コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
絵を描いていた手を止め、固まった体をほぐす。集中していたため気が付かなかったが、結構肩が痛い。ふと、今は何時だろうかと時計を見てみる。
「うわっ、もうこんな時間!?」
『え、ああ、ほんとだね』
時刻は朝の六時半を過ぎたくらい。二十五時から作業してて、もう五時間以上は経ったということだ。外からは雀が鳴いている声が聞こえる。
今日はほとんど奏と二人での作業だった。まふゆは平日なのですぐいなくなるし、瑞希も肌に悪いとか言って、今日は三時くらいに寝ていた。
「眠くはないけど、体がなあ」
『もうこんな時間だし、寝ておいたほうがいいんじゃないかな。作業も遅れてるわけじゃないから』
「うーん、そっか。もう六時半か……」
いくら眠くないとはいえ、正しすぎる意見だ。
六時半と聞くと思い出す。昨日まふゆが起こして、と言っていた時間だ。その出来事を奏に話したら、まふゆは怒るだろうか。
まあいいか、面白かったし話したい。まふゆの成長を報告する義務もあるだろうし。
「ねえ奏、そういえばね、まふゆが昨日悪夢を見たみたいで」
『え、悪夢?』
「そう、悪夢。私達がいなくなっちゃった夢らしくて、それでね」
『うん』
「朝の四時にセカイにいて起きてたから、学校で絶対眠くなると思って横にしたんだけど、寝ようとしなくて。でも、私が側にいるよって言ったら──」
『あ、絵──』
『……絵名。』
「ま、まま、まふゆ!?」
起きてた、そりゃそうだ六時半だから。ログインしてた、いやそれは聞いてない!
『二人共、まだ作業してたんだ。それで、私がなんだって?』
「え、いや、別に……」
──心做しか、怒っているような気もする……。
私は先程までの勢いを完全になくしていた。言葉が自然と引っ込んでしまう。
「ご、ごめん、なんでもないかも」
『絵名、まふゆが言ってほしくないことは、あまり言わないほうがよかったんじゃ……』
「そうだよね、そうだけどそうだけど……!」
『私、別に絵名に安心して寝たわけじゃないから』
「はあ!?」
『だって、絵名だよ?』
「奏! こいつなんとかして!」
『え、絵名落ち着いて』
『じゃあ、学校あるから』
「あんた何しにログインしたのよ!」
ただでさえ冴えていた目が更に冴えた。全然作業ができる。本当に何をしに来たんだまふゆは……。
それより私の言っていたことは事実だ。実際その後すぐに寝ていた。
「……手も握ってきたくせに」
『ちょっと待って絵名、その話詳しく』
その後、腹いせに奏の質問攻めに答えたのは、まふゆには内緒の話。