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ガヤガヤ ガヤガヤ
(人外オークションって言うもんだからもっと
怖い人とか物騒な人とかがいっぱいいるのかと
思ってたけど)
「意外と普通だな〜」
僕は人外オークションというものの印象が
自分の中で思っていたのとかなり違くて
少し拍子抜けしていた
僕は少しの好奇心でみんなどういう人たち
なんだろう?という疑問に周りをキョロキョロ
眺めていると意外とそれらは僕の目に入って
きた、、、
高級そうなアクセサリーをこれでもかと
身につけている女性、高いのであろうスーツや
ドレスをまるで見せびらかすように着ている人
たち
(見ていて目が疲れるな〜)
僕がそんなことを考えていると僕から見て
右側の方で立ち話をしている夫人達の話し声が
耳にはいった
〈最近、私のペットの様子がおかしいんですよ〉
〈そうなの?ちゃんとご飯を与えて寝床を
作ってあげてる?〉
〈いいえ、そんなことした事ないわ〉
〈これが意外と一番大事なのよ!
人外と言っても所詮はペットよちゃんと
飼育しないとダメになっちゃうわよ〉
〈そうなの?〉
〈でもそこまで来たらもう手遅れね
新しいペットを飼ったらどう?〉
〈次はもっと希少なヤツとか!〉
〈そうね!それが良いわ!
ペットなんてダメになったら
“また飼えばいいんですものね‼︎”〉
〈それに私最近、エルフとかに興味をもち
初めて…〉
〈〜ーー?〉
〈〜〜ーー~!〉
〈www〉
〈あははは笑〉
「……」
(ペット…ペット…ペットって、、、
まぁここにいるほとんどが人外たちをペットと
して買いに来てるのか)
(でもやっぱり…)
「好きじゃないな」
【〈そうね!それが良いわ!
ペットなんてダメになったら
“また飼えばいいんですものね‼︎”〉】
(まるで消耗品のように扱うのは)
僕はこの場から逃れるかのように足早で
人混みの中をすり抜けていった
『んッ〜ん!ッッ』
(クソッ せっかくあそこから逃げ出せたのに
こんな奴らに捕まって…)
ガヤガヤ
(ん?外が急に騒がしくなった)
ドタドタドタドッ
〈ダンナ‼︎ッッ〉
〈なんだ?〉
〈時間です!客が入ってきましたッッ〉
〈チッせっかくいいところだったのによ〉
〈だがよかったな〜
今日お前のご主人様が決まるんだぞ?笑
どんな物好きが“飼って”くれんのか
楽しみだな?ww〉
〈アハハハハハ!〉
〈あははww〉
『……ッッ』
あれから何時間ぐらい経ったんだろうか、、、
だけど意外と時の流れは早く感じ
気づけば次が俺の番になっていた
〈オイ立て、お前の番だ(グイッッ〉
『んッッ!』
(ずっと同じ体勢で座ってたから
足が痺れて、、、)
〈ふらふらしてねぇで、さっさと歩け!〉
そう言いながら男は俺の口についている
口枷を外して首に紐付きのリードをわざと
強く締め付けてステージに上がらせた
『クッッ』
(眩しッ)
俺はステージに上がると目をさすような照明と
はじからはじまでビッシリと並んでる
人間達を見ると一瞬息が詰まった
なぜなら人間達の俺を見る目が俺の中に
根付いている恐怖を呼び起こしたからだ、、、
そう、まるであの時のように、、、
初めて俺がオークションに出された時
俺を商品として品定めするようなあの目
そしてあいつの口が限界まで吊り上げられて
面白くてたまらないとでもいうかのように
歪んだ顔
ここに立つとそんなことばかり思い出して
全身から血の気が一気に引いていく
「綺麗、、、」
『ッッッ!』
(誰だ?誰の声だ?)
(いやっでも冷静に考えてみろ!
こんなにも人間がたくさんいる中で、
しかも盛り上がっていてろくに話し声が
聞こえないこんなところで声が聞こえた⁈)
(まぁ聞き取れないこともないがせいぜい
聞こえるのは同じステージに立っている
司会者の男の声ぐらいだ、、、)
(だがもちろん司会者がそんなことを
言うはずがない、、、)
(でもなんだ?どこか遠い昔に聞いたことが
あるような、、、)
(だとすればやはり客席の方からか、、、)
俺は普段気にしないですぐに忘れてしまう
ようなことに躍起になって声の主を
探している、、、
(俺らしくねぇな、、、)
(いつもの俺なら考えることすら面倒くて
気にもしないのに、、、)
俺はそんなことを考えながら客席に目をやると
すぐにその声の主を見つけた
男だった
“見た目”は俺と同じぐらいで
客席から身を乗り出す勢いで俺のことを
キラキラとした純粋な目で見ていた
俺は初めて向けられるそんな視線に一瞬
戸惑った
そして男は俺と目が合うとまるで天使のような
微笑みで俺を見つめてきた
ドキドキドキドキ
心臓の鼓動が早くなる
それに顔もなんだか熱いような気がしてきた
(もしかして俺病気?)
