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「ねぇ、あんたぁ。さっきから拾っているコレ。お金になるの?」


俺にそう問いかけてくるのはナツである。


そういえば、まだ教えてなかったよなぁ。


「これは魔石といってモンスターを倒すと必ずドロップするものなんだ。こっちの冒険者ギルドでの相場は知らないが、この小さな魔石で5バースぐらいじゃないか」


この前、モンソロでギルマスに出した魔石の買い取り価格はおそらく特別価格だろう。


なので、その半分としたのだが実際は持っていってみないと分からない。


「じゃあ、結構な稼ぎになるんだねぇ。なのに、どうしてここには冒険者が居ないんだい?」


う~ん、なんて言うべきか……、


「普通の冒険者ではこんなに取れないから。大体これの3割程度じゃないか」


「だから普通の冒険者は早く力をつけて上にいかないと厳しいんだよ。さらにここは町から遠いし、樹海に入ると迷うしで冒険者が寄り付かないんだよ」


するとナツは、


「じゃああんたは何しに来たのさ? ダンジョン攻略でもしに来たのかい?」


う~ん、これは帰って家で話すつもりだったのだが。今は子供たちも居ないしちょうどいいか。


「俺は今回、このダンジョンに頼まれて動いてるんだ。つまり、ダンジョンの管理をしているんだ」


「…………」


ナツは……固まっていた。


まぁそうなるよねぇ。


おお――――い、戻っておいでー。


「そ、それって、凄い事なんじゃ……」


やっとナツが反応してくれた。


「そうだな、なかなか凄い事なんだろうね」


とだけ答えて、


「具体的な事は家に帰ってからね」


そう言って話を終わらせた。






そのあとも2階層を順調に進み、無事3階層に続く階段まで辿り着いた。


子供たちはすでに到着しており、俺たちが見えると一斉に抱きついてきた。


みんなの頭を撫でながら、


「早かったんだなぁ、凄いじゃないか!」


そう褒めそやしながら、今日はここで引きあげることにした。


みんなに浄化をかけデレク (ダンジョン) に家の前まで送ってもらう。


そして今日も嬉しいお風呂タイムだ。


みんなで温泉に入り疲れを癒す。


やっぱりダンジョンと温泉は良い取り合わせだと思うんだよなぁ。


………………


風呂からあがると隣のログハウスに移り夕食の準備だ。


ここで夕食をとりながら、今回こちらに来た目的や王都へ行くことなどを話していった。


するとメルとガルが一緒に王都へ行きたいと言いだしたのだ。


さて、どうしたものか。


この子たちを連れて行くことは考えてなかったのだが……。


しかしナツが来てくれるのは大きい。


なぜなら、俺一人で行動する場合でもメアリーを安心して預けられるのは正直助かるのだ。


いろいろと考えた結果、ここはみんなで王都に行ってみようということになった。


これには子クマ姉弟はもちろん、シロとメアリーも一緒になってはしゃいでいた。


夕食のあとは部屋に戻り、魔力操作の訓練をしてからメアリーを寝かしつける。


シロに『よろしく』と言って俺は部屋をでた。


ダンジョンや王都での行動について、いろいろと説明をする為にナツの部屋へと入っていった。


もしかするとそこに真実があったかもしれないが……。(嬉)


朝にはちゃんと自分のベッドで寝ていたのだから問題はない。


「ゲンパパ、ナツママの匂いがするよ~? それに……」


――ドキッ!


メアリーは犬人族。鼻が利くことを忘れてはならない。


(シロちゃん浄化おねっしゃっす!)









