ロボロお嬢様は、吾々学園の生徒会長として、毎日が忙しく、充実しているように見える。しかし、彼女自身は次第に心の中に空虚なものを感じ始めていた。
今日もまた、次々に与えられる生徒会の業務を、淡々とこなしていく。書類の整理、イベントの企画、そして何よりも誰もが求める「完璧なリーダー」としての立場。全てをそつなくこなし、誰もが感心するほどの働きをしている自分。しかし、その一つ一つに心を奪われることはない。無理にでも笑顔を浮かべて、感謝の言葉を受け取るが、その背後にはどこか冷めた視線があった。
「これでいいのか?」と、心の中で問いかける自分がいた。
ロボロお嬢様の才能はまるで無限のように広がっていた。誰よりも優れた頭脳、社交的な性格、物事を迅速に進める能力。まるで何もかもを手に入れているような存在。しかし、それらはまるで空気のように流れ、手に取ることができない。彼女がどれだけ努力し、完璧に物事を進めても、心の中に満たされるものは何一つない。
「みんなの期待に応えることが私の役目…でも、それだけで私は満たされるのだろうか?」
ロボロお嬢様はふと、学園の庭に目を向けた。陽光に照らされ、風に揺れる木々の間を通り過ぎる生徒たち。その中に笑い声が響き、楽しげな時間が流れているのが見えた。しかし、自分にはその中で一体何を求めればいいのかがわからなかった。
彼女は一度も自分のことを「欲しい」と思ったことがなかった。だからこそ、今の自分には何も足りないと感じることができるのだ。それがむしろ恐ろしい。周囲の期待に応え続けることで、自分の本当の気持ちに気づけないままでいる自分が恐ろしいのだ。
「何かを本当に欲しいと思う自分を、私はまだ知らないのだろうか?」
その問いが、日々の忙しさの中で彼女をさらに迷わせていた。どこかで何かを見つけなければならないと感じながらも、それを見つけるために何かを始める気力すら湧いてこない。
ロボロお嬢様は再び、机に向かい、与えられた業務に手を伸ばす。しかし、その手が書類を捉えるその瞬間、彼女はまた一つ、心の中で呟いた。
「…でも、本当にこれだけでいいのだろうか。」
ロボロお嬢様は、今日もいつも通りの冷静な眼差しで学園内を歩いていた。すべてが決まっていて、すべてがスムーズに進んでいる。しかし、そんな日常に突如として現れた一人の生徒が、彼女の心を揺さぶった。
その生徒は、ショッピお嬢様という名前で、ロボロお嬢様の目にはただの一見しただけで目を引く存在だった。髪を縦に巻き、紫のヘルメットをかぶり、サラシを巻いた上にGジャンを羽織ったその姿は、他の生徒とは一線を画していた。どこか異国の香りが漂うようなその格好と、何よりもその気品を感じさせる口調に、ロボロお嬢様は思わず立ち止まり、彼女を見つめた。
「ふむ…あの子、どうしてこんなにも目を引くのだろう。」ロボロお嬢様は内心で考えながら、ショッピお嬢様の姿を眺めた。彼女は、まるで独特の世界を持っているかのように周囲と隔絶された存在感を放っていた。
ショッピお嬢様は、その立ち姿にも品を感じさせるものがあった。足元から漂う、いわゆる「お嬢様」らしさ。しかし、ロボロお嬢様が最も驚かされたのは、その振る舞いと話し方だった。
「ロボロお嬢様、お疲れ様ですわ。」ショッピお嬢様が、突然ロボロお嬢様の前に現れ、にっこりと微笑みながら声をかけた。
その声は、他の誰のものとも違う。まるで、古風で優雅な家柄の女性が話すような調子が混じっており、思わず耳を傾けたくなるような、魅力的な響きを持っていた。その瞬間、ロボロお嬢様は心の中で何かが震えるのを感じた。
