「ふぅ…」
今日は朝から荒ぶってしまった。
誰だってあんな可愛い事されたら叫ぶに決まってる。
「さて…ショッピングアプリでも見ましょうかね」
万屋という事で大体のものはここで注文できる。
「予備の布団に食器…あとは…風呂の方もどうにかしたいな…」
そう。ここの離れには風呂がない。毎度裏にある蛇口を使って身体を拭いたり頭を洗う事しかできない…正直嫌だ…匂いは気になるし何よりめんどくさい。
「風呂は増築できないらしいしなぁ」
離れではなく母屋の方ならできるらしい。こっちもできるようにしてくれよ
「あれまた何か買うの?」
「あぁ燭台切、いたんですね」
「うん皿洗い終わったところだよ」
「それで、何見てたの?」
「それが…そろそろ風呂をどうにかしたくて」
「そういえば確かここにはなかったね」
「やっぱり母屋に行くしかないですか」
「だねぇ」
うーんと唸っていると
「主さま!」
「うわぁっこんのすけ」
「そろそろ鍛刀、してみませんか!」
「鍛刀?」
「そうです。母屋の刀達に立ち向かう為にもまずは戦力強化をしましょう」
「急過ぎやしませんかこんのすけさんよ」
「それに鍛刀部屋ってやつは母屋の方にあるんでしょう?」
できるの?と聞くとこんのすけは何やらにこにこしながら
「一時的なものではありますが結界を張れる札と依頼札、手伝い札を手に入れたのです!」
「いくら結界があれど危険だと思うよ僕は」
「大丈夫です。鍛刀部屋までのルートをあらかじめ計画しておきましたから。このルートを通れば刀剣男士と出会う確率は零です」
そう言いながら地図のようなものを渡してくる
「まぁ行けないこともないのかな?」
「確かに安全かもしれないけど…行くなら僕も行くよ」
主を守るのが僕達の役目だからねと顔をキリッとしながら言う燭台切は何だか騎士っぽいかっこいい
「それなら俺達も行くぜ大将」
「ぼ、僕達も行きます!」
「あら心強い」
結局鍛刀部屋には私とこんのすけそして残りの4振りが着いてきてくれることになった
「万が一の事があったら急いで離れに逃げる事。戦いはなるべく避けたい」
ここにいる刀達は練度が低く複数が相手になれば流石にまずい
「それでは鍛刀部屋にれっつごー!!」
「お、おー!」
離れを出る前にこんのすけからお守りにと短刀を渡された。この刀には付喪神がいないらしい
「まさかこの人生でまじもんの刀握るとは思ってなかったな…」
鞘から出してみると丁寧に磨かれていてキラキラと光る刀身が出てきた
「落とさないように気を付けよう」
気を取り直して母屋へ向かう。とは言っても普通のルートでじゃない
屋敷の裏口から侵入していき、隠し通路のような所を通っていく。
「こんな所があったのか…」
元々いた刀達でも知らないところらしい。流石こんのすけ
「こちらです」
そう言われて案内されるとそこには鍛刀部屋と書かれた部屋があった
「ここか…」
屋敷の内部は何処も空気が重苦しい早く行こう
「お邪魔します…?」
中に入るとそこは少し荒れてはいるが使えない事はない状態だった
「結界を張りますから後ろへ下がってください」
「あ、うん」
ペシンッと音を立てて札が襖に張り付く。
これで本当に結界になっているのだろうか
「それでは鍛刀を始めましょう」
「資材はどうしますか?」
「資材?」
「はい。鍛刀は資材の数によって出る刀の種類が変わります」
「なるほど…じゃあ適当に500くらい…」
部屋の隅に隠れていた式神さん達にお願いしますと資材と依頼札を渡していく。スススっとすばしっこく鍛刀準備を始めた。
すると何やら時間のような数字がすぐ傍に現れた。
「これは?」
「これは鍛刀終了までの時間ですね、今回は…2時間30分です」
「おぉどんな刀が出るんだろう」
「手伝い札を使ってすぐ終わらせましょう」
「はーい」
先程と同じように手伝い札を渡す。すると式神さん達がいる所だけ急に時間の流れが早くなったかのようにとんでもないスピードで作業が始まった。
「なにこれすごい」
「終わったようですね」
「早い」
式神さんが優しく刀を目の前に置いていく。出来たてホヤホヤの刀…
「では主さま!その刀に霊力を込めて下さい!」
「分かった」
未だに霊力の出し方はよく分かってない。感覚でこう…ドバっと…そういう感じでやってはいるのだが実際自分が出すより先にここに力を込めるぞっと念を込めると勝手に霊力を抜き取られるぽい。なんだかゾワゾワする
「…っ!!」
突然目の前が眩しく光ったかと思ったら桜の花びらがヒラヒラと舞い散りながら落ちていく。その先にいたのは
「へし切長谷部、と言います。主命とあらば、なんでもこなしますよ」