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無言で校内を歩き、外へ出た私たち。
裏門を出ると、すぐ側に律の車が停まっていた。
律は素早く鍵を開け助手席のドアを開くと私を席に着かせ、少し乱暴にドアを閉める。
そして運転席に律が座ると、すぐに車を発進させた。
いつになく荒々しい運転をする律。
「……り、律……」
「ん?」
怒っているのか、ものすごく機嫌の悪そうな彼に恐る恐る声を掛けた私に、苛ついた様子ながらも聞き返してくれる律。
「……あ、あの……」
私が言葉を続けようとすると、人も車通りも少ない高架下に突如車を停めた律は、無言で顎を持ち上げると、私の唇を塞いできた。
「――!?」
そして、
「……ん、は……ぁ、っんん」
何度も角度を変えながら激しいキスが繰り返される。
「……り、つ……」
一、二分程経ったのだろうか、解放された私は荒い息遣いで律の名を呼んだ。
こんなに激しくキスされたのは初めてで、すごく戸惑ってしまったけど、嫌では無くて、寧ろ、もっとしていたいと思ってしまう。
「アイツにキス、されたのか?」
律の質問に、弱々しく首を横に振る。
「どこ触られた?」
頬や唇、首筋に鎖骨と触れられた所を思い出しながらゆっくり指差すと、律の骨ばった指がその場所へ這っていく。
「……っ!」
新田に触られた時とは違って恐怖心はないけど、恥ずかしさとくすぐったい感覚で身体がピクリと反応した。
「あんな奴に隙を見せるな。俺が居なかったらどうなってたか分かるだろ?」
そして、今度は優しく髪を撫でてくれる律に、
「……り、律は、どうして?」
あの時、教室まで来た律の行動を不思議に思っていた私が問い掛けた。
「着いた時、校門近くに車停めてお前に連絡しようとしたらアイツが校舎に入ってくのが見えてな。勝手に入るのはどうかと思ったが、何となく嫌な予感がしたから裏門に停め直して入ってみたら案の定……って訳だ」
「……そう、だったんだ……」
律の言葉を聞いて私は身震いした。
だって、あと少し遅かったら、私は新田に何されていたかを考えると、怖くて怖くて堪らなくなってしまったのだから。
私は反射的に律の服をキュッと掴む。
「もう怖い事はねぇから安心しろ。ったく、しかしアイツとんでもねぇな……とにかく、アイツに隙見せるな。 二人きりにもなるな。 いいな?」
律の表情はいつになく真剣で、こんなにも心配されている事がどうしようもなく嬉しかった。
「……うん」
「よし、良い子だ。んじゃ帰るか」
車内の空気は先程までと一変して穏やかなものになり、私の頭をポンと撫でた律は再び車を走らせた。
私は、すごく恐い思いをしたけど、それは決して無駄ではなかったと思った。
だって、律がこんなにも心配してくれたのは初めてだったから。