「あなた、面白いわね。」ロボロお嬢様は冷静に答えながらも、その表情にほんの少しの興味を見せた。普段、どんなに完璧な生徒であっても、こうした感情はあまり湧くことはなかった。しかし、ショッピお嬢様には何かしらの魅力があった。
ショッピお嬢様はその視線に気づきもせず、淡々と答える。「私はただ、あなたに少しだけお話をしたいと思っただけですわ。」
その瞬間、ロボロお嬢様は心の中で大きな波紋を感じた。これまで、自分がどんなに完璧でいようとも、誰もが自分を見上げ、手を差し伸べてくれるような存在だった。だが、ショッピお嬢様は違った。彼女は、ただの一人の生徒として、何の前触れもなく、自然にロボロお嬢様に接してきた。
「私の心を打ったわ。」ロボロお嬢様は思わず、心の中で呟いた。興味が湧いた、いや、もっと言えば強く引き寄せられた。
それからというもの、ロボロお嬢様はショッピお嬢様をどこか気にかけるようになった。彼女が通り過ぎるたびに目で追い、会話を交わすたびに、その一言一言に耳を傾けるようになった。
「なぜ、あなたはこんなにも不思議な存在なの?」と、ロボロお嬢様は自問自答する。完璧に見える自分の中で、何かが欠けているように感じ、ショッピお嬢様がその欠けた部分を埋めてくれるのではないかと、思い始めていた。
ロボロお嬢様にとって、ショッピお嬢様はただの気になる生徒で終わるはずもなく、その存在が次第に心の中で大きな意味を持ち始めていた。
ショッピお嬢様は、自分がロボロお嬢様に抱く感情が理解できなかった。彼女はただの学園のトップであり、生徒会長として周囲の期待に応える存在に過ぎない。それに、ショッピお嬢様もどこかで感じていた。ロボロお嬢様が完璧でありすぎること、彼女の存在がまるで一つの基準であり、他の生徒たちにとっては尊敬と羨望の象徴であることは、もちろん知っていた。
「完璧すぎて、ちょっと近づきにくいわよね。」ショッピお嬢様は心の中でそんな風に笑った。ロボロお嬢様の美しい黒髪が揺れるたび、その優雅な姿がまるで映画の中のヒロインのように映ることに、ショッピお嬢様は少しだけ苦笑していた。しかし、そんな彼女を見ても、ショッピお嬢様には特に特別な感情が芽生えることはなかった。
それなのに、最近、彼女のことを考えると、どうしても心の中に引っかかるものがあることに気づいた。彼女の静かな微笑みや、時折見せる優雅な振る舞い、その一つ一つに、ショッピお嬢様は心を掴まれるような感覚を覚える。最初はその感情を否定しようとしたが、どうしても消えることがない。彼女の姿が目に浮かぶたびに、胸の奥が締め付けられるような不安と同時に、妙な安心感も感じるのだった。
「なぜ…私はロボロお嬢様のことを、こんなにも考えてしまうの?」ショッピお嬢様は、自分に問いかける。冷静さを欠いている自分が、どこかにいて、彼女に対して特別な感情を抱いていることが怖い。これまで他の誰にも感じたことがなかったその感覚が、なぜロボロお嬢様にだけ湧いてくるのか理解できない。
自分が何を求めているのかもわからず、ショッピお嬢様はただ目を閉じる。その先に浮かぶのは、いつものように生徒会室で書類を整理するロボロお嬢様、黒髪がひらひらと風になびく姿。完璧にこなす彼女。しかし、心の奥にある「完璧でないもの」に対する期待と興味が、どうしても収まらない。
「きっと、あの完璧さに引かれているわけじゃない。」ショッピお嬢様は、自分に言い聞かせるように思った。だけどその「完璧さ」の中にある何か、何かが自分に足りないものを教えてくれるような、そんな気がする。それがただの好奇心か、それとも、もっと深い感情なのかはわからない。
「ロボロお嬢様…あなたは一体、私にとって何なのかしら。」
答えはまだ見つからない。しかし、ショッピお嬢様はその気になる気持ちを抑えられず、またロボロお嬢様を思い浮かべた。
