いろいろ面倒な手続きが終わって、
高校に登校する1週間前になった。
「ねーひよちゃん!」
「びっくりした!!なーに?」
ウェンくんに話しかけられて振り返る。
「高校デビューでさ、髪染めない?」
「えっ?」
「僕さぁ買ってきたんだよね、
パツキンになれるやーつ」
「…え、それわたしがやるの?」
「そうだよ?え、なになに?
テツにもやってほしいとか?」
「えっ、テツくんにもやってくれるの?」
「それは本人の意思による〜」
「なんだ…
ていうかわたし金髪やんないよ?」
そういうと、ウェンくんは大きく目を見開いて大袈裟なリアクションをする。
「えーっ!?
まじ?」
「まじだよ!ほらわたし、そういうキャラじゃないしさ」
「だってさ〜みんな」
みんな?
ウェンくんがそう言うと、近くの机の下から3人でてくる。
「うわっ、そんなとこでなにやってんの!」
マナくんにリトくんにテツくん。
「そんなんは今どうでもええねん」
「お父さんの言葉を忘れちゃったのかな?
キミはモテちゃいけないんだよ」
「…忘れてないけど、金髪にするのとどう関係するの?」
「やっぱギャルって近寄りがたいじゃん?」
「それテツくんだけじゃないの?」
「な゙っ!?失礼だな〜」
「失礼っていうか、自分で言ってたじゃんこの前」
「それは…そうか。」
ていうか、形から入らないといけないの?
これ。
「とりあえず金髪にして。
あとぶりっ子を徹底すること」
腕を組んだリトくんに言われる。
「ちょっと厳しいよ〜…
ぶりっ子ぉ…?」
「そうそう。ぶりぶりしといて〜?
一人称はウチに統一ね?」
ウェンくん喋りが適当すぎるよ…
「ぶりぶりw」
「ちょっ、リトくんそこで笑わないでよ」
マジでしょうもない。
「とにかく今のうちにウェンからギャルマインド吸い取っといてや」
「えっ、これって決定?」
「「「「うん」」」」
「まじかぁ…?」
・・・
「はーいおつかれさまでしたぁ〜」
ウェンくんがそう言いながら前掛けみたいなのを外してくれる。
かなり時間かかったな。
「おー!かわいらしっ」
「いいじゃん」
「金髪もかわいいな」
いつの間にか部屋には8人集まっていて、みんなが褒めてくれる。
「感想はいいんだけど、鏡見せてくれないかな…??」
「あっ、そうだ。るべショウ鏡取ってー」
「えー俺?いいよ」
「はいこれ」
そう言って手鏡を渡される。
「うわぁ…」
ほんとに金髪になってる。
「わたし金髪あんまり似合わないな…」
色々な角度から自分を見る。
やっぱり黒のほうがかわいいな。
「わたしじゃなくてウチねー?ウチ」
うわっめんどくせぇ。
「あーはい。ウチあんまり似合わない」
「似合ってると思うけどね」
「てか雛なんでも似合う」
「ありがとうね全肯定botさんたち」
はーなんだこれ。
わたしのことオモチャにしてるでしょ絶対…
ていうかお父さんなに考えてるんだほんと。
まあいいもん。
高校デビューの一環として染めてみただけだからっ。
「これっていつ戻せるの?」
「わかんない」
「黒髪が見たくなったらウェンが戻してくれる」
「そのシステムしんどすぎる」
・・・
コンコンコン
「ひーよさんっ」
部屋でくつろいでいると、ノックされる。
わたしは急いで扉を開けた。
「はい!ライくんだ、どーしたの?」
ライくんがわたしの部屋を訪ねてきた。
「これさ、渡そうか迷ったんだけど」
そう言って手渡されたのは、電動ドリル。
「えっ?なにこれ?」
「なにって、どう見ても護身用じゃん」
「対人用だったんだ…」
電動ドリルに見えるけど、実は違うのかな?
そうじゃなかったらライくんの精神状態がすごく心配。
普通は電動ドリルなんか護身用に渡さないもん。
「これ、ここのツマミ回すといろんな機能を切り替えれるようにしてあるんだけど」
「うん?」
「このモードだと普通のドリル、これをやるとシールドにもなって、でこれは実弾がでるやつ」
「実弾」
「これカラーボール出る」
「カラーボール」
対犯罪者のやつじゃん。
「これ結局なににつかうの?」
「言い寄ってきた男とか、話しかけてきた奴とか、目が合った人間とか」
「あぁ…(察)
言い寄ってくる男にカラーボールだけやってみようかな」
「実弾いっちゃいな」
「さすがに犯罪者にはなりたくない」
「あ、たしかに。じゃあ電話の機能で俺のこと呼んで」
「いろいろ搭載されてるんだね…」
「うん。俺が作ったやつだし
ちなみに世界に一つだけね」
「ああ…うれしいね」
「うれしいでしょ?」
「うん」
沈黙が流れる。
「…ひよのこと傷つけるやつがいたら、
俺らはそいつのこと殺すかもしれない」
「えっ、なになに、物騒だよ」
「そんくらい大事ってこと。
だから、変な男寄り付かせないで」
「了解です」
ドアを閉めて考える。
そうだ。
わたしがモテたら、人が死ぬかもしれない。
8人だったら殺しかねない…
殺さないにしても半殺しくらいはするかも。
怖すぎ。なにこの状況…
とりあえず、ぶりっ子ギャルをみがこう。
来週から登校…
わたしが選択肢を間違えると
人が死ぬ…..
かも。
うん、がんばろう。
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