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“ もう着く “
待ち合わせ場所にて、勇斗からそうメールが来た。
今日は待ちに待った、記念日のデート。
出る家は同じなのに、勇斗は野暮用があるだとかで、待ち合わせになった。
舜太と一緒に考えたデートコーデと、勇斗にもらった指輪と、気合を入れたヘアセット。
コイツ気合入れすぎだ、なんて思われたらどうしようか、なんて不安を抱えつつ。
「わり、仁人」
ぼーっと1人不安に駆られていたら、勇斗に後ろから声をかけられる。
相変わらずオーラすげえなこいつ…こんないい男を俺が占領できることが嬉しくて、思わず口角が上がりそうになりながら。
『あ、佐野さん……かっこいい、ね』
「……..、」
記念日くらい、と素直に褒め言葉を零したものの、勇斗からの反応はない。俺の顔をじっと見つめて、微動だにしない。
『あの、勇斗、?』
「え?あ…わり、なんて?」
勇斗なら、きっとすぐ反応して俺のことをなんやかんや言ってくると思ったのに。
…なんか、変。
『ん、んま…ヤバっ、…』
さっきの勇斗の様子に違和感を覚えながら、ディナーを共にしていた。
どれも料理は輝いているみたいで、絶品だった。
勇斗が予約してくれていたけど、いくらすんだろ、これ…..。今度の飯は奢ってやらねば。
「…うん、美味いわ」
想像通り、と言うような感じだろうか。
勇斗も頬を緩ませていた。さっきのはたまたま勇斗が聞こえなかっただけだったのかもしれない。
『はー、美味しかった…』
『ご馳走様です。』
「うい、お安いもんよ」
ディナーを楽しんだあとは、人気の少ない公園にあったベンチで勇斗とひと休みしていた。
『あ、これ。…いつも、ありがとうございます』
ちょっとだけ畏まって、記念日の為に用意したお揃いのネックレスを勇斗に渡す。
ちょっと重いかな、なんて思ったものの、指輪をメンバーの前で堂々と渡せる勇斗なら喜んでくれるだろう、と。
「…、これも舜太と選んだん?」
勇斗の口から零れたのは、予想外の言葉だった。
俺が?舜太と?…なんで?記念日のプレゼントくらい、自分で選ぶに決まってるだろうに。
『…は?なんで?』
『1人で選びましたよ、もちろん』
「舜太とのデート、楽しかったか?」
舜太とのデート?
…あ。こないだの会話、聞かれてたのか。
確かにあの会話だけを聞いてしまえば、俺が舜太とデートというより、やましい関係にあると勘違いされてもおかしくはない。
『…いや、あれは違…..』
「言い訳とか要らねえから。」
「最近み!るきーず達もよく言ってるもんな、そのじんそのじんって」
弁解をしようとするけど、勇斗の冷たい声に遮られる。本気で怒ってるんだ、勇斗。
せっかくの、勇斗との記念日なのに。俺のせいで、俺が、台無しにした。勇斗を傷つけた。
『、…っ、ごめ、ごめん』
「は、…なんで、泣いて、!」
『お、れ、勇斗との記念日だからって、浮かれてた、…ひとりじゃ決めらんないから、舜太に服選んでって、…っ、勇斗傷つけた、ごめ、ぅ…ごめんなさい…….』
俺が泣いちゃダメなのに。泣きたいのは、きっと勇斗の方なのに。
そんな俺の感情とは裏腹に、涙はぼろぼろと溢れていく。
「……ごめん、ほんと、俺….だっせえ、」
「ごめん。俺の、勘違い。ほんと、ごめん…..」
気づけば勇斗に抱きしめられていて、春とはいえ未だ冷たい風に冷やされた身体が、暖かさに包まれる。
『勇斗、?』
「こないだの、たまたま聞いちゃってさ。」
「…最近、色んなとこでそのじんそのじん言われてたし…勘違いした」
「とはいえ、仁人のこと傷つけて泣かせるとか、俺マジで最低だよな…..」
『…ううん。俺も、勇斗にちゃんと伝えたら良かった。ごめん』
『…今日の服、どう、?』
「可愛いよ。世界一」
「待ち合わせん時、可愛すぎてどうしようかと思った」
待ち合わせの時、勇斗が無反応だったのは俺に見とれていたかららしい。
…ふはっ、笑 ほんと、馬鹿なヤツ!笑
『んはは、そりゃどうも。』
『ネックレスはちょっと重かったかな、こればっかりは俺一人で選んだんですけど。』
「ちょっと根に持ってんな、お前笑笑」
「全然。超嬉しい。付けていい?」
『もちろん』
『..あ。』
自分でネックレスを付けようとしていた勇斗に、ちょっと待ってと声をかけては、俺が勇斗の首にネックレスを付ける。
勇斗のことだけ考えて、俺が選んだネックレス。
それを勇斗が嬉しそうに付けてくれているだけで、俺の所有物な気がして、指輪を俺に贈った勇斗の気持ちがわかったような気がした。
『…うん、やっぱ似合ってるわ』
『…カッコイイよ』
「やった。超嬉しい。ありがとな」
「…もうさみいし、家帰って…な、?」
こそ、と囁かれて、耳元にちぅ、とキスをされる。
…舜太の予想は、どうやら当たりみたいだ。