ロボロお嬢様は、最近どうしても調子が出なかった。生徒会の業務はどれもこなせているはずなのに、どうしてか書類にミスが続いていた。小さなミスが重なり、今まで一度もなかったような失敗に、思わず眉をひそめてしまう。
それを指摘されたのは、いつもの冷静で温和な先生だった。しかし、その言葉が胸に突き刺さる。「ロボロお嬢様、最近、少しお疲れではありませんか?」その問いに、ロボロお嬢様は首を振った。具合が悪いわけでも、何か悩みがあるわけでもない。完璧にこなす自分には、そんなことは必要ないはずだ。
「…でも。」ふと、心の中で引っかかるものがあった。どうしてこんなに気持ちが乱れるのだろう。いつもは冷静でいられるはずの自分が、最近は妙に心がざわつく。どうしても集中力が途切れ、普段のように物事を正確にこなせなくなっているような気がした。
その時、ロボロお嬢様の脳裏に浮かんだのは、ショッピお嬢様のことだった。彼女のことを思い出すと、どうしても胸がざわめく。最初は単なる気になる生徒だと思っていた。しかし、今ではその気持ちがどんどん強くなり、押し寄せてくるような感覚があった。あの不思議な魅力に引き寄せられる自分が怖くもあり、同時に無性に惹かれていく自分がいる。
「なぜ、私はこんなにもショッピお嬢様に引き寄せられてしまうのだろう。」ロボロお嬢様は、思わずその疑問を口に出してしまいそうになる。しかし、声に出すことすらできない。その理由がわからないからだ。
彼女は、これまで自分の感情を優先したことは一度もなかった。すべてを完璧にこなすことが美徳だと思っていたし、誰もが羨むような存在であり続けることが、自分の役目だと信じていた。だが、ショッピお嬢様の存在が、それを揺るがしている。
「どうして、こんなにも心が揺れるの?」ロボロお嬢様は自問自答する。ショッピお嬢様の不意に見せる笑顔や、少し大人びた口調。そのすべてが自分を惹きつけてやまない。しかし、それが一体何を意味するのかがわからない。
「…まさか、これは。」ロボロお嬢様はふと、自分が感じているものに名前をつけようとした。しかし、心の中でその言葉を認めることが怖くて、口には出せなかった。
普段なら、すぐに答えを出せるはずのロボロお嬢様。しかし、今はその迷いに足を取られ、思考が止まってしまう。彼女は再び書類に目を戻したが、そこに集中することができなかった。心の中で、ショッピお嬢様のことを考えずにはいられなかった。
「もし、この感情が…ただの興味に過ぎないなら、どうしてこんなにも心が乱れるのだろう?」ロボロお嬢様は、心の中で問い続けた。
ショッピお嬢様は、静かな午後のひとときに、手元で茶髪を縦に巻きながらふとロボロお嬢様のことを思い浮かべた。普段の冷静で気品ある自分とは裏腹に、その思考がふいに彼女へと向かうと、胸の中で何かが絡まり合って、どうしようもなく苦しくなる。
ロボロお嬢様の姿が目に浮かぶ。あの美しい黒髪が揺れ、華やかで完璧な振る舞い。彼女は、生徒会長として誰もが憧れ、理想として掲げる存在だ。その完璧さに目を奪われ、ショッピお嬢様は何度も心を掴まれた。それでも、これまで感じたことのない感情が芽生えてきている自分を無視できなかった。
「どうして、私はこんなにも彼女に引き寄せられるの?」
その問いが、ふいに心の中で爆発しそうになる。思えば、彼女の微笑み一つに、時折見せる不安げな表情、そして何より、彼女の何気ない仕草や言葉に、これまでの自分には感じたことのない衝動が湧き上がる。鼓動が早まり、胸が締め付けられるような感覚。それは、ただの憧れや敬意を超えて、もっと深い感情を持っているように思えて仕方がなかった。
