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『取引』当日。


ルーイ先生に指示された物は全て用意した。流れと進め方についても説明を受けたので大丈夫。場所の方の準備も概ね完了しており、最終確認をしている最中だ。


「後は……彼らを連れて行くだけか」


俺は今、ニュアージュの2人組が拘束されている部屋の前に立っている。少女の名は『カレン』……男の方は『ノア』という。年齢は13歳と17歳。どちらも近接格闘術を身に付けているようでカレンは小型ナイフ、ノアは棒状の武器を所持していた。

この2人は魔法使いの『エルドレッド』に仕えており、カレンの言動から護衛のような役割を担っていたのだと推測される。

それなりの実力者であるが、俺ひとりでも充分に鎮圧可能だ。武器類は全て取り上げられ、手足の自由も制限されている。身動きが取れない状態の彼らに、反撃はおろか逃走することは不可能。……普通であれば。


「セドリック」


「レオン様……」


主の登場だ。あちらの準備も問題なく終了したようだな。


「レナードとミシェルは?」


「ご命令通り、クレハ様の元へ行かせました。中の2人にも変わった様子は見られません。いつでもいけます」


「そうか。兵も配置につかせたし、先生も無事に別館に移動された。それじゃあ……始めるとしよう」


レオン様が話を終えた直後、俺は瑠璃色の光に全身を包み込まれた。主を中心に発生したその光は、放射状にどんどん範囲を広げていく。

光の正体……それはレオン様の魔法。魔力を持つモノの気配を探り出し、場所を特定することができる。『魔力感知』……極限られた者にしか扱えない高等魔法だ。


「とりあえず屋敷の周辺10キロ程度まで調べてみたが、不審な力の存在は感知されなかった。その部屋の2人からも魔力の気配は感じない」


「……となると、少なくとも魔法による攻撃を受けることは無さそうですね」


「ああ。でも油断はするなよ。ニュアージュの魔法については、知らない事がまだたくさんある。今気配が無いからといって安心するのは早計だ」


「心得ております」


俺は腰に下げた軍刀に手をかける。心構えは出来ているという合図。レオン様は無言で頷いた。改めて互いの意思確認を行なった後、俺たちはカレンとノアがいる部屋の中へと足を踏み入れたのだ。












カレンとノアを引き連れての移動は無事に完了した。これといった問題も起こらず、俺たちはジェムラート邸の別館に到着することができた。移動中の2人は暴れるようなこともなく、大人しく我々の指示に従った。ひとつ目の課題はクリアだな。


ジェムラート家の別館は本館と隣接してはいるが、内部では繋がっていない独立した建物。この『取引』を行うにあたり、公爵が提供してくれた場所だ。

もしものことを考慮し、使用人たちも全て本館の方に避難させてある。現在この建物の中にいるのはルーイ先生と警備隊の隊員が数名……そして我々だけだ。

そのまま順調に先生が待機している部屋の前まで辿り着いた。ここまで口を閉ざしていたレオン様が言葉を発した。


「これからお前たちには、あるお方と話をして貰うが……少しでも妙な素振りをしようものなら命の保障はしない。分かったな」


カレンとノアに許されるのは、先生の問いかけに対しての応答のみ。手足の拘束具も付けられたままで行う。この状態で逃走を計るなんて馬鹿なことはしないだろうが……油断は禁物。話し合いの間、彼らの一挙手一投足に目を配らせなければならない。

レオン様はふたりに念を押すと、部屋の扉を開いた。


「お待たせ致しました、ルーイ先生。ニュアージュの2人を連れて来ました」


用意された部屋はそれなりに広さがあり、ソファや椅子が綺麗に配置されていた。ここは本来、複数人が集まって歓談などをするために設けられた談話室なのだそうだ。部屋の中央にある大きめのソファに先生は腰掛けていた。


「何ごともなかったようで、安心したよ。さあ、こっちにおいで」


先生の怪我が最後まで気掛かりだったのだけど……問題無さそうだ。事前に鎮痛剤も服用しているし、患部もしっかりと包帯で固定して貰ったからな。良かった。それは良かったのだが……

反射的に声を出さなかった自分を褒めてやりたい。先生の怪我の心配も一瞬で吹き飛ぶくらいの衝撃を受けた。

先生は穏やかな笑顔で俺たちに手招きをしている。隣にいるレオン様は平然としているので、どうやら主は知っていた模様。


あれは……『アルバビリス』だ。


俺が度肝を抜かれたのは先生の服装だった。『アルバビリス』……その名は『崇高なる白』という意味合いを持ち、王族が神事の際に身に纏う特別なころも。いつの間に王宮から取り寄せたのか。更に、普段は下りている先生の髪が後方へ撫で付けられていた。額をすべて露出させることで、紫色の瞳がよりよく見えるようになっている。どちらもニュアージュの2人に対して、視覚的プレッシャーを与えるためか……

神との繋がりを強調するのにこれ以上ないであろう出で立ちだ。カレンとノアは先生に釘付けになっていた。これも作戦のひとつであるのなら効果は抜群だな。

でも……何でそれが俺には通達されていないんだよ。ポーカーフェイスがどうとか言ってた癖に……俺まで一緒に驚かせてどうするつもりなのか。

深呼吸をして高ぶった気持ちを落ち着かせる。きっと伝え忘れただけだ。これしきの事で心を乱すな。

もう一度先生の姿を見た。彼が普段身に付けているものとは全く違う系統の服であるが、見事に着こなしている。



『自分は何を着ても似合う』……いつぞやの先生の自画自賛を思い出してしまった。この発言が冗談や自惚れではなく、事実として納得させられてしまい、少しイラッとした。

リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした〜

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