こんなこと生まれて一度もなかったのに、、、
そうして俺は得体の知れないこの感情に
戸惑うばかりであった
そして俺が定位置につくと司会者らしき奴が
待ってました、とでもいうかのように
より一層声を張り上げて司会を初じめた
〈さぁさぁ!やって参りました!
今夜最後の一番の目玉商品‼︎
今までのペットとは比べ物にならないほどに
美しく、そして希少な、、、
“吸血鬼”で御座います‼︎〉
〈今回は5000万から
始めさせていただきます‼︎ッ〉
〈それではスタート‼︎ッッ〉
〈5500万‼︎ッ〉
〈7000万‼︎ッ〉
〈7900万‼︎ッ〉
〈1億‼︎ッッ〉
〈おっ!出ました1億‼︎ッッ
さぁさぁこの金額を上回る人は
現れるんでしょか?
誰も手をあげないのならこの商品は
この方に決まりますが〉
〈2億〉
〈おっ2億!2億が出ました‼︎ッッ
これを上回る金額は〜〜〜〜〜出ない
出てこない‼︎ッッ それでは決まりました‼︎
今回この商品を手に入れたのはこの方
◯◯財閥の◯◯様です‼︎
おぉ〜なんと!これはこれはあの◯◯財閥‼︎
この国の頂点とでも言うべき
あの‼︎ッ◯◯財閥だ〜‼︎
これには誰も勝てない‼︎ッッ〉
〈では早速主従の契約をさせて頂きます〉
〈◯◯様ステージの上にお越し下さいませ‼︎〉
そう言って男は席を立ってステージに向かい
歩き始めた
そしてその隣には小柄な男がもう1人いたが
そいつの顔は暗くてよく見えなかった、、、
〈では早速、主従契約の方をさせて頂きます〉
〈ではまず、この吸血鬼の飼い主になられる
方はどちらですか?〉
「はいはい‼︎」
「僕がなりたいです‼︎ッ」
これには俺もビックリした
司会者も同様で予想になかったことすぎて
その場でフリーズしてしまっている
そして司会者も今は俺と同じことを考えていることだろう
こんなガキが飼い主になるのかと
〈えっ?あッいや…その、、、私共は別に
構いませんがそちらは大丈夫でしょうか?〉
「父さん、ダメかな?…」
〈俺は別にどうでもいい〉
「よし!ッ じゃあ決まりで‼︎」
「じゃあよろしくお願いします!」
〈あッはい…かしこまりました!
では契約者の方はこちらの吸血鬼の首について
いる首枷に血を吸わせて下さい〉
「はい!」
そう言ってそいつは自分の指を切り
躊躇なく俺の首枷に押し当てた
〈これで主従契約は完了です〉
すると俺の首についている首枷にそいつが
触れたところから一気に不思議な模様が
浮かび上がった
これが主従契約完了の証だ
これは人それぞれ浮かび上がってくる
模様が違う
模様はその人の心の形?在り方?みたいなのを
表していると言われている…らしい
俺もあまり詳しくは知らないが、、、
だけど今思い返せばあいつに飼われていたころ
の俺の首枷は禍々しい蔓のような模様を
していた
(やっぱりアイツは中まで腐ってたっつうこと
か、、、)
(まぁ今となっちゃあもう関係ねぇけどな)
(でもせっかく逃げられたのにな)
俺はそんことを考えながら
(こいつのペットになったら何をさせられる
んだろうな〜)とか
(あいつみたいなやつはもう御免だな〜)
などのネガティブなことばかり考えていた
自分では気づかなかったが
俺の体は微かに震えていた…
「まだかな〜」
(オークションって、始めるまでにこんなに
時間がかかるものなの?)
(準備に手間かかり過ぎでしょ)
(もっと効率よくやればいいのに)
などと僕がそんことを考えている
とステージに司会者らしき人物が登場して
やっとオークションが開始した
そこからはあまり覚えていない
人外がステージに出てくると司会者がその人外
について紹介し、そのあとはみんな金を投げる
そんなことの繰り返しだった
(つまんないな〜)
(こんなののどこが面白いんだか
僕にはさっぱり理解でないな)
僕が心の中でそう一人呟いていると気づけば
オークションもいよいよ最後になってきていた
最後ぐらいはしっかり見るかと僕は姿勢を
正してステージに注目した
そしてステージの袖から出てきたのを見て
僕は席を勢いよく立ち、身を乗り出していた
初めてだ僕がこんなに心揺さぶられたのは
その人外は見た目はほぼ人間と変わらないが
人間とは思えないほど人間離れした美しい人外
だった
こんな美しい生き物を僕は生まれて一度も見た
ことはない
しなやかでまるで絹のような美しい今まで見た
ことがないような綺麗な白銀色の髪に
触れたらひび割れるのではないかと思わせる
ほどに薄く透き通った雪のように白い肌
そして何より一番目が行くのはその人外の血の
ように真っ赤な紅の瞳だった
世界の全てを反射する、まるで宝石のような
瞳に僕は目を逸らすことができなかった
(僕も周りからはよく天使みたいだとか
綺麗な顔をしているだとかともてはやされて
自分でも僕はそれなりにいい方だと思っていた
けどこんな子見ちゃったら普通に自信なく
しちゃうな〜)
そして気づけば口からは僕の紛れも無い気持ち
が飛び出ていた
「綺麗、、、」
そう本当に綺麗だったのだ
本当に…
気づけば僕は父さんに話しかけていた
「ねぇ父さん、僕あの子がいいと思うん
だけど…どうかな?
