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初陣から、3ヶ月──。
「兵長、次回の壁外調査の隊列ですが……」
ここは、リヴァイの執務室。
机の上には報告書と隊列表が広げられ、レイとリヴァイは次の作戦について打ち合わせをしていた。
静かな空間に、
コンコン、と控えめなノック音が響く。
「リヴァイ兵士長、ペトラ・ラルです」
予想外の来客に、レイは僅かに目を瞬かせ、扉の方へ視線を向けた。
「入れ」
リヴァイは書類から目を離さず、短く答える。
扉が開く。
「突然すみません。ここにレイは――あ!」
入室したペトラとレイの視線が重なり、
その瞬間、彼女の顔がぱっと明るくなった。
「ペトラ、どうしたの?」
リヴァイが依然として書類に目を通しているため、代わりにレイが問いかける。
「あ、実はね。今、各班交代で三日間の調整日が設けられてるでしょ?ちょうど私の班と兵長の班が同じ日で……」
そう言って、少し身を乗り出す。
「レイも予定が空いてたら、一緒に私の家に帰らないかなって思って!」
今日は、調査兵団にとって貴重な調整日。
いわば、束の間の休暇だ。
「あー……」
レイは一瞬だけ視線を落とし、手元の書類に目を向ける。
その様子を見て、リヴァイが口を開いた。
「……行ってきたらどうだ」
「いえ、まだ雑務が……」
「気にしなくていい」
淡々とした声。
「元々俺の仕事だったものを、手伝ってもらっているだけだしな。」
レイは言葉を飲み込む。
役職持ちの上官が抱える雑務。
それを少しでも減らしたくて、
そして何より――リヴァイの役に立ちたくて、
レイは自ら手伝いを申し出た。
最初はリヴァイも拒否をしていたが、
レイの圧に負け、今では同じ執務室で
ほぼ毎日 書類整理や打ち合わせを行っている。
「ですが……」
書類の山に視線を落としたレイに、
リヴァイは少しだけ声を落とす。
「……くどい」
「俺がいいと言っている」
さらに続ける。
「それにお前、ここ3ヶ月ろくに休んでねぇだろ」
訓練、任務、雑務。
レイは息つく間もなく、
目まぐるしい日々を送っていた。
「無理をして倒れられても困るからな」
短く言い切る。
「……いいから行け」
レイは少し考え──
そして、静かに頷いた。
「……分かりました。ではお言葉に甘えて、少しの間お休みを頂きます」
「あぁ」
書類を綺麗に片し、椅子から立ち上がる。
リヴァイは相変わらず視線を上げない。
「何かあれば、すぐに駆けつけますので」
そう言い残し、扉へ向かう。
「行こう、ペトラ」
「うん! それじゃあ兵長、少しだけレイお借りしますね!」
ペトラが先に執務室を出る。
レイも続こうとした、その時──
「おい、レイ」
低い声に呼び止められ、足を止める。
「どうしました?」
振り返ると、リヴァイがこちらを見ていた。
「……しっかり休め」
レイを見つめながら続ける。
「帰ってきたら、また俺の隣で働いてもらう」
「巨人共のうなじも引き裂いてやらなきゃならねぇからな」
(……”隣”で)
胸の奥が、確かに熱くなる
地下街で見た背中。
追い続けた場所。
(……やっと、同じ場所に立てた)
「返事は」
「あ……はい」
我に返り、レイは背筋を正す。
「兵長のお役に立てるよう、回復に努めます」
軽く礼をし、今度こそ執務室を後にした。
⸻
「……はぁ〜……緊張した……」
廊下に出た途端、ペトラが大きく息を吐く。
「緊張?」
きょとんとした顔で、レイが尋ねる。
「そうだよ!”完全無欠” “人類最強” そう謳われるリヴァイ兵長の執務室で、本人に直接に会ったんだから……そりゃあ緊張するよ」
身震いしながら、げっそりとした顔を作る。
「寿命、縮んだかと思った……」
「ふふっ」
思わず零れた笑みに、ペトラがむっとする。
「笑わないでよ! それにさ……」
少し間を置いて、じっとレイを見る。
「新兵なのにリヴァイ班に抜擢された上、まだ3ヶ月しか経ってないのに、もう兵長と二人で行動してるレイの方が珍しいよ?普通じゃ考えられない」
「……そうかな」
「そうだよ!」
不貞腐れたように言いながらも、
普段あまり見せないレイの笑顔を見て、ペトラは少し嬉しそうだった。
「……確かに、新兵の私にここまでしてくれるのは、すごく恵まれてるよね。」
「……そういう意味じゃないんだけどね」
一瞬の沈黙の後、ペトラはぱっと表情を変える。
「ま、いっか! とにかくさ、せっかく休みもらえたんだし、久々にうちでのんびりしよ!」
そう言って、少し強引にレイの手を引く。
兵舎を離れる二人の背中を、
日の光が見送るように照らしていた。