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イベントごとに興味なんてなくて、なんなら言われなければ過ぎて気づくなんて当たり前で。自分の誕生日だってみ!るきーずが祝ってくれなければただの普通な1日で。
そんな今日だって、舜太に言われなければただの普通な1日で。
「仁ちゃん、明日クリスマスやん!イブはなにして過ごすん?」
「あ?クリスマス?別になんもしねぇ。飯食って風呂入ってゲームして寝る」
「えぇ!なんやつまらんな~」
「つまんねぇってなんだよ」
「俺はな!さっきリール投稿してきてん!クリスマスデートしてくれる?って」
「なに?俺とクリスマスデート行きてぇの?」
舜太の脈略のない話に首を傾げる。
「なんで、仁ちゃんとクリスマスデートしやんといかんのよ!そういうことやない!あと、そこまで命知らずやないよ!」
なんでか怒られた。
「そういうことやなくさ、クリスマスやん?世の中は大事な人とかと過ごしてるやん。仁ちゃんは?って話」
あーやっと舜太の言いたいことがわかったわ。
「別になんもねぇよ。お互いに仕事だし、そんなイベント大事にしてるわけじゃないし」
「そぉなん?寂しくない?」
寂しいもなんもないだろ。
「全然?」
基本イベントごとは先撮りして当日出すみたいなことが多い業界だから季節感とかそんなことには疎くなるし、今更寂しさを感じる年齢でもない。
だからか、いろんなタイミングで季節感とか記念日とかを大事にしてる舜太をちょっと尊敬してる。それこそ、リールとか頑張ってんなって。
「え~なんか俺が寂しなってきたから舜太サンタがイルミネーションでも付き合いましょか?」
「なんで、勝手に寂しくなってんよ。いらんわ」
「ええやんええやん!帰り道なんやからさ、ちょっと見てこや!」
「……絶対人多いから遠くからな」
「わーい!」
舜太なりの気遣いか、ただイルミネーションが見たいだけか。
嬉しそうな舜太を横目にこんな日も悪くねぇかって思わなくもない。
「仁ちゃん!仁ちゃん!奇麗やな!」
「ちょ、舜太あんま大きい声出すな!」
テンションが上がって奇麗やなーなんて言いながら写真を撮り続ける舜太。
思ってるよりも周りは自分たちのことに夢中で周りなんて見えてないことに安堵しながら舜太とイルミネーションを楽しむ。
「仁ちゃん、ほんま奇麗やなー」
「あーだな」
確かに、奇麗ではある。ただ、規模はこっちのがすごいのになんであいつと見た空港のイルミネーションや温泉宿の庭のイルミネーションのが奇麗とか思っちまうんだろな。
せっかく、舜太が誘ってくれたのにこんなことを思ってしまう自分が少しだけ嫌になった。
「仁ちゃん、そんな顔しやんでよ~」
「え?」
「顔に出てるで」
「あーごめん」
「謝らんでよ。そりゃ~好きな人と見る景色んが奇麗に決まっとるもん。今は俺で我慢してや」
「ごめ…ありがと」
ごめんは違うなと思いお礼を口に出せば「いいんやで」と言ってくれる舜太。
ほんと、舜太って人を幸せにする力を自然と持ってるなと感心させられる。
「舜太、そろそろ帰っか」
イルミネーションに夢中な舜太に声をかける。
「あー…っと、あとちょっと、だめ?」
「写真も結構撮ったろ?まだ、撮る?」
「いや、写真はもう大丈夫!」
「なに?なんかあんの?」
舜太がゆっくり近づいてきて両手をとられる。
「仁ちゃんさ、俺がなんて言って誘ったか覚えてる?」
「え?」
「仁ちゃん、俺からのクリスマスプレゼント受け取ってくれん?」
舜太からのクリスマスプレゼント?
「仁人」
後ろから呼ばれる俺の名前。聞きなれた声。
「舜太サンタからのクリスマスプレゼント。ちょっとは素直になりなね」
くるっと体を反転させられて、背中を押される。
バランスを崩せばすぐに受け止められ、目の前に広がるのは厚い胸板。
「舜太、さんきゅな」
「ん-ん!じゃ、またリハでね!」
自分の頭上で交わされる会話に舜太の去る音。
顔を上げれば目の前には勇斗。
「仁人遅くなったわ」
「なんでいんの?」
「仁人とイルミネーション見たくて」
「なん…それ」
さっきより光輝いて見える勇斗越しのイルミネーション。
抱きとめられていたことに我に返り勇斗から離れる。ありがたいことに周囲は相も変わらず他人には興味なんて示していない。
「仁人、奇麗だな」
「舜太が言ってた好きな人と見る景色が一番奇麗に決まってんだってさ」
「じゃ、俺にとって仁人と見た空港とか温泉宿の庭とかこのイルミネーションが一番だわ」
まったく俺と同じことを考えてた勇斗に心が暖かくなる。
「ん、俺も」
右手を勇斗に握られ、見上げたイルミネーションは眩しいくらい輝いて見えた。
END