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朝の光がビルの窓ガラスに反射していた。昨夜の戦いが嘘のように、街はいつも通りの朝を迎えている。
通勤する人々。
信号待ちの車。
カフェの前に並ぶ客。
だがその街の裏側では――
異能者たちの戦いが、確実に動き始めていた。
黒いワゴン車が高速道路を走っていた。
車内には四人。
運転席にはスーツ姿の男――相馬 圭司(そうま けいじ)。
異能対策局のエージェントだ。
後部座席にはレイ、ルナ、ミナ。
ルナは窓の外を見ながら言った。
「ねえ」
「ほんとに政府の施設なの?」
相馬は前を向いたまま答える。
「そうだ」
「正式な基地ではないが」
「関西支部の拠点の一つだ」
レイは腕を組んでいる。
「……秘密基地ってやつか」
相馬が少し笑う。
「そんな感じだな」
ミナはタブレットを見ていた。
そこには昨夜のニュース記事が並んでいる。
「ショッピングモールの事件」
「ガス爆発事故ってことになってる」
ルナが吹き出した。
「いや無理あるでしょ」
相馬は淡々と言う。
「政府は異能の存在を公表していない」
「パニックになるからな」
レイは窓の外を見る。
「……都合いいな」
相馬は何も言わなかった。
しばらくして車は高速を降り、山道へ入った。
ルナが眉をひそめる。
「え」
「山?」
ミナも言う。
「基地って地下都市とかじゃないの?」
相馬は答えない。
数分後。
車は大きなトンネルの前で止まった。
入口には何もない。
普通の山道だ。
ルナが言う。
「……行き止まりじゃん」
相馬は車を降りる。
そして壁のような岩に近づいた。
手をかざす。
ピッ。
電子音が鳴った。
次の瞬間。
ゴゴゴゴ……
岩壁が横に開いた。
巨大なシャッターが現れる。
ルナが叫ぶ。
「うわっ!」
「ほんとに秘密基地じゃん!!」
車は中へ入った。
中は巨大な地下空間だった。
何十台もの車。
武装した隊員。
大型モニター。
まるで軍事基地だ。
ルナは窓に顔を近づける。
「すご……」
ミナも驚いている。
「思ったより本格的」
車が止まった。
相馬が言う。
「着いた」
三人は車を降りた。
するとすぐ、数人の隊員が敬礼する。
「お疲れ様です、相馬さん」
相馬は軽く手を上げた。
「会議室を使う」
隊員が頷く。
「準備できています」
ルナがレイの腕を引く。
「なんかすごいことになってきたね」
レイは周囲を見回す。
訓練している異能者もいた。
炎を出す男。
風を操る女。
重力を歪める少年。
レイが呟く。
「……結構いるんだな」
ミナが言う。
「政府が把握してる異能者」
「全国で数千人いるらしい」
ルナが目を丸くする。
「そんなに!?」
相馬が振り返る。
「だが戦闘レベルは少ない」
「だから君たちに期待している」
会議室。
大きなモニターが壁にある。
相馬は電源を入れた。
画面に地図が映る。
日本地図。
赤い点がいくつもある。
ミナが気づく。
「これ……」
相馬が説明する。
「エデン関連の事件」
ルナが目を見開く。
「こんなに?」
赤い点は全国に広がっている。
東京。
大阪。
名古屋。
福岡。
相馬は言う。
「ここ半年で急増している」
レイが聞く。
「目的は?」
相馬は画面を切り替える。
そこには数人の異能者の写真。
「誘拐だ」
ルナが顔をしかめる。
「最悪」
相馬は頷く。
「エデンは強い異能者を集めている」
ミナが言う。
「実験体?」
「おそらく」
そして画面に一枚の写真が出た。
銀髪の少年。
カイ。
ルナが言う。
「こいつ」
相馬は頷く。
「実験体No.1」
「エデンの最高傑作」
レイは黙って見ていた。
相馬が続ける。
「そして」
「No.0」
画面にレイの戦闘映像。
黒雷が走る。
ルナが笑う。
「かっこいい」
レイはため息をついた。
相馬は真剣な顔で言う。
「君の能力」
「黒雷」
「これは非常に珍しい」
ミナが興味深そうに言う。
「空間干渉型の雷」
相馬が頷く。
「そう」
「カイの虚空に対抗できる」
ルナが腕を組む。
「つまり」
「宿命のライバルってやつ?」
相馬は少し考えてから言った。
「……そうなる」
レイは椅子にもたれた。
「面倒だな」
その時。
会議室のドアが開いた。
ガチャ。
全員が振り向く。
そこに立っていたのは――
一人の少女。
短い銀髪。
赤い目。
年齢はレイたちと同じくらい。
制服のような戦闘服。
少女は言った。
「新入り?」
ルナが小声で言う。
「かわいい」
少女はルナを無視してレイを見る。
数秒見つめて――
言った。
「弱そう」
ルナが反応する。
「は!?」
レイは眉を上げた。
「いきなりだな」
相馬が紹介する。
「彼女は」
「神代 アヤ(かみしろ あや)」
「対策局のエースの一人」
ルナが驚く。
「エース!?」
アヤは腕を組む。
「No.0とか言ってたけど」
「大したことなさそう」
レイが笑った。
「喧嘩売ってる?」
アヤは平然と答える。
「事実」
ルナが怒る。
「ちょっと!」
相馬がため息をついた。
「アヤ」
「挑発するな」
アヤは肩をすくめる。
「だって」
レイを見て言う。
「カイと戦うなら」
「この程度じゃ死ぬ」
部屋が静かになる。
レイはゆっくり立ち上がった。
「……なら」
ルナがワクワクする。
「お?」
レイは言った。
「試してみるか?」
アヤの目が光る。
「いいよ」
相馬が慌てる。
「待て」
「ここで戦うな」
ルナが笑う。
「じゃあ」
「訓練場?」
アヤはすでにドアへ向かっていた。
「ついてきて」
レイはルナとミナを見る。
ルナは親指を立てる。
「やっちゃえ」
ミナは苦笑する。
「怪我しないで」
レイは肩を回した。
「さて」
「政府のエースか」
地下基地の奥。
巨大な訓練場。
そこに二人が立つ。
レイ。
アヤ。
周囲には隊員たちが集まり始めていた。
ルナが興奮する。
「公開バトルだ!」
ミナは真剣な顔。
「アヤの能力」
「まだ聞いてない」
ルナが聞く。
「何?」
ミナが言った。
「……たぶん」
「かなり危険」
その時。
アヤが言った。
「始めよう」
空気が変わる。
レイは構える。
雷が走る。
バチッ。
アヤは静かに言った。
「能力」
「絶対零度」
次の瞬間。
訓練場の床が――
一瞬で凍った。
ルナが叫ぶ。
「ええええ!?」
レイの目が鋭くなる。
新しい戦いが
今、始まろうとしていた。
――続く。