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無名
三途春千夜・歪愛
第3話・|狂 愛 の 始 まり
??: はい。すとーっぷ。
蘭: ナイス〜。__、やるじゃん。
??: それほどでもある。
そういいオレの肩を触った瞬間にオレは抱き寄せられた。
いわゆるバックハグ状態。
オレの顔の真横に抱き寄せた人間の顔が置かれる。
竜胆: なーに兄貴から逃げてんの?
まず逃げれると思ったわけ?
と揶揄うように嘲笑しながら言った。
蘭: え〜竜胆積極的〜
竜胆: 兄貴は手ェ出すの早すぎ。
蘭: 愛の大きさってやつ〜
いつもと違う
ただでさえおかしい兄弟に捕まり絶望が頂点に達しているオレの横で
兄の方は軽薄に弟を揶揄っている。
ただ骨を折られただけの被害者なオレはこの兄弟に挟まれながら
今だに逃げる方法を考えていた。
逃げる方法などないのに、だ。
あと少しで逃げれたのに。などと思い睨めれば幾分か気が晴れたのだろうが、
今の状況でそれをすればすぐさま拳が飛んでくるやもしれない。
そして、オレから注意が逸らされていた時間が終わりを告げた。
蘭: ……じゃ。部屋行くか〜
竜胆: だね、兄貴。
オレもついて行かないと行けないのだろう。
諦めて着いていけるよう、方向転換をしようとした時
折れた腕に重なる僅かな痛みと浮遊感が同時に襲ってきた。
そう。抱き抱えられたのだ。
三途: ……っは?
竜胆: 軽〜。
蘭: ここ最近コイツに仕事押し付けて飯の時間減らしといたからね〜
蘭: おかげで最近は本調子じゃないみたいだし
ね?と問いかけてくる。
最近やけに仕事を押し付けてくる量が増えたと思えば……これが原因かよ。
なんて思って、気づいた。
これを、コイツらは前々から計画していた。
という事実に。
つまり最近はずっと、”そういう目”で見られていたという事だ。
ふとした一言で事実がまた1つ身を剥き出し、
元々冷えきっていた背が さらに冷えるのを感じた。
これから何をされるか分からないが、やっとコイツらが本気だというのを理解した。
やっと、理解出来た。
……したくは無かったが。
少し前からずっとコイツらの罠に嵌っていた。
コイツらの思惑通りにコトが進んでいる。
それはきっとオレにとっては不利益そのものだろう。
何も言い返せないオレにさらに追い討ちをかける一言が発せられた。
蘭: あ、そーそー。
蘭: これからはオレらから離れないでね
竜胆: 離れたら…………分かるよな。
三途: ……っ
頷くしかないのだろうか。
そう返答に迷走していれば、
きっとこの沈黙が「NO」として捉えられたのだろう。
腕にまた激痛が走った。
だが、痛みが走ったのは折れた腕ではなく、逆の腕だった。
三途: ……は ゙…ッ”ぃ”…!!
蘭: おお〜、斬れ味いいじゃん。
竜胆: ……はぁ、兄貴。やりすぎ。
どこか高揚しているように話す兄弟。
何をされたのか理解するのに時間が少し要した
そして理解する。
どこに隠し持っていたか、鋭いナイフで腕を貫かれた。ということに
ボタボタと血が滴り、俺の服も抱き抱えた竜胆の服も赤に染めた。
折れた腕を何とか持ち上げて刺された部分を強く掴んだ。
正直、危険な任務でもここまでの怪我はしない。
それ故、これ程の痛みを感じるのは久しぶりだった。
普通の人なら叫ぶのだろうが……
それは反社としての、上司としての、No.2としてのプライドが許さず
その結果腕を握って痛みを少しでも和らげるしか無かった。
段々と焦りが募っていく。
状況を徐々に理解し始めた。
右腕を折られ、左腕を刺されている。
ということは両腕を使えない。
仕事も任務もだが、
第1にこいつらに反抗が出来なくなった。
蘭: 結構痛そ〜
竜胆: 当たり前でしょ……
何を他人事のように言っているのか…
若干の腹立たしさを感じたが、そんなものに意味も幸も無いことは知っていた。
抑えていた腕をどけた。
折れている腕を持ち上げるのはもう限界だった
傷が露になり、傷口があるものに似ていた。
ナイフで刺された傷口は
酷く縦長だったが、
ひし形をしていた。
それを目にした瞬間。
嫌な記憶がフラッシュバックされる。
傷口を押さえ込んで血塗れの手の平。
床に滴る血。
いくつかの点が記憶と重なる。
段々と息の仕方を忘れていく。
頭が真っ白になる。
三途: ……はっ……はぁ っ…ふっ…ぅ
異変に気づいたんだろう。
竜胆と蘭が名前を呼ぶ。が、
それは三途の耳には喧騒として処理された。
竜胆: ……三途?