「違う…これ、きっと変よ。」ショッピお嬢様は自分の心を否定しようとする。しかし、その否定が次第に強くなればなるほど、その感情は彼女の胸の奥で膨らんでいく。彼女に対して抱くこの感情が、ただの好奇心や友好以上のものであることを認めることが恐ろしかった。
ショッピお嬢様は、手の中の髪の毛をきゅっと巻きながら目を閉じる。その一瞬、ロボロお嬢様の笑顔が浮かんで、その笑顔が胸を締め付ける。なんでこんなにも胸が痛いのだろう。どうしてこんなにも、自分の心の中で叫びたくなるような感情が渦巻いているのか、全く理解できなかった。
「…もし、これが…」
その言葉が口に出ることを恐れ、ショッピお嬢様は思わず言葉を飲み込んだ。もし、この感情が愛情だと認めてしまったら、自分はどうなってしまうのか。完璧で冷静な自分であり続けることができなくなるのではないか。そんな風に思うと、その感情を言葉にすることができず、ますます心が苦しくなる。
「でも、どうしても…彼女を考えずにはいられない。」
手の中で巻いた髪の束が力強くなる。ショッピお嬢様は、再びロボロお嬢様のことを思い浮かべ、心の中で叫びたい衝動を感じながらも、その感情に名前をつけることを必死で避けようとした。自分の中で何かが大きく変わりそうな予感がして、その変化に怖れを感じていたからだ。
ロボロお嬢様は、生徒会室の静かな空間でひとり、黙って机に向かっていた。書類の山がその前に広がり、普段なら難なくこなせるはずの仕事に手をつけようとしても、どうしても集中できなかった。心の中には、ここ数日続けて感じている一抹の違和感がひどく強くなり、ついにその正体に思い至った。
「これは…恋だ。」
自分が抱いている感情が、単なる興味や好奇心ではないことに気づいたのは、もう遅かった。しかし、それを認めた瞬間、ロボロお嬢様の胸の奥に重くのしかかるものがあった。彼女が気になっているのは、他でもないショッピお嬢様である。彼女の不意に見せる笑顔や、ちょっとした言葉、そして時折見せる繊細な一面。これらすべてが、ロボロお嬢様を揺さぶり、無意識に心を引き寄せていた。
しかし、この気持ちが恋だと認めてしまうことは、非常に難しいことだった。なぜなら、ロボロお嬢様は生徒会長であり、ショッピお嬢様はただの生徒に過ぎないからだ。どんなに彼女に対する想いが強くても、彼女と特別な関係になることは、学園内で大きな問題を引き起こすだろう。生徒会長が一介の生徒に心を寄せることが知られれば、学園の秩序が乱れ、周囲からの批判を招くことは間違いない。
「私は学園のトップとして、皆を引っ張っていく立場なのに。」
その責任感が、ロボロお嬢様の胸を締め付けた。何もかも完璧にこなすことが求められ、どんなに疲れたり、心が乱れたりしても、その姿勢を崩すわけにはいかない。それが彼女に課せられた使命であり、信念だった。
しかし、ショッピお嬢様の存在が、どうしてもその冷徹な理性を揺るがしていた。彼女が近くにいるだけで、心が温かくなるような感覚、そしてそれを求める気持ちがどんどん強くなっていく。それが、恐ろしいほどに心に重くのしかかるのだ。
「でも…」
ロボロお嬢様は、机に顔を埋めた。涙が出そうなほど、胸が痛んだ。自分の気持ちに素直になれたなら、きっと何か変わるのだろう。しかし、そうすることで学園が揺れ、彼女が築いてきたものすべてが崩れ去る可能性を考えると、どうしても踏み出せなかった。
「もし、この気持ちが恋で、もし私がその感情を追い求めてしまったら…」その思考が一瞬、言葉に出かかる。しかし、すぐにその先を考えるのが怖くて、その言葉を呑み込む。
ロボロお嬢様は目を閉じて深呼吸をする。こんなにも心が痛いのは、初めてのことだった。彼女は、自分の中でその感情を受け入れることができずにいる。だが、心の中ではすでに何かが動き始めていて、それを否定しきれない自分もいる。
