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ナツが作ってくれた夕食をみんなでいただく。
子供が多いので食卓はとても賑やかだ。シロもメアリーも嬉しいのか、しきりに尻尾を振っていた。
そして、いよいよお待ちかねのデザートタイムだ。
紅茶とミルクティーをそれぞれに配り、インベントリーに入れていたドーナツをテーブルに出した。
シロにもお水と共にドーナツ2個を空いた皿に入れてあげる。
子供たちは目を輝かせてドーナツを一つ、また一つと手に取っていく。
俺も紅茶を飲みながら一つ頂いた。
うん、少し硬かったかな?
でもまあ、ぶっつけ本番でこれなら上出来だろう。子供たちも喜んでるし。
シナモンドーナツなんてのもいいな。こっちの世界にもシナモンがあるといいけど。
王都に行けば大きな市場が何ヶ所も出ているそうだから、暇を見つけてそれぞれ巡ってみるのも面白いかもしれないなぁ。
ドーナツはアッという間になくなってしまった。
最後の1個をメアリーが4つに分けてシロと子供たちで分けていた。
(えらいぞぉ)
そんなメアリーの頭をそっと撫でてあげる。
「ねぇ、明日は何するんだい」
「明日は朝からダンジョンに入ってみようと思うんだ。興味があるのなら一緒に連れて行ってもいいぞ」
ナツから予定を聞かれたので、そう軽く答えておいた。
2杯目のお茶を飲み終わるころ、騒がしかった子グマ姉弟はそろって船をこいでいる。
(今日はいろいろとあっあて疲れたよなぁ)
今日はこれにてお開き。
後片付けはナツに頼んで、子グマ姉弟を子供部屋のベッドまで運んでいく。
今は自分の部屋に入り、メアリーと座禅を組んで魔力操作の訓練中だ。
しかし、メアリーはすぐにウトウトしだし……眠ってしまった。
(まあ、あれだけ騒げばなぁ)
新しい友達ができて嬉しかっのだろう。
メルは7歳、ガルは6歳。
この樹海で育っただけに動きもパワフルで、鍛えているメアリーともそれなりに遊ぶことができるようなのだ。
それに二回も温泉に入ってるし、そりゃ疲れるわな。
力尽きたメアリーをそっと抱き上げベッドへ寝かしつけた。
俺はトイレに行こうと燭台を片手に部屋をでる。
用を足し部屋へ戻っていると、
――ひしっ!
ナツである。
腕をつかまれ、俺はナツの部屋に引きずり込まれた。
「お、おぃ……うぷ…………」
声を発しようとするが、柔らかいもので口を塞がれてしまった。
ナツの舌が俺の舌と絡みあう。
俺はそのままベッドへ押し倒されてしまった。
彼女がここまで元気になっていたとは……。
少し驚きはしたが、せっかくなのでそのまま美味しく頂きました。
明朝こっそり部屋に帰ってきた俺。
メアリーはスヤスヤ夢の中……。
シロはベッドの横で丸くなったまま動こうとはしない。
見て見ぬふりをしてくれるようだ。
(シロちゃん、ありがとー)
――できた犬である。(フェンリルです)
………………
ぺしぺし! ぺしぺし!
『さんぽ、おきる、うれしい、おそと、はやく、おにく』
「う~し、起きるぞー!」
って、たった今ベッドに入ったの わかってたよねぇ?
(せっかく褒めてあげたのに……)
メアリーも起こし、着替えをして部屋をでる。
まだ薄暗いがキッチンからは物音がしている。
ナツが朝食の準備をしているのだろう。
俺たちはナツに一声かけて表にでた。
散歩といっても昨日整備した場所を回るだけなのだが結構な広さがある。
戻ってきたら玄関前で剣と槍の素振りを行ない、最後はシロとメアリーが軽く模擬戦をしている。
「ごはんできたよー!」
メルが扉が開いて呼びかけてきたので、俺たちは訓練を終えて家に入った……。
(あっ、表に井戸がいるよなぁ)
あとでデレク (ダンジョン) にお願いしておこう。
朝食をとりながら今日の予定を話していく。
ダンジョンの話をしていく中、メルもガルは乗り気なのだがナツは難色を示している。
まあ、そうだよね。
ダンジョンで夫を亡くしているのだから心配するのも当然のことなのだ。
だから無理強いはしない。
「心配ならナツも来るか? ちゃんと自分をわかっていれば意外と安全に攻略できるんだぞ」
……ナツはしばらく考えてから、
「じゃあ、少しだけ」
小さく答えてくれた。
「よし、みんな一緒だな。がんばって行こう!」
「「「オ――!」」」
そう言って俺たちは準備にかかった。
ナツや子供たちの装備はおいおい揃えていくとして。
得物は必要だよな。
そこで俺はインベントリーから片手剣・両手剣・短剣・槍・短槍・槌・斧・盾と様々な武器をフローリングの床に並べていく。
「この中で使ってみたい武器はあるか? 合わなければ変更してもいいし、大きさや重さも変えられるからな」
そう言って一本ずつ武器の説明をおこなった。
………………
すると、ナツは槌、メルは短槍、ガルは両手剣を選んだ。
すぐにデレクに頼んで手直ししてもらう。
槌は中空に、持ち手は細くミスリル合金にして重さを調整した。
短槍はメアリーが使っている物をベースに全長を3㎝程伸ばした。
両手剣は刃は50㎝柄は中空にして軽くし、強度を出すためミスリル合金で仕上げてもらった。
準備が終ったらみんなを集めて、
――転移!
