永遠の囚われ
ある日、科学者のタカシは、時間を操作する装置の開発に成功しました。この装置は、特定の空間内で時間を加速させたり遅らせたりすることができるという画期的なものでした。彼はこの発明によって、人類の生活が大きく変わると信じていました。
タカシは自分の研究室で装置のテストを行うことにしました。彼は慎重に装置を設定し、実験を開始しました。しかし、装置が起動した瞬間、予期せぬエラーが発生し、実験室全体が異常な状態に陥りました。
気がつくと、タカシは見知らぬ場所に立っていました。そこは暗く無機質な空間で、どこまでも続く灰色の地平線が広がっていました。彼は何とかして元の世界に戻ろうと試みましたが、その空間には時間も空間も存在せず、彼はただ漂うだけでした。
やがてタカシは、この場所が「時間の狭間」であることに気づきました。この空間では過去も未来も存在せず、ただ無限の「今」が続くだけでした。彼はここから脱出する方法を見つけようと必死になりましたが、その努力はすべて無駄に終わりました。
時間の感覚を失ったタカシは、自分自身が何者であるかさえ忘れ始めました。彼の記憶や感情は徐々に薄れ、やがて完全に消え去ってしまいました。そして彼はただ存在するだけの意識となり、この無限の空間を彷徨い続けることになりました。
一方、現実世界ではタカシの失踪が大きなニュースとなりました。警察や科学者たちが彼を探しましたが、その行方を知る者はいませんでした。結局、彼の研究室は封鎖され、彼の発明品もまた闇に葬られることになりました。
しかし、時折その研究室から微かに聞こえてくる囁き声に気づく者もいました。それはまるで助けを求めるような声であり、誰もその正体を知ることはありませんでした。
こうしてタカシは永遠に「時間の狭間」に囚われ続け、その存在すら忘れ去られてしまったのでした。
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