深澤「あっ、すみません、」
岩本「こっちこそごめんなさい!!」
恋はいつだって唐突に始まるものだ
少なくとも俺はこの時に君に惹かれた
深澤「……あの〜、」
岩本「はいっ、あっ、あの時の、…」
深澤「これっ、さっき落としました、」
岩本「えっ、あっ、!!ありがとうございます!!!」
深澤「良かったら一緒にランチしませんか?」
岩本「しましょうしましょう!!このタスク終わったらランチ室向かいます!!」
深澤「はい笑」
まさに一目惚れだった
話していくうちにどんどん惹かれて恋に落ちていった
岩本「ねぇ、辰哉?」
深澤「ん〜?」
岩本「そろそろさ、」
深澤「付き合う?笑」
そんな事をニヤニヤしながら俺に言ってくる
岩本「…俺が言いたかった、」
深澤「ふは笑 俺が言いたかったの!!」
幸せ
そんな言葉が1番合っていた
最高に満たされてた
これ以上求めたらきっと壊れる
そう思う程だった
でも、それは長続きしなかった
岩本「…あれ?ここにあった鍵、」
岩本「辰哉ー?辰哉鍵どこ置いたの?」
深澤「え〜?分かんない、どこ置いたっけ?」
岩本「え?わかんないってほんとにさっきだよ?」
深澤「いやわかんないって、照じゃないの?」
ただの物忘れかな、
そのくらいだったし気にしてなかった
でも辰哉は明らかに物忘れどころじゃなくなっていった
深澤「照ーお腹減った、ご飯食べ行こ!」
岩本「…は、?さっき食べたじゃん、」
深澤「え?嘘だぁ、俺記憶ないんだけど、」
岩本「いやいや、ラーメン食べたいって言ったから食べに行ったじゃん、」
深澤「え、、?どういうこと、…」
岩本「…辰哉、やっぱり最近おかしいよ、」
岩本「物忘れほどじゃなくなっていってる、」
岩本「…今から病院行こう、?」
深澤「うん、…」
診察結果は、
若年性アルツハイマーと診断された
どんどん色々な記憶が無くなっていき最終的にはどこに自分がいるのか、歩き方や目の開き方も忘れてしまう
また、気性が荒くなったりなど心身ともに削られていってしまう
それからは、嵐のようだった
辰哉は暴れて、泣きじゃくって、
どんどん記憶も蝕まれていく
それは誰にも止められない
岩本「…辰哉、ご飯食べれる?」
ドアから向こうにいる辰也に問いかける
深澤「………」
しばらくするとドアが開いた
岩本「辰哉…」
数週間ぶりに見た辰哉は俺の知っている辰哉じゃなかった
でも、それでも、
岩本「抱きしめていい、、?」
深澤「…うん、」
骨を抱きしめているようだった
深澤「照、ごめん、ほんとにごめんね、」
辰哉のこぼす涙が俺の肩を濡らしていく
岩本「いいよ、大丈夫、どんな辰哉でも、」
岩本「愛してるから、」
そして時は来た
深澤「ごめん、っ、」
深澤「もう何も思い出せない、っ、」
大粒の涙を流しながらそう言ってくる
深澤「あなたの名前も、どこで出会ったのかも、」
深澤「何も思い出せないっ、」
岩本「………辰哉、」
俺はなんて無力なんだろう
岩本「何も出来なくてごめんね、」
深澤「っ、俺の方がごめんなさい、」
岩本「…俺はどんな辰哉でも、」
岩本「愛したいし、好きでいたい。」
岩本「たとえ辰哉の記憶が全部消えようとも、」
岩本「大好きだよ、辰哉」
涙で濡れた唇にそっとキスをする
どれだけ君の記憶が蝕まれようとも
俺の事を思い出せなくなったって
君を愛せるのは俺だけだから
君の世界がどうか幸せで暖かなものになりますように
そう願わずにはいられなかった
END