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📖 第十二章:「並んだ帰り道」
翌日の放課後。
チャイムが鳴り終わると同時に、教室は一気にざわつき始めた。
椅子の音、笑い声、カバンを閉める音。
○○は、いつもより少しだけゆっくりと荷物をまとめていた。
○○:(……昨日のこと、変に思われてないかな)
ふと、昨日のやり取りが頭に浮かぶ。
「悪くない」
——その一言が、何度も繰り返される。
○○:(でも……ちょっとだけ、嬉しかったな)
小さく息を吐いて、立ち上がる。
⸻
校門へ続く帰り道。
夕方の空は、昨日よりも少し淡い色をしていた。
部活へ向かう生徒と、帰る生徒が交差する中——
○○は、前を歩く一人の背中に気づく。
○○:(……あ)
それは、凛だった。
少し無造作な歩き方。
ポケットに手を入れたまま、静かに歩く後ろ姿。
○○は立ち止まる。
○○:(どうしよう)
声をかけるか、そのままやり過ごすか。
○○:(……昨日、喋ったばかりだけど)
胸の奥が、じんわりと熱くなる。
気づけば——足が動いていた。
○○: 「……凛!」
少しだけ大きな声。
凛の足が止まる。
ゆっくりと振り返る。
凛: 「……何」
いつもの短い返事。
でも、逃げるような空気はなかった。
○○は少しだけ息を整えて、近づく。
○○: 「今……帰り?」
凛: 「見れば分かるだろ」
そっけない。けど、昨日より少しだけ柔らかい。
○○は一瞬迷って——
○○: 「あの……」
言葉が詰まる。
○○:(言うんだ、ちゃんと)
ぎゅっと手を握る。
○○: 「……一緒に、帰ってもいい?」
空気が、ほんの少し止まる。
凛は、少しだけ目を細めて○○を見る。
沈黙。
数秒が、やけに長く感じる。
凛: 「……別に」
短い答え。
でも、それは——拒否じゃない。
○○の心臓が、ドクンと大きく鳴る。
○○: 「ほんとに?」
凛: 「しつこい」
そう言って、また歩き出す。
でも——
その歩幅は、ほんの少しだけゆっくりにな
っていた。
⸻
並んで歩く帰り道。
会話は、ほとんどない。
靴音だけが、静かに揃う。
○○:(……どうしよう、何話せばいいんだろ)
ちらっと隣を見る。
凛は前を向いたまま。
でも、どこか落ち着いているようにも見える。
○○は意を決して口を開く。
○○: 「あのさ」
凛: 「……何」
○○: 「昨日の……飲み物」
凛の視線が少しだけ動く。
○○: 「ほんとに、大丈夫だった?」
凛は少し考えるように間を置いて——
凛: 「ちゃんと飲んだ」
○○: 「……それは知ってる」
思わず小さく笑ってしまう。
凛は一瞬だけこちらを見る。
その表情は、ほんの少しだけ和らいでいた。
凛: 「……甘すぎなくていい」
○○: 「……!」
○○の目が少しだけ見開く。
○○:(覚えてくれてる)
胸の奥が、じんわり温かくなる。
○○: 「また作るね」
凛: 「好きにすれば」
やっぱりそっけない。
でも——
その言葉が、少しだけ優しく聞こえた。
⸻
分かれ道。
凛が足を止める。
凛: 「俺、こっち」
○○: 「あ……うん」
少しの沈黙。
○○は迷って——
○○: 「……また、明日」
小さく言う。
凛は背を向けたまま、
凛: 「……ああ」
短く答えて、そのまま歩いていく。
⸻
一人になった帰り道。
でも、昨日までとは違う。
○○:(……一緒に帰れた)
それだけで、胸が少し軽くなる。
夕焼けの空の下——
二人の距離は、確実に近づいていた。
コメント
1件
ちょっとづつ甘くなっていく凛ちゃん可愛い
すず🍥🎀