話は、
本当に、本当のことを答えてほしいんだけど……
という前置きからはじまった。
「本当に、菜央ちゃんと三枝くんって付き合ってないの……?」
信じられない、といったような表情で尋ねられる。
本当に、本当のことを答えるんだけど、 と、私も口を開く。
『本当に、付き合ってません!!!』
明那と話すようになってから、もう何回同じ質問をされただろうか。
そして、何回同じ答えを返したのだろうか。
同じ表情で 同じ声色で
誰にも気づかれてはいけない感情を 誰にも気づかれてはいけないと気づいてから、
私は嘘がうまくなった と、思う。
正直に言うと、周りからそう思われているのは嬉しい。
だけど、それを知った明那がどう思うかと考えると、怖い。
この気持ちには慎重に 臆病でありたい。
あのあと、榎本さんに頼まれごとをされて、全然平気そうな表情で引き受けてしまった。
明那の好きなタイプ。いやそんなん、知りたいけど知りたくないよ。
前に一度聞いたことがあるけれど、
明那は自分の恋バナになると急に受け答えが曖昧になる。
その空気が なんか、少しだけ 怖かったことを覚えている。
コメント
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菜央ちゃん頑張れ~!明那モテそうだし、罪な男だ...