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般若side
昨日は散々な目にあった。
後輩の女子二人が用事で倶楽部の後片付けができないと相談されたから、俺が使い魔で妹に文通をさせてもらう代わりに、片付けを引き受けることにした。
けど実際は、片付けをサボって妹に嫌がらせをするためだったみたいで、実際倶楽部終わりに外を出ると、妹を殴ろうとする後輩を見た。
カゴメには止められたけど、あの二人には暫く倶楽部活動を禁止してもらうことにした。
阿形「あ!兄貴〜!」
食堂で飯を食ってると、小走りでお盆を持った一年生が隣に座ってきた。
昨日カゴメと一緒にいた阿形って名前の包帯少年だ。
阿形「兄貴!おはよーございまーす!」
般若「おう、阿形か、おまえ朝からうるせーな笑」
昨日はカゴメをたぶらかそうとする野郎だと思っちまったが、どうやら学校にくる途中で知り合った同学組だそうだ。
何故かこいつに懐かれてしまったらしく、兄貴なんて呼ばれるようになったが、正直悪い気はしないんだなこれが。
隈取「おい阿形、食堂で走んなって…誰だそいつ?」
お盆に大量の飯を乗っけてやってきたのは、一年とは思えないくらいガタイの良い男だ。
何食ったらそんな身体になるんだ?
阿形「あ、隈ちゃん!この人は般若先輩!カゴメちゃんのお兄さんなんだって!」
隈取「そうか、俺は新入生の隈取だ!よろしくな!」
満面の笑みで握手を求めるように手を差し出してきたから俺もぎゅっと手を握る。
俺が言えることじゃないが、見た目の割には良いやつそうだ。
般若「三年の般若だ、俺の方こそよろしくな!」
阿形「兄貴はカゴメちゃんのことどー思ってるんすか?」
三人並んで飯を食ってると、阿形が聞いてくるもんだから、思わず吹き出してしまう。
般若「はっ笑、なんだよその質問笑」
阿形「いやぁ何となく?一緒に住んでてどうなんだろって思って!」
隈取「確かになぁ、何歳くらいで一緒に暮らし始めたんだ?」
阿形「俺カゴメちゃんから聞いたよ!十歳のときって言ってた!」
俺は顎に手を置いて考える素振りをしながら、カゴメとの出会いを振り返ってみた。
般若「あー、そうだな、カゴメが十歳で、俺が十一…十二くらいだっけか?俺ん家が漁業家だから結構親が家開けてて、寺子屋で結構世話んなってたんだよな…」
二人はうんうんと、興味しんしんに俺の話を聞く。
般若「そんときのカゴメと一緒に過ごしてくうちに仲良くなって、俺の親が引き取ることにしたんだってさ」
阿形「へぇ…あ、質問質問!」
般若「…ん?」
阿形「なんで兄貴の両親はカゴメちゃんを引き取ることにしたの?」
般若「わかんね、可愛かったからじゃない?」
阿形「なんすかそれ笑」
隈取「何となくだが、般若と仲良かったからじゃねぇか?」
般若「あーなるほどな…でもあいつ、初めて会ったときは文字すら読み書きできなかったし、口もきけなかったんだぜ」
隈取「はっ?!マジかよ…そんなふうには見えなかったなぁ」
阿形「えぇっ?!俺てっきりお嬢様育ちで、めっちゃ勉強してるんかと思ってた!」
般若「ははっ!やっぱそう思うよな?」
飯を食い終わって三人でお盆を片付けながら辺りを見渡すが、やっぱりカゴメが見当たらない。
あんなことで盛り上がってればアイツがゲンコツでもやりにくるはずだけど。
寝坊するようなやつじゃないし、体調でも崩したんだろうか?
般若「おばちゃん!握り飯二つ、梅と鮭で!」
厨房でせっせと湯呑みや茶碗を片付けてるおばちゃんにカゴメ用の握り飯を頼む。
おばちゃん「あらさっき食べてなかったかい?やっぱ鬼の男は食いしん坊ねぇ!」
般若「俺じゃねぇよ妹の笑!」
おばちゃんは「ガハハ」と笑いながら手際よく三角の握り飯を握って、竹皮で包んで渡してくれた。
おばちゃん「はいよ!途中で落とさないでおくれよ!」
般若「ありがと!」
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