ダンジョン・デレクに入りだして7日が過ぎた。


今、11階層に赴きみんなでコッコの卵を集めている。


生息している場所がダンジョン・サラと違って転送台座に近い分、すごく効率がいいのだ。


鶏型のモンスターであるコッコはこの広い草原のあちこちに巣を作っている。


それを見つけて、コッコをおびき出しては卵を回収してまわるのだ。


その際、なるべくコッコを倒さないようにと子供たちには伝えてある。


ダンジョン内でモンスターを倒すと、その数を調整するため適時に壁からモンスターを産み落とすようになっている。


しかしコッコの場合、卵を産むために巣づくりをおこなっているのだ。その巣が完成するまでに2日を要する。


つまり、倒せば倒すほど卵の収穫量は目減りしてしまう。


卵の安定供給をはかるためには決してコッコは倒してはならないのだ。


ちなみにこの卵だが、すべて無精卵である。


卵から雛が孵ることはない。


では、なぜ卵を生むのか? それは誰も知らないし解らない。


なのでここでは、『コッコが先か? タマゴが先か?』という論争が勃発することもないのである。






ここダンジョン・デレクでは11階層から草原エリアに突入する。


ここからは草原や森に生息する獣を模したモンスターが出没するようになるのだが。


モンスターの強さもワンランク上がり、実力のある冒険者でないと太刀打ちできなくなる。


それならば人海戦術をと考えそうではあるが、ダンジョン内では1パーティー6名までと設定されている。


一緒に転移できる定員も、ボス部屋に入れる人数も、エキストラ (特殊) ルームの挑戦や宝箱の出現ですら6名以内での行動を基準としている。


ぶっちゃけ数で対応すると全くうま味がないのだ。


また、ダンジョン・カイルで起こっていたような鉱山や特定ルームの占拠及び、他のパーティーへの執拗な妨害行為には厳しく対応することにした。


具体的には深層エリアのモンスターを一時的に当てて処理していく。


周りに被害が出ないよう、対象の者のみを『おしおき部屋』へご案内するということだ。


まぁ、中にはズル賢くそれらを巧みに利用するような人間が出てこないとも限らないので、違和感がある場合はモニターしながら対応を検討していこうと思う。


そうすれば俺が管理者をしているあいだに、それなりのシステムが完成するんじゃないかな。






只今子供たちは、コッコと追いかけっこをしながら卵を集めている。


草で編んだ籠を頭の上に掲げ、コッコに追っかけられている姿は実にユーモラスで楽しそうである。


もうすぐ昼時なので集合をかけると、それぞれが籠を抱えて戻ってきた。


今集めてきた卵を持ち寄りしゃがみ込んで、あっちの方に巣が多かっただの、こっちのコッコはやたらと足が速いだのみんなで言いあっている。


子供たちが輪にシロも混じってて、なんともほのぼのとした雰囲気である。


「そっかそっか、それはすごいなぁ~」


俺は相槌を打ちながらお肉と飲み物をみんなに配っていく。


子供たちもそうだが、ナツもよく頑張っていると思う。


家では家事と子供たちの世話、さらにダンジョンの攻略にと大忙しである。


ご飯を食べ終わったあと子供たちが眠ってしまったのでナツに聞いてみた。


「ちょっと張りきり過ぎて無理してないか?」


「えっ、わたし? まったく問題ないねぇ。今までこんなに動けたこともなかったし疲れないんだよ」


「そっか、それならいいけど。きつい時は言ってくれよ」


「それに見てよこの肌つや! 温泉って凄いんだねぇ、あんたぁ」


そして、少しもじもじしながら、


「この肌つやはあんたのお陰でもあるんだからねぇ~」


と熱いキスをされてしまった。


あぁ~、もうね。


――ごめんなさい!


そしてナツのステータスがこちら。



ナツ Lv.11


年齢 24

状態 通常

HP 5758

MP 2121

筋力 38

防御 25

魔防 16

敏捷 24

器用 19

知力 18

【スキル】 槌術 (1)

【称号】 未亡人、変えられし者、ゲンの女、

【加護】 ユカリーナ・サーメクス



ほぇ~、さすが加護持ち。


レベルもだが身体のパラメーターの伸びも大きい。


もう少し鍛えれば立派な冒険者になれるなぁ。


子クマ姉弟もメキメキ強くなってるし。


って、この子たちも既に子供の域ではないよな。


手加減だ。手加減を覚えさせないと……。


――頭がいたい。


それに服や装備も王都に行ったら揃えてあげなくちゃね。






昼食のあと寝ていた子供たちが起き出してきた。


シロ・メアリー組と子クマ姉弟組に分かれての卵さがしを再開させる。


それぞれに水筒とおやつを渡して送りだす。


子供たちは元気に手を振りながら走っていく。


俺は後片づけをしながらナツを見て、昨晩のことを思い出していた。


色白で割と細っそりしたシルエットに黒髪のボブヘアー、頭の上には可愛いクマ耳が2つくのっている。


その耳や尻尾はとても敏感な部分であり、親や好きな人以外には絶対触らせないそうだ。


「どんなに親しくても絶対触れてはダメよ!」


きつく言われてしまった。


獣人族はだいたいどこも同じようで、リンチを受けても文句は言えないそうだ。


「耳もダメなの?」と聞くと、そもそも頭に触れてはいけないと言われた。


その相手がたとえ子供でもダメなんだそうだ。


もし、そんなところを親にでも見られようものなら命の保証はないとのことだ。


うは――っ、聞いてないと危なかったわぁ。(汗)

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