスナー「www」
リスナー「クソうるせぇ」
「じゃあ、今日の配信はここまで」
リスナー「おつ〜」
リスナー「お疲れ〜」
リスナー「やっと終わった」
…………
いつからだろうか。
こんなにもアンチコメントが目に入るようになったのは。
咎人コラボやろふまおコラボではあまり見ない。
きっとそれはガッくん達がいるから。
俺の配信に来る人は何人、
僕のことが好きなのだろうか
そんなことを考える自分に嫌気がさす
ガッくんのせいじゃないのに、
ろふまおのせいじゃないのに。
その人達のせいにしてしまう自分が嫌になる
「…っ」
息が詰まる。
涙が溢れる。
こんな僕が、泣いていいはずなどないのに。
ふと、机の上にあるカッターに視線が移る。
衝動が抑えきれなかった
僕はそれをすぐに掴んだ。
僕が力を入れると、
カチッ…カチカチッという音を立ててそれは刃を出した。
僕はその刃を腕に当てる。
少し力を入れただけで、すぐに血が出た。
いつもならこれで終わるはずなのに。
僕の手は、止まらなかった。
「…少しくらい…いい…よね…」
どうせ、誰も知らない。
僕のこんな姿、誰も知らないから。
誰もわからないから。
誰にもバレないから。
力を加えて、傷をつけるように、腕を横に動かす。
シュッと音を立てて、切れる。
薬のように、一回やってしまえば止めることは
できないと分かっていたはずなのに。
何回も何回も切った。
何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も
何回も。
どんどん力を強めて。
場所を変えて。
切る範囲を広くして。
僕は気づいた。
「…この…黄色いのって…なんだ…?」
切った皮膚の中には、黄色いものがあった。
「まぁ…いいか」
僕は切り続けた。
ただひたすらに。
リスナー「剣持…?」
配信が止まってない事にも、気づかずに。
「それでさ────」
剣持リスナー「ガッくん!剣持がやばい!」
「え?」
剣持リスナー「急に鳩、ごめんなさい。うそではないです。剣持が配信を終わらせたんですけど、止まっていなくて。そしたら急に無表情になって、カッターの音がして…」
俺はその時、嘘だと思った。
念の為だった。
「わかった、とりあえず刀也さんの家に行くから。」
剣持リスナー「ありがとうございます」
嘘であってほしかった
見慣れた扉を見ながら、インターフォンを押す
「刀也さ〜ん…?」
返事はない。
留守にしているのではないだろうか
そう思って、扉の取っ手に手を掛けると、
ガチャッという音を立てて扉は開いた。
刀也さんにしては不用心だな
そんな呑気なことを思っていた。
部屋に入る。
俺は、その光景に目を疑った。
部屋には、色々なものが落ちていた。
刀也さんがいつも腕に巻いていた包帯。
刀也さんが配信で使うマウス。
その中に,刀也さんの背中があった。
刀也さんの背中だけじゃなかった。
周りには血が飛び散っていた。
それも、大量だった。
俺は配信を止めた。
そして刀也さんに駆け寄る。
刀也さんの肩を掴もうとした瞬間、気づいた。
刀也さんの肩は、震えていた。
…また、切ってしまった。
いつもなら、快感だけで済むのに。
今日は、今日だけは、謎の感情が、僕を包んだ。
目からは涙が溢れて止まらない。
腕からは大量の血が流れ出す。
苦しくて苦しくてたまらなくて。
呼吸が,いつもよりもしにくくて。
ふと、頭の中にある考えが回った。
このまま、死んでしまえば。
自分が消えてしまえば。
きっとみんな、幸せになれる。
みんな、楽になれる。
僕は、やっと笑った。
涙でぐしゃぐしゃになった顔で、やっと。
笑えた。
──────?
なにか、聞こえる
??「刀也さんッ!」
…!
「ガッくん…?どうして、ここに…」
ガッくん「刀也さんこそ…どうしてこんな…ッ」
…バレてしまった。
「…やめて…ッ」
ガッくん「え…?」
「見ないで…ッ」
ガッくんは驚いた顔をしていた。
その顔を見てやっと僕は、自分が何を言っているのか気づいた。
「あッ…その…ッ」
ガッくん「どうして…?」
「え…?」
ガッくん「どうしてこんなになる前に、相談してくれなかったんっすか…?」
ガッくんは、泣いていた。
「どうして…って…ッ」
ガッくん「なんで話してくれなかったんですか?
どうして、話さずに壊れちゃったんすかッ?
俺達はっ…相方同士じゃないんですかっ!?
なんで1人で勝手に考えてるんすか?
なんで自分が壊れることを予測できなかったんすか?
自分だけならいいとでも思ったんですかッ!」
正直、言葉が出なかった。
僕は、ガッくん達のためだと、
本当に思っていたのか?
ガッくん「俺…わかんないっす…刀也さんが、
何を思ってるのか…何を、考えているのか…
教えてくださいよ…ッ
もう…1人で溜め込まないでくださいよ…ッ」
ガッくんは、涙を拭いた。
ガッくん「刀也さんの本当の気持ち、
言ってみてください」
ガッくんはそう言って、笑いかけてくれた。
本当の…気持ち…
なんだろう、ガッくんの顔を見ていたら
どんどん胸の奥が暖かくなる。
「僕は、ずっと周りとは違うって思ってた。
それは、合ってた。
周りはみんな好かれてるのに、
僕は、誰にも好かれてない気がして。
ガッくんにも、ろふまおにも他のみんなにも、
迷惑かけてるんじゃないかって。
だけど、本当に思ってたのはそうじゃなくて。
僕は…
みんなのせいで、僕が嫌われてるんじゃないかって、
そんなこと考えちゃって…ッ
そんな自分が嫌になって、だから、自分を切ったら
そんな気持ちも無くなって…
みんなに、迷惑をかけないでいれると思ったっ…
だけど今日は苦しさが消えなくて、
ずっとしんどくて…っ
だから…だから…ッ…」
僕の涙が消えることはなかった
ずっと溢れ出してくる
ガッくん「大丈夫」
え…?
ガッくん「刀也さんが迷惑なんて、そんなことない
むしろ刀也さんのおかげで俺は毎日が楽しいんすよ!
だから…正直、怒ってます」
さすがに、怒られるよね…
ガッくん「刀也さんに酷いことを言った人が
許せないっす!」
「え、?」
今度は声が出てしまった
ガッくん「だって、刀也さんが可哀想なんすもん!」
「…ぷっw…あははっ!ww」
ガッくん「ちょっと、笑わないでくださいよ!」
「だってwww」
ガッくん「…やっと、笑ってくれたっすね」
ガッくん「刀也さん、もう、こんなことしないでください…お願いします…ッ」
「ガッくん…」
そうだ.僕には、ガッくんも、みんなもいる。
こうやって、悲しんでくれる人がいる。
僕を僕でいさせてくれる場所がある。
だから、もう。
傷つく必要なんかない。
これからもみんなと笑っていよう。
これからも、ガッくんと生き続けていこう.
第2話
人物:剣持刀也
『みんながいてくれるから』
終