ここはユカリーナさまの像があるモンソロの町の教会だ。
シロが行こうと言うので連れて来たのだが……。
急に現れてびっくりしているシスターマヤに大銀貨を渡し、みんなを連れて礼拝堂へと進む。
そしてお祈りを捧げた。
………………
だが、女神さまが顕現されることはなかった。
まあ最近はもっぱらこんな感じだよな。忙しいのだろうか?
今日はクマ親子3人の身体が薄く光ってたな。
シロは何故かコクコクと頷いているし……?
お祈りが終わって俺たちが立ち上がると、
「おおぉぉ、神よ~………………」
またしてもシスターマヤが迫ってくるが、今日はナツによって止められていた。
(ナツ、グッジョブ!)
「ゴメンまた来るから、今日のことは内密に」
シスターマヤにはそれだけ言うと、再びみんなと転移。
俺たちはダンジョン・デレクの広場に戻ってきた。
いよいよダンジョンに突入である。
それぞれに得物を持たせたのち、俺たちはシロを先頭に階段を下っていった。
ダンジョン・デレク1階層のモンスターはサラのところと同じスライムだ。
初心者向けのモンスターだが、広いダンジョンで見つけるのはなかなかに骨が折れるのだ。
しかしそれは一般論であって俺たちには当てはまらない。
今回も俺とシロがいるのでサクサク狩りは進んでいく。
初めこそ、へっぴり腰でおっかなビックリ倒していた熊親子だが、昼頃には一撃で倒せるぐらいにはなってきた。
うん、自分たち得物のもだいぶ慣れてきたようだ。
休憩をとるにはいい頃合いだろう。
初日はオーバーペースになりやすいので昼食を兼ねてゆっくり休むことにした。
臨時の竈を2つこしらえ肉を焼いていく。
食べている子クマ姉弟の顔を見ていくが、そこまで疲れてる感じでもないか。
ナツの方も病みあがりという事で心配していたが、顔もツヤツヤしてるし特に問題はないようだ。
だけど、やっぱり子供だな。ご飯を食べたら3人とも寝てしまった。
シロも俺の膝に頭をのせ、ゆっくりと尻尾を動かしながら目を閉じている。
隣に居たナツがそっと手を重ねてきたので……、
ついでとばかり鑑定してみた。
ナツ Lv3
年齢 24
状態 通常
HP 43⁄44
MP 9/9
筋力 25
防御 18
魔防 12
敏捷 17
器用 14
知力 12
【スキル】
【称号】 未亡人、変えられし者、ゲンの女、
【加護】 ユカリーナ・サーメクス
昨日までは確かLv2だったよな。もう上がったのか?
ああ、そういえば教会で身体が光ってたよな。
なるほど、あの時に女神さまの加護を授かっていたのか。
「…………」
シロがみんなを教会へ連れて行きたかった訳とは、こういう事だったのね。
たとえ顕現されなくても加護は与えてくださったのか……。
『ちゃんと見てますよ』という事だろうか。
(女神さま、ありがとうございます!)
筋力と防御力が高いのは種族特性なのだろう。
村に囲いの柵が要らないわけだな。
魔法の素養は無しか。
MPが伸びてくるとどうなるんだろう。
そして称号!!
なに、この『ゲンの女』って。
称号に出すほどなのか? 恥ずいんですけど。
しかし、ナツは別人のようにイキイキしてるよな。――笑顔も可愛いし。
そして何ていうか妙に色気があるんだよなぁ。……さすがは人妻。
いや未亡人か。
まあ、何にせよ家を守れるぐらいには強くなってもらわないと。
昼からは2階層に進んでみますかね。
ちなみに10階層までは ダンジョン・サラ と同じモンスター同じ配置にしてある。
これはカイルにおいても同様で、こうしておけば全体の9割を占める初級・中級冒険者の偏りが緩和されるはず。
おっ、メアリーが起きてきたな。
ん? 立ちあがったと思ったら、こちらをジト――――ッと見てくる。
というよりナツを見てるのか?
それでもって、ふらふら~と目の前まできて抱きつく形で俺の膝のうえに座ってきた。
そしてウリウリと顔をこすりつけてくる。
さらに上目づかいで撫でろと要求するように頭を突き出してきた。
なによ! この可愛い生きもの。
もちろん撫でましたとも。
心ゆくまで盛大に撫でさせていただきました。
するとそこにシロまで参戦してきて、もみくちゃにされてしまった。
メアリーのあとでシロもしっかりともふって差し上げました。
ゆっくりと休憩をとった俺たちは2階層にやってきた。
これまでは出てきたモンスターを代わりばんこに倒していたのだが、それでは効率が悪いので二班に分けることにした。
シロを含めた子供グループと俺とナツの大人グループだ。
この班分けに意図するものは何もない。
……便宜上こうなったまでだ。
途中でイチャイチャとかしないから……、たぶん。
時間はゆっくりあるので、先に階段を見つけた方はそこで待つという事にした。
こうした方が競争みたいで子供たちは気合が入るだろう。
案内役のシロには『コボルトとしっかり戦わせてくれ』と念話で頼んでおいた。
おやつの飴玉2つと水筒をそれぞれに渡し、
「さあ、行っておいで!」と送り出す。
すると子供たちはキャッキャ言いながら横一列に並んで駆けていった。
「さあて俺たちも負けてられないぞ」
そうナツに声をかけ、こちらも攻略を開始した。
俺は一歩引いたところでナツの戦いぶりを見ている。
コボルトは容赦なく槌でぶっ飛ばしていくし、スライムにおいては片手でペチッだ。
「…………」
槌使いといえばドワーフと思っていたが、熊人族も半端ないです。はい。
これでレベルを上げていったらと思うと末恐ろしいものがあるよなぁ。