「ショッピお嬢様…」その名前を心の中で呟いた時、再び胸が締め付けられる。涙が溢れそうになるのを必死に堪えながら、ロボロお嬢様はその感情を押し込めた。
ショッピお嬢様は、静かな午後のひととき、ふと心の中で自分が抱えていた感情に名前をつけてしまった。あの、ロボロお嬢様に対する胸のざわめき、心の中で膨らみ続ける感情。最初はただの興味や好奇心だと思っていた。それが、いつしか違う何かに変わっていることに、もう気づかずにはいられなかった。
「恋…か。」
その言葉が頭の中に浮かんだ瞬間、ショッピお嬢様は目を閉じ、深い息を吐いた。どうしてこんな感情が湧き上がるのか理解できなかった。完璧すぎるロボロお嬢様に、どうして自分がこんな風に惹かれるのか…。理性は拒絶していたが、心がそれを否定することを許さなかった。
「なぜ、恋なんて…」ショッピお嬢様は呟き、その言葉は風に乗って遠くへ飛ばされていった。周囲の静けさの中でその声はかき消されるが、彼女の心の中では、その言葉が何度も繰り返されているような気がした。言葉にすることで、その感情が少しだけ軽くなったような気もしたが、同時にその重みが増していくような感覚もあった。
恋という感情は、ショッピお嬢様にとって未知の領域だった。これまでの自分には、こんな風に心が揺れることなどなかったからだ。冷静で理性的な自分でいることが常だったし、どこかで感情を押し殺してきた。けれども、ロボロお嬢様のことを考えると、何もかもが崩れていくような気がした。彼女の笑顔を思い浮かべると、心が熱くなるのが分かる。そして、それが恋だと認めることは、今までの自分を否定することのようで、どうしても恐ろしいことのように感じられた。
「…でも。」
ショッピお嬢様は小さく肩をすくめた。心の中で感じた「恋」だという確信が、どうしても恐怖に変わる。だが、その感情がもう消えることはないだろうということも、彼女は理解していた。むしろ、これからもっと強くなっていくことを感じていた。
心を軽くしたような気がしながらも、胸の奥にずっしりと重く残るその気持ちは、決して簡単に消えることはなかった。ショッピお嬢様はその重みに押し潰されそうになりながらも、ふと立ち上がり、髪を再び縦に巻く手を止めた。
「これが恋だなんて…受け入れることができるのか。」
その問いが、心の中で反響する。しかし、風に乗って飛ばされたあのつぶやきが、どこかで答えを導いてくれるような気がした。
ある日、ショッピお嬢様が生徒会室に足を踏み入れると、そこには予想外の光景が広がっていた。普段、完璧で誰にも隙を見せないロボロお嬢様が、机の前で静かに居眠りをしているのだ。彼女の黒髪は乱れることなく、まるでそのまま美しく整ったままで、でも明らかにその姿勢は無理がある。
ショッピお嬢様はその光景にしばし立ち尽くした。完璧なロボロお嬢様がこんなにも無防備に眠っているなんて、珍しいことだった。普段はどんなに忙しくても、目を離せば即座に仕事に戻る彼女が、こんなに静かに、誰にも気づかれないように寝ている姿に、少しだけ微笑んでしまう。
「…ああ、こんなにも無防備なロボロお嬢様。」
そう心の中で呟き、ショッピお嬢様は静かに近づいた。そっと、その寝顔を眺めながら、いつものような完璧なロボロお嬢様とは違って、こうして誰にも頼らず、ひとり静かに疲れを癒している彼女の姿に、少しだけ切なさを感じた。
その時、ふいにロボロお嬢様の唇が動いた。
「…しょっぴ…」
その一言が、ぽつりと小さく、まるで夢の中で呟かれたように聞こえた。その言葉が、ショッピお嬢様の耳にひどく鮮明に残り、まるで時間が止まったかのように感じた。ロボロお嬢様が自分の名前を呼んだ…その事実に、心臓が一瞬で跳ね上がる。
