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1\あの人はきっと…
私の名前は愛華…苗字は中田です。
ただの女子高校生です。
私には彼氏がいます。ですが、私の誕生日の前に彼氏は事故で死去なさったんです。
彼氏が亡くなる前日、綺麗な薔薇と手紙を輸送で貰いました。私はとても嬉しくなり、花瓶を買い、早速薔薇を飾りました。
その日から、なぜか辛いことがあっても、悲しいことがあっても…1日を優しく照らしてくれる気がしました。
朝、ふと薔薇が置いてある棚が目に入りました。
手紙が置かれていて、花瓶ごとなくなっていました。
「どうしてっ…。」
ちゃんと大切に育てたのに、水をあげたのに…。
疲れた日は、「お疲れ様」と癒やしてくれるような気がしました。ですが、そんな都合のいい花はもうありません。
私はふとリビングに置いている、薔薇と一緒に貰った手紙が目に入りました 。
手紙には、彼氏の華奢な字でこう綴られていました。
「大切にしてね。」
これだけです。意味が分かりませんでした。
ちゃんと大切にしました。ちゃんと水をあげました。
彼氏に電話をしようとしました。ですが、そんな都合のいい彼氏はいません。そんな都合のいい話はありません。
それから、毎日がつまらなく感じました。学校やバイトから帰っても、私には花や彼氏はいません。私の名前にある華も愛もありません。
努力が水の泡になった気がしました。
ある日、玄関のチャイムが鳴りました。
「これ、愛華宛だよ」
ドアの前にいたのは幼馴染でした。手違いがあったのか、幼馴染宛に届いていたらしいです。
幼馴染の柔らかい表情で安心した私はわっと泣いてしまいました。
幼馴染は私を抱き寄せてくれて、私はもっと涙をこぼしました。
……情けないですね。もうこの話はやめましょう。
届いた荷物は、赤色で金のスパンコールが散りばめられているリボンで巻かれた高貴な箱でした。
私は両手で箱を受け取り、幼馴染を家のリビングへ招き入れました。
幼馴染は私の顔を見るなり、うげっっ…と言いたげな顔をしました。
………*顔をしかめました。*
漫画の読みすぎですね…。
私が首を傾げて尋ねると、幼馴染はこう言いました。
「愛華…クマが……その………凄いよ…?」
私は洗面所の鏡で急いで顔を見ると、そこには覇気のなく、健康状態もかなり悪そうで、クマも濃い女がいました。
両親は今、彼氏と私で出掛けて、例の事故で入院中です。
私だけ助かったんです。
洗面所のカッターを持ち、友人のいるリビングへゆっくり歩き出しました。
「結菜、カッターの使い方忘れたからあんたが箱のリボン切ってよ。」
リボンは箱にくっついていて、とても開けれそうにありませんでした。
幼馴染…これからは結菜と呼びましょう。
結菜が箱を開くと、そこにはセツブンソウと手紙が入っていました。
手紙を開くと、彼氏の華奢な字で
「大切にしてね そして、この花はドライフラワー 絶対に枯れないからね この間に送った薔薇もドライフラワーだよ」
私はセツブンソウを手に取り、花瓶に飾りました。
なぜだか、気持ちが軽くなりました。
それから学校に行けるようになり、花を見るととても気分が良くなります。
ええ、華を取り戻したんです。
あの人《彼氏》はきっと…きっとですが、私を思ってのことでしょう。
だって…私の誕生日に近かったんですから。
私は未だに…あの人のことが大好きです。
あの人も私のことを大好きと思ってくれたら、私は嬉しいです。
来世であの人が幸せになることを祈っています。
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