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#うちはイタチ
琴葉つきね
979
#コメントいっぱい頂戴!
火の国と風の国の国境にほど近い、断崖絶壁に囲まれた小さな集落——「たつまきの里」。
ここでは年中、耳を裂くようなヒューヒューという突風が吹き荒れている。火の国とは名ばかりで、土地は痩せ、木ノ葉隠れの里のような華やかさとは皆無の場所だった。
「アカネ! ぼさっとしてんな、風が来るぞ!」
幼馴染の少年が叫ぶのと同時に、アカネは身を低くして岩の陰に飛び込んだ。
直後、刃物のようなかまいたちが頭上をかすめ、固い岩肌をガリリと削り取る。
「ふう……危な……」
たつまきアカネ。
真っ赤な短い髪と、風で乾燥した皮膚。それがこの極小の一族に生まれた彼女の全てだった。
たつまき一族は、忍の世界では名もなきマイナーな一族だ。
「チャクラ」と呼ばれる体内エネルギーを使って風を操る術を得意とするが、木ノ葉隠れの「うちは」や「日向」のような華々しい血継限界(特殊な血統能力)があるわけではない。ただただ、荒れ狂う風の谷で生き残るために、身の丈に合った小さな風術を細々と受け継いできただけだ。
アカネ自身も、「世界」の広さを何も知らない。
木ノ葉隠れというでかい忍の里があることや、そこに「火影」と呼ばれる凄い忍がいるらしいということは噂程度に聞いたことがあるが、彼女にとっての世界とは、この吹きすさぶ谷と、今日食うための泥臭い任務だけだった。
「アカネ、今日の獲物はどうだ?」
「山ウサギふたつ。……でも、谷の向こう側に見たこともない格好をした忍がいたよ。額に『木の葉のマーク』がついた鉄板を巻いてた」
「木ノ葉の忍か……関わるなよ。俺たちみたいな弱小の一族は、大国の忍に巻き込まれたらあっという間に吹き飛ばされるんだからな」
「わかってるよ」と答えながら、アカネは己の掌を見つめる。
小さなチャクラを練ると、手のひらの上で小さなつむじ風がクルクルと回った。
(もっと強い風を起こせたら、この谷の外の景色を見に行けるのかな……)
大国の思惑や、忍世界の歴史の闇なんて、アカネは何も知らない。
ただ生きるために風を読み、生きるために走る。
マイナー一族の少女が、忍の荒波に呑み込まれていくとも知らずに——。
谷の平穏は、突如として破られた。
「グハッ……! なんだ、あいつらは……!?」
たつまきの里の境界線。血を流して倒れる里の大人たちの前に立っていたのは、不気味な面をつけた数人の忍たちだった。大国の暗部か、あるいは流浪の抜け忍か。彼らの狙いは、この辺境の谷を抜け道として利用すること、そして邪魔な集落を「口封じ」に消すことだった。
「チッ……こんな辺境にまで忍の争いが流れてくるなんて……!」
アカネは傷ついた幼馴染を庇い、苦無(くない)を構える。だが、敵のチャクラの威圧感は段違いだ。圧倒的な強者。一瞬で殺されると、身体の全細胞が悲鳴をあげていた。
「風遁の術か。貧相なチャクラだな、ガキ」
仮面の忍が冷酷に手をかざす。激しい火遁の炎が、アカネたちを呑み込もうと迫る。死が視界を覆ったその瞬間——アカネの頭の中で、幼い頃に長老から固く口止めされていた「一族の教え」が激しく警鐘を鳴らした。
——アカネ、良いか。我ら『たつまき』の真の力は、風を呼ぶにあらず。自らが風の龍となることなり。だが……あれは体を蝕む忌みし術。決して軽々しく使うでない——
(死んでたまるか……!!)
アカネは印を結ぶ。普通の忍術とは違う、体内のチャクラを逆流させ、全身の血を極限まで滾らせる特殊な練気。
「秘術——……竜人化(りゅうじんか)!!」
ゴオオオオオッッ!!
次の瞬間、アカネを中心に暴風が爆発した。
迫る炎を吹き飛ばし、凄まじい風圧が周囲の岩壁を削り取る。
「なに……!? チャクラの質が変わった……!?」
仮面の忍たちが息をのむ。
風の渦の中から現れたアカネの姿は、変貌していた。
真っ赤だった髪は逆立ち、背中からは風のチャクラで形成された半透明の龍の翼が広がる。両腕は風の刃で織り上げられた漆黒の鱗に覆われ、指先は鋭い龍の爪へと化していた。
目元には龍を思わせる朱色の紋様が浮かび上がり、その瞳は鋭い縦裂きの獣眸へと変わっている。
「ガ、アアアアッ……!!」
全身を駆け巡る猛烈な痛みに、アカネは叫ぶ。
原作の知識など何もない。ただ、己の中に目覚めた「龍」の衝動が、眼前の敵を喰らい尽くせと叫んでいた。
「な、なんだこのガキは……ただの辺境の一族じゃなかったのか!?」
「疾い……!?」
次の瞬間、アカネの姿が消えた。
ドォン!!と音速を超えた風切り音だけを残し、アカネは竜人化の圧倒的な脚力と風の推進力で空間を跳躍。仮面の忍の一人の懐へ一瞬で肉薄する。
「風遁・龍爪斬(りゅうそうざん)!!」
風の刃を纏った爪が一閃。
大国の忍すら圧倒する暴力的な風の圧力が、谷全体を揺るがした——。
火の国の辺境、たつまきの里付近で任務を行っていたミズキ率いる木ノ葉小隊。
そこでミズキは、異様な暴風を巻き起こして敵を打ち破るアカネの「竜人化」を『白眼』で目撃する。
「な……なんだ、あのチャクラの異彩は……!? 人柱力(尾獣)でもない、聞いたこともない一族のガキが……」
白眼で見つめると、アカネの体内ではチャクラが龍の形を模して狂暴にうねっている。
洗練された木ノ葉の術体系からはあまりに逸脱した「異端の術」に、ミズキは強い不快感と、腹の底から湧き上がるような危機感を覚える。
一方、アカネにとってもミズキは不快そのもの。
「何その気取った目! 泥だらけになって戦ったこともないくせに、上から目線で人のチャクラ見てんじゃないよ!」
「泥臭い野蛮な術ですね。洗練というものを知らない辺境の一族が……」
「なんだとコラ! その澄ました顔、風で吹き飛ばしてやる!」
こうして、木ノ葉のエリート天才少年・ミズキと、辺境の泥臭い竜人少女・アカネの、血と風が吹き荒れるライバル関係が幕を開ける——。
コメント
1件
うわっ、めっちゃ熱かった……!🔥 アカネの竜人化、ビジュアルが想像するだけでかっこよすぎる……風の翼とか鱗とか、もう完全に龍になってるし。それでいて「体を蝕む」って代償があるのが、なんか重くてぐっと来た。 ミズキとの対比もいいよね。エリートと泥臭い辺境の少女、絶対ぶつかるでしょって感じで、この先どうなるか気になる……🫣 続き、読みたいです。