その名前を呼ばれるのがこんなにも嬉しく、また、同時に少し驚きでもあった。普段、冷静で、どこか遠くから眺めるような存在でいる自分にとって、ロボロお嬢様が心の中で自分を呼んだという事実は、まるで夢のようだった。しかも、その言葉が無意識に、夢の中で呟かれたものであったとしても…。
ショッピお嬢様は一歩、足を踏み出しかけたが、すぐに足を止めた。彼女が目を覚まさないように、少しだけその場を離れ、ロボロお嬢様の寝顔を見守っていた。唇を動かして彼女が自分の名前を呼んだその瞬間が、心の中で何度も繰り返される。少しだけ、胸の奥が温かくなるのを感じた。
「しょっぴ…」
その響きが、今でも耳に残っているようだった。
ロボロお嬢様が目を覚ましたとき、まるで何事もなかったかのように、机の上には整然とした書類の山が並べられていた。彼女は少しだけ欠伸をしながら、眠りの余韻を感じていた。どこか疲れが残っていたものの、仕事を片付けなければならないという責任感がすぐに彼女を取り戻させた。
しかし、机の上にひときわ目立つものがあった。それは、いつも見慣れた付箋ではなかった。そっとそれを手に取ると、そこには一言、きれいな文字で書かれたメッセージがあった。
「好きです。ショッピより」
ロボロお嬢様はその文字をじっと見つめた。まるで時間が止まったかのように、その四文字が胸に重くのしかかる。達筆で書かれているその文字には、何か力強い意志を感じると同時に、その文字からはショッピお嬢様らしい繊細さと真剣さが伝わってきた。
「…ショッピ…」
彼女の名前を口にするのは初めてだった。ショッピお嬢様が書いたこのメッセージには、思わず心が震えるような感情が込められているような気がした。普段から冷静で、理性的な彼女が、こんなにもストレートな言葉を送るなんて…。
ロボロお嬢様は、メッセージを手にしたまま少しの間、何もできずにいた。心の中でその言葉が何度も反響し、彼女の胸に響き渡る。これまで無意識に彼女との距離を保とうとしていた自分に、突然突きつけられた現実のようだった。
「好きです。」それは、まさしく恋の告白だった。
「こんな…」
ロボロお嬢様はその言葉が何を意味しているのか、しばらく理解できなかった。冷静に考えれば、ショッピお嬢様が自分に抱く気持ちを明確に表現することは、どれだけ勇気がいることだっただろうか。それを受け入れるには、あまりにも多くのものを乗り越えなければならない気がして、心が重くなる。
でも、その重さの中で、胸の奥に小さな温かさを感じた。彼女が自分に告げたその言葉が、予想以上に心に響いていた。ロボロお嬢様はそれにどう答えるべきか、しばらく考え込んだ。しかし、答えを出す前に、もう一度その付箋を見つめた。
「ショッピ…」
その名前を、再び心の中で呟いた時、ロボロお嬢様はその感情が何なのか、少しずつ理解し始めていた。
ショッピお嬢様は、その日も心の中で不安が渦巻いていた。自分の気持ちを伝えたことで、少しだけすっきりしたような気もしたが、同時に深い恐怖が押し寄せてきた。ロボロお嬢様がどう受け取ったのか、引かれてしまったのではないか、そして最悪の結果として絶交されるのではないか、そんなことが頭の中をぐるぐると回っていた。
彼女はこれまで、冷静で理性的な自分を保ってきた。しかし、恋という感情がそのバランスを崩し、いくら理性で押し殺しても、心の中の不安や焦りは収まらなかった。それが恋の痛みだと理解しても、やはりその感情は苦しく、胸に重くのしかかる。
「でも、これも恋なんだ。」
