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学校をサボったわけではない。体調が優れない気がしてセカイに来たのだ。歩いていると、一人でぶつくさと何かの本を音読しているまふゆの姿が。
「そんなに独り言言って、何して……」
からかってやろうと勢いよく向かうが、聞き慣れない外国語が聞こえてきて、私の足は止まった。
「え、英語……?」
その声に反応して顔を上げたまふゆが一瞬とても嫌そうな顔をしたが、気のせいだろうか。まふゆは答える。
「明日、単語の小テストがあるから」
「ふーん、なるほどね。あっなら、私が問題出してあげるわよ」
「いいよ非効率だし。あと集中したくてこっちに来たから」
と、まふゆは単語帳に目を向けてしまった。
それにムカついた。私の親切心を無駄だと言いたいのか。私の親切心を無駄だと……。
「まふゆ、ちょーっとそれ貸して?」
「……」
「何、ほら、貸しなさいよ」
「……」
「問題出し合ったほうが覚えやすいって言うでしょ?」
「はぁ……セカイに来るんじゃなかった……」
抵抗は無駄だと分かっているのか、そんなことを言いつつ、まふゆは私に単語帳を渡した。
ネットの記事で読んだことがある。問題形式の方が人は覚えられるらしい。あーあ、私がまふゆの役に立ってしまうな。
「じゃ、私が単語を読んであげるから、まふゆは意味を答えてね」
「分かったから早くして。六と七の単元だから」
「はいはーい。任せなさいって!」
さて、拒否したことを後悔させてやる。恥もかかせてやる。
さあ肝心の一番最初の単語は……?
「い、いんてるぷれぇと?」
「……発音良く言って。下に発音記号があるから」
「インテルプレェット」
「…………」
「…………」
「みせて」
なんだか駄目な気がしてきた。そういえば、私作業が進んでなかったなぁ。そろそろ戻らなきゃなぁ。
「あ、じゃあまふゆ、私はもう」
「interpret、ね」
「え、すご、口どうなってんの」
「ほら絵名、こっちに来て。教えてあげるから」
「あ、ハイ」
物凄い優等生の顔をされて呼ばれてしまった。宮女の女の子なら喜ぶんだろうな、でも私神高の女の子だから喜ばないんだよね。
「そういえば、今日学校はどうしたの?」
「あー、今日は何故か休みになって……別にサボりとかじゃないんだよ?」
「そうなんだ。なら、たくさん勉強できるね」
「ひぃ……!」
──まふゆ、小テストはの勉強はしなくていいの。
なんて、聞くことができなかった。どうせ毎日勉強してるし、満点を取って帰ってくるんだろう。
──ああ、こんな簡単なこと分かってたんだから、邪魔しなきゃよかったな。
すっかり優等生の彼女に、そんな後悔が積もり始めていた。