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かんな
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寿命㌫(主) 🔮🖤ᩚ
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家に帰ってきたイソトマは、リリーの靴とベンチで拾ったノートを眺めていた。
「一日で探し物と調べ物ができた」
しかも一つは、あまり良い予感がしない。
「僕の予測、外れると良いんだけど」
一人ぼやいて、イソトマはベッドにコロンと横になった。
(気分転換しよう。こういう時はBLに限る)
昼に拾ったノートを開いて、また読み耽った。
「やっぱり最高……」
悦に浸りながら、何度もノートを読み返した。
――次の日。
イソトマはノートを持って、中庭のベンチに向かった。
朝だからさすがに人はいないと思っていたのだが。
(いる。人がいる)
思わず、物陰に隠れた。
(小柄で眼鏡をかけた庶民っぽい少年だ)
如何にも小説を書きそうな顔をしていると、先入観で思った。
少年は、ベンチ回りを必死に見て回っている。何かを探しているようだ。
イソトマは心を決めて、物陰から出た。
「ねぇ、君」
「ひぃいぃ!」
漫画かと突っ込みたくなるほど、お約束の驚き方をして、少年が飛び上がった。
「お、驚かせて、ごめんね。何か探しているのかなと思って」
「はわわ……イソトマ様」
イソトマはこの少年を知らないが、少年はイソトマを知っているようだ。
それも、珍しいことではない。
ある意味で有名人だから学園でイソトマを知らない人のほうが少ない。
「探し物、してる?」
「え! えっと、はい! あの、このくらいのノートを」
ピンと背筋を伸ばして、少年が答えた。
(やっぱり、この子だ!)
イソトマは前に出て、少年の手を握った。
「お会いしたかったです、先生!」
「えぇ?! 何ですかそれ怖いですひぃ!」
少年が泣きそうな顔でイソトマに手を握られている。
引っ込めたいが引っ込めるのも怖い、といった顔だ。
イソトマは、おずおずとノートを差し出した。
「それ! 僕のノート、どうしてイソトマ様が」
「ごめんなさい! 読んでしまいました」
イソトマは、深々と少年に頭を下げた。
「昨日のお昼、ベンチで休んでいる時にたまたま見付けて。出来心でページを捲ったらびー……男性同士のロマンス小説で、一気読みして悦って……持ち帰って昨日の夜も読み悦りました!」
受け取ったノートを胸に抱いて、少年が震えている。
「いけないことだとは、思ったんだけど。読んでいたら主人公二人の顔まで浮かんできて、思わず絵まで描きました。ごめんなさい」
「え? 絵って……イラスト?」
「はい、そうです」
気が付いたらうっかりノートの余白に描いていた。
破る訳にもいかず、そのまま持ってきた。
ノートを開いた少年が、ひっと悲鳴を飲み込んだ。
「その……ペンで塗り潰してくれていいので。破りしててもいいし……本当に、ごめんなさい」
シュンと俯くイソトマの手を、少年が握った。
「え? あの……」
「これをイソトマ様が描かれたのですか?」
「うん、描いた……」
イラストを見詰める少年が、固まった。
「えっと……」
「うっ」
嗚咽に耐えるように、少年が口元を抑えた。
「えっ! だ、大丈夫……?」
苦しそうに見えるが、少年の目が輝いている。
(何だろう、この表情は既視感がある)
オタクが尊いとか言い出す直前の顔に似ている。
「もっと色々、描けたりするんですか?」
少年の鋭い目が、イソトマに向いた。
本気の瞳に、気後れする。
「え……っと、もっと色々、とは?」
「カラーとか、挿絵とか表紙とか」
「描けるけれども」
少年がイソトマの手を両手で握った。
体当たりする勢いで向かってきた。
勢いが強すぎて、転びそうになった。
「失礼を承知で打診します。気に入らなければ断罪してください。僕と本を作りませんか?」
少年が、とても早口で話した。
「イソトマ様って、近付いたら死ぬレベルで怖い人だと思ってました。でもお話しできるし、何よりめちゃめちゃ絵が上手いし。ここまで描ける人、初めて会いました。この機を逃したくない!」
少年が、どんどん早口になる。
(あ、わかった。この子、僕と同じ人種だ。オタクなんだ)
オタクの探求心は、時にリスクを蹴り飛ばす。
学園で一番怖い貴族様相手でも、絵を見た瞬間にすべて吹っ飛んで欲求が勝る。その感覚は、誰より理解できる。
「僕で良ければ、是非」
だから答えは一択、イエスだ。
何故なら、イソトマがオタクで、この少年がオタクだからだ。
「ほ、本当ですか!」
少年の小さな背が、ピンと伸びた。
「君のお話、とても面白かったから。一緒に本を作れたら、凄く面白そうって思う」
少年の顔が、ぱぁっと明るくなった。
「最高の一冊、作りましょう!」
少年が、イソトマの手を強く握った。これは完全にオタクハイだ。
「ねぇ、君の名前を教えて」
少年が、我に返った顔をした。
「あ……すみ、すみません。僕、名乗りもせずに勝手なことを」
「勝手じゃないよ、嬉しかったよ。だから名前が知りたいんだ」
少年がイソトマを見詰めて、目を輝かせた。
「僕の名前はアルエ=トーナンです。イソトマ様の一つ下の学年です」
「よろしく、アルエ。一緒にオタ活……最高の一冊、作ろう」
「はい、喜んで!」
二人は今度こそ、固く握手を交わした。
かくしてイソトマは、学園に入って初めてオタク友達を得た。
この出会いが、イソトマの今後の人生を大きく変えることになる。
コメント
1件
いやもう最高すぎた……!!😭💕 イソトマがノートの主・アルエに会って「お会いしたかったです、先生!」ってなるシーン、尊すぎて叫んだわ!!✨ しかも絵を見て「本を作りませんか?」ってオタクの探求心で恐怖すら蹴り飛ばすアルエの勢い、めっちゃ共感したよ…!これから二人でどんな一冊が生まれるのか、もう待ちきれないよ〜!!🌸📖