蘭: 三途ー?
竜胆: 息が荒い……
蘭: 梵天初期の頃は皆なれない武器に手間取って怪我ばっかりだったから
蘭: これくらい大丈夫と思ったんだけどな。
竜胆: それは後で考えよう兄貴。
竜胆: これがバレる前に身を隠さないと。
竜胆: 口をタオルで抑えといて。
蘭: りょ〜。
何を話しているか、頭の片隅で気になったが、
酸素が足りず、それ以上考えることが出来なかった。
すると、突然口を布で覆われた。
ただでさえ息が苦しいのに、空気の通り道を塞がれてはさらに苦しくなるだけだった。
段々と意識が遠のいていく。
その間も、変わらず脳内には昔の記憶が流れ続けていた。
急に視界が開けた。
真っ暗だった目の前には地面と、滴れた血。
血で濡れた自分の手だった。
瞬時にこれは現実では無いのだと理解出来た。
だが、夢から覚めることは無い。
気付けばまた胸ぐらを掴まれ拳を振り上げられていた。
振り上げている人物は誰か分かる。だが、顔は何か黒いモヤで覆われて見えない。
これは誰だったか。
なんて考えてる間、
ずっと顔に拳が降っていた。
その度に呻き、血を落とす。
無限に降ってくると思っていた拳が気付けばやんでいて、
その代わりに涙が零れ落ちている。
昔の記憶。
それ通りに行くなら
今から1番聞きたくない言葉が発せられる。
泣き止まないと。などと焦っても止まらない。
目の前の人物が口を開いた。
万?次郎¿: 笑えよ。
その瞬間視界が強い光で遮られた。
三途: …ここ、…見た事ない…部屋、?
先程までものすごく恐ろしいものを見ていた気がした。
何か懐かしい、でも凄く恐ろしいもの。
それは何か思い出せるよう考えを巡らせようとした次の瞬間。
腕に激痛が走る。
寝起きで鈍くなっていた痛覚が戻ってきたのだ
両腕に鈍く痛みが滞る
刺された左腕は丁寧に包帯が巻かれている。
折られた右腕も補助までつけてしっかりと処置が施されている。
それでも痛いものは痛い。
何故か視界が歪み水が落ちてきた。
これくらいの傷なら泣かない自信があった。
だが、先程見た夢で痛覚は敏感になっていたようだ。
意識がシャットダウンする前よりも痛みは酷くなっている。
そこへ、タイミング良く2人が入って来てしまった。
途端に 何故か泣き止まないといけない。という自念にかけられ、焦りを募らせてしまう。
そしてやはり、泣きやめない。
これが先程の夢と重なり、恐怖に駆られた。
蘭: 三途、起きたんだ。
竜胆: 急に墜ちるからビビった。
そういい部屋に入ってきた2人はオレが泣いているのを目にしたんだろう。
何か話し始めた。
蘭: …あちゃ、泣いてる……
竜胆: 不謹慎だけど、唆るね
蘭: だな。
何を会話しているのか
いつ、”あの言葉”が飛んでくるのか全くに分からない。
何をすれば許して貰えるか考えるのに必死で会話内容など入ってこなかったのだ。
許してもらうには、謝るしかない。
そういった結論に陥った。
蘭: 三途〜泣きやめ〜
竜胆: 綺麗な顔が台無しだぞ。
三途: …め、……さ…い
蘭、竜: なんて、?
三途: ごめん、なさい……ごめん、ごめん…
蘭: っえ?謝らなくていいよ〜?
竜胆: なんで謝るんだ…?
三途: 泣き止む、泣き止むから……
三途: だから…だから、
三途: 笑いたくない……っ”
オレは許される事にとにかく必死だった。
その為、この時の2人の邪悪な笑いに気づけなかった。
蘭: …”春ちゃん” オレたちは強制しないよ
竜胆: 泣きたい時にないて、笑いたい時に笑え
蘭、 竜: 大 丈 夫 だ よ 。
その言葉は。
今のオレにとって、
甘すぎる蜜であり、
彼らの狂愛の始まりの言葉だった。
最後まで読んで頂きありがとうございます
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