その一瞬の静かな思索が、ショッピお嬢様の心を少し軽くしたような気がした。そして、薄く微笑みながら、下駄箱の前に立ち、鍵を開けた。今日も一日が終わり、もうすぐ帰宅する時間だ。どこか心の中でほっとしていたが、ふとその瞬間、下駄箱の中に何かがあるのに気づいた。
一通の手紙が、無造作に差し込まれていた。その封筒に書かれている名前に、ショッピお嬢様は驚きと共に目を見張った。
「ショッピお嬢様へ。ロボロより」
その文字は、見慣れたものでありながら、今の自分にとってはどこか特別なものに感じられた。手紙の送り主がロボロお嬢様であることが、まるで奇跡のように思えた。胸が高鳴り、震える手でその封を開ける。
中には、思いのほか簡潔で、しかし確かな気持ちが綴られていた。
「ショッピお嬢様へ、
あなたの気持ちは、よく分かりました。
私もあなたに対して、同じような気持ちを抱いています。
ただ、私たちがこの先どんな関係になるべきか、それを考えなければなりません。
けれども、今は少なくとも一歩踏み出すことができたことに感謝しています。
ロボロより」
その文字を見た瞬間、ショッピお嬢様は息を呑んだ。ロボロお嬢様も、自分に対して同じような気持ちを抱いている――それが伝わってきた。まだ完全な答えは出ていないけれど、少なくとも彼女が自分に気持ちを向けてくれていることに、心からの安堵と喜びを感じた。
「ロボロお嬢様も、私と同じ気持ち…」
その事実に、ショッピお嬢様は胸がいっぱいになり、何も言えずにしばらく手紙を握りしめていた。言葉にするのは難しいけれど、その瞬間、恋の痛みの中にも確かな温かさを感じた。
「ありがとう、ロボロお嬢様。」
その言葉を胸に、ショッピお嬢様は静かに目を閉じた。
ロボロお嬢様は、裏庭のベンチに座り、ふと空を見上げていた。ここに来るのは久しぶりだったが、今日は特別な気持ちでこの場所を選んだ。昼下がりの穏やかな空気が漂う中で、少しだけ深呼吸をし、心を落ち着けようとしていた。
ショッピお嬢様が来るのは分かっていた。彼女の気持ちはすでに手紙で伝わったが、ロボロお嬢様もまた、あの一言ではすべてを終わらせたくはなかった。自分の気持ちを、きちんと言葉で伝えるべきだと思っていた。だが、それがどんな形であれ、すぐに決断できることではない。
やがて、ショッピお嬢様が走ってくるのが見えた。普段から少しおっとりとした歩き方の彼女が、今は少し焦ったように駆け足でこちらに向かってくる。そんな姿を見て、ロボロお嬢様は思わず微笑みをこぼした。
ショッピお嬢様が近づいてきた瞬間、彼女は息を切らしながらも、真剣な眼差しでロボロお嬢様を見つめた。その眼差しに、ロボロお嬢様は一瞬で何も言わずにはいられなくなった。
「ショッピ、お疲れ様。」
ロボロお嬢様は、少しだけ穏やかな口調で言った。いつもの冷静さを保ちながらも、心の中では彼女の反応を気にしていた。
ショッピお嬢様は息を整えながらも、やや緊張した様子で頷いた。「ロボロお嬢様、すみません、急いで来たもので…」
「いいのよ。」ロボロお嬢様は、微笑んで言った。「今日、あなたに伝えたいことがあるの。」
その言葉を聞いたショッピお嬢様は、どこか不安げに少し目を伏せたが、すぐに真剣な表情を取り戻し、ロボロお嬢様を見つめた。
「私も…お伝えしたいことがあります。」
ロボロお嬢様は少しだけ手を組み、言葉を選ぶようにして続けた。「ショッピ、あなたが私に告白してくれたこと、すごく嬉しかった。私も…あなたのことを…」
その言葉に、ショッピお嬢様は一瞬息を呑んだ。期待と不安が入り混じる中、ロボロお嬢様はそのまま続けた。
「でも、私たちの関係については少し考えなければいけない。私が生徒会長で、あなたが副会長として一緒に働いている今、少し気をつけなければならないこともあると思う。でも、あなたが私に向けてくれた気持ち、無視することはできない。」