それにあの見た目からしてきっと
あの子は吸血鬼だよ!」
「あの珍しくて貴重で美しいで評判の‼︎
あの吸血鬼なんだよ⁈」
「どうかな〜?」
〈ふむ、まぁ確かにそうそう手に入れられる
ものでもないしな〉
「じゃあ…」
〈別に買ってもいいだろう〉
「やった‼︎」
「ありがとう父さん」
(やったーー‼︎)
(まぁでも父さんはいいって言うと
思ってたけどね… 別にペットにはあまり
興味ないし
僕にもだけど、、、)
(でもまぁこれであの吸血鬼は確定で
手に入ったな〜)
(誰も父さんには勝てないからね)
(流石父さんだな〜)
(2億って笑)
(でもこのお陰であの子を手に入れることが
できた!)
〈◯◯様ステージの上にお越し下さいませ〉
(よし!行くか)
〈では早速、主従契約の方をさせて頂きます〉
『……』
(ずっと俯いてる…まぁそれもそうか、
関係上だけど今からこの子は僕のペットに
なるんだしね)
(でも勿体無いな〜)
(せっかく綺麗な顔をしているのに)
〈あッはい…かしこまりました!
では契約者の方はこちらの吸血鬼の首について
いる首枷に血を吸わせて下さい〉
僕は司会者の声で我に帰って
指示通りに渡されたナイフで指を切って
今も尚目の前で俯いている吸血鬼の首に
ついている首枷に指をつけると、どういう
仕組みかは分からないが僕の血を吸って
不思議な模様が浮き出してきた
〈これで主従契約は完了です〉
「はい!ありがとう御座いました‼︎」
僕は司会者にそう礼を言って
目の前の吸血鬼に向き直った
そして僕は今も尚この世界に怯えて
俯いている(様に見える)吸血鬼に声をかけた
「初めまして‼︎
僕の名前は“叶”!
よろしくね‼︎」
(僕が絶対、君を心のそこから笑えるように
してみせる‼︎)
それからはあっという間だった
俺のご主人様“叶”っていう奴がいきなり
名乗り出したかと思えばその勢いのまま外に
連れ出されて多分こいつ“叶”とか言う奴の
いかにも高そうな車に乗せられ、その後は
「好きな食べ物は?」
「苦手なこと、趣味とかある?」
などと怒涛の質問攻めをくらい続け、
気づけばこいつの家に着き
腕を引っ張られながらどこに連れてかれるん
だろうとおもっていたら
2階の右側の廊下の突き当たりにある部屋に
連れられて、身構えているとそのまま
手を引かれ浴室のような所に連れ込まれて
何をされるんだろうかと身構えていると
「服ぬいで!」
とこいつが言うもんだから俺はてっきり
いきなりここでヤられるのかと身構えていると
「脱がないなら僕が脱がしちゃうからね」
と言い、返事を待たずに俺の服を脱がして
あっけに取られている俺に目もくれずそのまま
風呂場に連れられ髪や体を丁寧に洗い始めた
最初はあまり慣れていないことすぎて
変に体に力を込め緊張していたが、こいつが
あまりにも優しい手つきで触るものだから
不覚にも気持ちいいなどと思ってしまう自分が
居たことには目を瞑っておく…
その後、風呂から上がるとこいつが事前に
用意しておいたらしき服が棚に置いてあり
「それ着たら僕が来るまで部屋で
ゆっくりしてて‼︎」
とそいつがそう言うとそいつは足早に部屋から
去って行った、、、
『待っててって言われてもな〜』
俺はあまりにも見慣れない高級そうな装飾を
施されている部屋に戸惑ってしまい体が
ソワソワして落ち着かずとにかく俺は近くに
あるベッドに腰をおろした…
『うわっ』
(このベッドめっちゃふかふか)
俺はそのベッドのふかふか具合に驚きながらも
今日は色々とあいつに振り回されて
運動なんてことを全くしない俺からしたら
疲れが一気にどっと来て、俺はそのまま
ベッドに仰向けになり迫り来る眠気に
従ってそのまま静かに
瞼を閉じた…