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離婚します  第一部

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離婚します  第一部

12 - 第12話 貴と旦那と私

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2024年10月29日

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月曜日、朝。

誰かと出かけるなんて久しぶりで、予定より早く目が覚めた。


さて、何を着て行こうかな?

このスカート、ちょっとキツくなってる!

やっぱり太ったからか。

これじゃ、ジーンズも無理っぽい。

え、どうしよう?


あれでもないこれでもないと、クローゼットから引っ張り出しては、放り出す。

こんなことなら、ダイエットしとくんだったなんて、いまさら遅い。


にゃーんとタロウがやってくる。


「あ、ごめんね、朝ごはんあげてなかった。そっか、トイレも掃除しないといけないね」


タロウのご飯の準備とトイレ掃除を済ませる。

そうだ、お水もかえておかないと。

着替えも中途半端に、バタバタと走り回る。

あー、もう、これでいいかな。

ハイネックのノースリーブの黒のサマーニットに、ベージュのワイドパンツ。

薄いグリーンの羽織をひっかけて。


姿見で確認する。

なんか、もたついて見えるけど仕方ない。

これ、綾菜だったらスレンダーだからうまく着こなすんだろうな。


そんなことを考えながら、メイクをする。

普段はほとんどしないけど、仕事じゃないから、一緒にいて貴君が恥ずかしくないようにしたい。

って、何考えてるんだろ、私。

ただの会社の友達と出かけるだけなのに。


戸締りをして、外で待つことにした。

車の音がして、一台、近づいてくる。


黒い、カスタムカー。

あー、なんだかこだわりが見える車だ。

エンジンの音も違う。

ピピッとクラクションが鳴った。

目の前に停まる。


「お待たせしました」

「いや、時間ぴったりで、すごいですよ」

「乗ってください」

「はい」


助手席にまわろうとしたら、もう一台車がやってきた。

見覚えのある白いハイブリッド車。

え?まさか?

すぐ横で車がとまった。

バタンと運転席から降りた人。


「どこか行くのか?」


旦那だった。


「あ、うん、車好きの集まりに。初めてだから迎えにきてもらったの。こちら同じ会社の…」

「小平さんにはいつもお世話になっております、同僚の真島と言います」


車から降りて旦那に挨拶する貴君。


「あー、ども。あのさ、タロウは?」

「中にいるよ、まだご飯食べてるかも?」


素っ気ない旦那。

もっと、激昂するか、まったく無視するかだと思ったけど、反応、薄過ぎる。

3ヶ月ぶりに見る旦那の顔をまじまじと見てしまった。

朝、起き抜けのままなのか、無精髭が目立つ。

眉もそのままだ。

多分鼻毛も。

いくら家に帰ってくるだけだからって、もう少しこざっぱりしてて欲しかったと思う。


玄関の鍵を開け、中へ入って行ったのを見届けると、貴君の車に乗った。


「ごめんね、まさか今日このタイミングで帰ってくるなんて、思ってもみなかった」

「俺はかまわないけど。別におかしなところへ行くわけじゃないし」

「あは、そうだよね?友達だもん」


貴君はゆっくりと車を発進させた。








そこは車好きが集まるレース場だった。

老若男女、20人くらい。

車もそれくらい。

どれもピカピカに磨き上げられて、さながら展示場のようだった。


「こんにちは」


貴君が先に歩き挨拶をしていく。


「こんにちは!あれ?真島、今日は女性を連れてるのか?珍しいな」 


少し年配、多分、旦那くらいの男性が話しかけてきた。


「小平さん、うちで働いてるんだけど車に興味あるって言うから連れてきたんだ。あ、それ、買ったの?ってか付けたの?」


紹介もそこそこに、置いてあった車のマフラーの辺りを見ている。

よくわからないけど、形が楕円形のマフラーがカッコいい。


「とうとう付けちゃったよ、中もすごいよ、見る?」


中というのは内装ではなくて、エンジンルームの中のようだ。


「やってるなぁ、いいなあ、俺もやりたいな。次の給料出たらやろっと」


いいないいなを繰り返し、まるで子どものように車を見ている貴君。

キラキラに目を輝かせて、うれしくてたまらないのが見てわかる。


「えっと、名前、こ、なんだった?」

「小平《こだいら》です、小平未希といいます」

「貴と同じ職場ってことは、そこの事務員さんとか?」

「あ、いえ、整備士見習いですがまだまだなので雑用係です。真島さんの手伝いをしてます」


これ飲む?と缶コーラを渡された。

プシュ!と軽快な音がしてこぼれそうになったコーラを慌てて飲んだ。


「貴ってさ、真面目でしょ?面白くない男でしょ?」

「面白いか?と聞かれたら面白くはないかも?でも、仕事がすごくできて、教えられることばかりです」

「面白くないよね?真面目すぎるから彼女もできないと思うんだけど、どう?未希ちゃん、あいつのこと」


まだ車を覗き込んでる貴君を鼻で指して私に聞く。


「無理ですよ、私なんて!だいぶ年上のおばさんなので」

「年なんて関係ないさ、本人がその気ならね」

「あはは、その気じゃないから、ないですよ」


そこへ貴君が戻ってきた。


「何を話してたんですか?花井さん」


花井さんと呼ばれた男性は、タバコに火をつけながら


「貴はつまんない男だって言ってたんだよ、未希ちゃんが」

「え?そんなこと言ってないし!いい人だって言ってたのに」

「花井さん、俺のツレに変なこと吹き込まないでくださいよ」

「変なことじゃねーっつうの」


ん?俺のツレ?俺の…ツレ?

その響き、いい!

なんでだろ?

多分今、私、うかれてる!


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