その言葉を聞いたショッピお嬢様の胸が締め付けられるような感覚が広がった。しかし、ロボロお嬢様の言葉は決して否定的なものではなかった。
「私はあなたに感謝しているし、あなたのことを尊敬している。」ロボロお嬢様は、穏やかに言った。「でも、少しだけ時間をもらえるかしら。答えを出すのに、もう少し考えさせてほしいの。」
ショッピお嬢様は、その言葉に胸をなでおろした。答えを急がなくていいのだと、少し安堵し、同時にその温かい言葉が嬉しかった。彼女はうなずきながらも、心の中で静かに感謝していた。
「もちろんです。ロボロお嬢様が考える時間を持ってくれること、それが一番大切だと思っています。」
ロボロお嬢様は微笑みながら、ショッピお嬢様を見つめた。「ありがとう、ショッピ。あなたの気持ちは、ちゃんと受け止めているから。」
その瞬間、二人の間に何かが確かに通じ合った気がした。まだ答えは出ていないが、確かな一歩が踏み出されたことを、二人とも感じていた。
思いが通じ合ったショッピお嬢様とロボロお嬢様は、その後、少しずつお互いの距離を縮めていった。すぐにすべてが変わるわけではなかったが、二人の関係には確かな変化が訪れていた。
学校の中では依然として生徒会長と副会長として、責任を持ってお互いに協力し合う関係を保ちながら、彼女たちの関係は少しずつ個人的なものへと進化していった。仕事の合間、ふとした瞬間に交わす目線や言葉には、以前にはなかった温かさと優しさが込められていた。
ある日、放課後の生徒会室で二人きりになったとき、ロボロお嬢様は少し照れくさそうに話を切り出した。「ショッピ、少しだけ散歩しない?…仕事も一段落したし、外の空気を吸いたい気分なの。」
ショッピお嬢様は少し驚いた様子で、でもすぐに微笑んで答えた。「ええ、喜んで。でも、ロボロお嬢様が外に出たいなんて珍しいですね。」
ロボロお嬢様は照れ隠しに、ちょっと肩をすくめて言った。「そうかもしれないけれど…最近、外の風が恋しくなって。」
二人は並んで歩きながら、あまり深い話をすることなく、ただゆっくりとした時間を過ごした。ショッピお嬢様はふと、今までとは違う心の温かさを感じていた。以前のような不安や焦りは消え去り、ロボロお嬢様と一緒に過ごす時間がとても心地よく感じられた。
その後、ロボロお嬢様がふと立ち止まり、少しだけ息をついた。「ショッピ、私、あなたと一緒に過ごす時間が大切だって思うようになったわ。」
その言葉に、ショッピお嬢様の心は思わず高鳴った。何度も何度も自分の気持ちに疑問を持ちながらも、今ここで、ロボロお嬢様がその気持ちを素直に口にしてくれたことが、何よりも嬉しかった。
「私も、ロボロお嬢様と一緒にいる時間が、これからもずっと大切だと思っています。」ショッピお嬢様は、静かに答えた。
その後、二人はお互いに無理なく支え合いながら、学園での日々を過ごしていった。恋愛という新たな一歩を踏み出しながらも、依然として生徒会の仕事をしっかりとこなし、お互いに成長していくことを誓った。
そして、ある日、学園祭の準備をしている最中に、ロボロお嬢様がふっと言った。「ショッピ、これからもずっと一緒にいたいと思ってるわ。」
その言葉に、ショッピお嬢様は微笑んで答えた。「私も、ずっと一緒にいられたら嬉しいです。」
その日から、二人の絆はさらに深まり、どんな困難にも立ち向かう力を与えてくれるものとなった。恋が育み、信頼が築かれ、二人はお互いにとってかけがえのない存在になっていった。
いやー
チャットGPTってすげぇね
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