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午前0時42分。
メモリア・パーク最奥。
そこには、今では誰も乗らなくなった巨大な絶叫マシン「スカイレイジ」がそびえ立っていた。
ボロボロに朽ちかけたレールは夜空に突き刺さり、車両は暗闇の中を不気味に浮かんでいる。
「次の“影探し”……俺か」
七瀬大輝は、短く息を吐いた。
秋冬と紗季は止めようとしたが、大輝は手をあげて制した。
「いいよ。どうせ、逃げても無駄だ」
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レールに乗った車両に足を踏み入れた瞬間、世界が反転する。
空間がねじれ、七瀬は一人、闇の中にいた。
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そこは“あの教室”だった。
天音が、窓辺に座って本を読んでいる。
(……これは、俺がまだ天音とまともに話したことなかった頃の光景)
大輝は立ちすくむ。
声をかけたかった、でもかけられなかった。
“もしも、あのとき言葉をかけていたら――”
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すると、目の前に3つの選択肢が浮かぶ。
【問い:七瀬大輝が天音に抱いていた“本当の想い”は?】
A:好意と憧れ
B:劣等感
C:興味がなかった
大輝は静かに目を閉じた。
(俺は……天音に恋なんかしてなかった。
だけど……負けた気がしてた。あの子は、俺よりずっと“まっすぐ”だった)
「……Bだ」
そう呟いたとき、教室の窓ガラスがバリィンッと砕ける。
破片の向こうから、血まみれの少女――“赤い人”が這い出してくる。
「――見つけた」
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“スカイレイジ”が突如動き出した。
鉄の車両がレールを逆走する。
それと同時に、空間が一気に高所へと伸び上がる。
鏡のような窓の外、血で滲んだ空の中、
“笑わない天音”が現れた。
その目は、深く沈んだ闇を宿している。
「七瀬くんは、ずっと自分が傷つくのを怖がってた。
だから、私のことも“遠ざけた”。それって、ずるいよね」
「……そうかもな」
大輝は唇を噛んだ。
「でも、俺は今、逃げない」
その言葉に応えるように、車両が急降下を始めた。
血のような風が吹き抜ける中、大輝は叫ぶ。
「俺たち全員を救う方法があるなら、俺はそれを選ぶ! 天音を忘れたくないんだよ!」
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空間が崩壊し、気がつくと地上に戻っていた。
彼の手には、**黒く濁った“影の欠片”**が握られていた。
「大輝!」
秋冬たちが駆け寄る。
「無事か……?」
大輝は静かにうなずいた。
「……ああ。でも、やばいのはこれからだ」
紗季が震える声で問いかけた。
「“赤い人”……彼女、なんなの?」
大輝は口を開いたが、そのとき空から声が落ちてきた。
それは、“もう一人の天音”の声だった。
「……私よ」
「あの“赤い人”は、“わたしの影”」
「そして、あなたたちは今――“わたしのカラダ探し”をしているの」
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皆が絶句する。
影を集めていたのは、天音を救うためだと信じていた。
だが今、現れた“もう一人の天音”は微笑みながら続ける。
「私を取り戻して。そうしなきゃ、明日は来ないの」
「でもね、誰か一人だけが戻れるの」
「その代わり、他のみんなは――“消える”」
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秋冬は拳を握った。
(“影探し”は、救いじゃない。
それは、選ばれなかった者を“闇に落とす”儀式だ)