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「はい。透子。とりあえず先にいつものね」
ご飯を出してくれる前に、先に美咲がいつもの飲み物を出してくれる。
「サンキュー美咲」
そう。私は気楽にこうやって居心地いい場所があれば今はそれでいい。
「それ、新しい恋愛のカタチ?」
すると、少し離れたカウンターの席から聞こえて来た声。
その声がする方を見ると。
見たことないイケメンの男性。
「え?」
ん?私??
「いや、そういうの初めて聞いたから」
するとこっちを向いて続けて話しかけてくる。
「うん。私も初めて言った」
「フフッ、何それ」
そう答えた私の言葉に思わずその男性が笑って答える。
「だってなんか今更誰かと付き合うとか面倒だし、自分の時間とか無くなるの嫌だし、仕事も続けたいし、結婚とか到底考えられないし。だけど恋する気持ち?みたいなモンはさ、無くすと女性としてダメな気もして。だからトキメキだけくれる人。いたらなーって」
私初めて会った人に何言ってんだか。
でも別にこういう場だからまぁいいか。
「あー、でもそれわかるかも。オレも特定の相手とか結婚とか面倒だし、でも誰かいてくれる楽しさは味わいたいみたいな」
「いや、あなたとはちょっと違うような・・・」
なんかそのイケメン度合と雰囲気でそういう言葉を言うと、ただモテてる男性が遊びで付き合うのがいいみたいにしか聞こえないんですけど・・・。
「でも見た感じモテてそうだからそんな心配ないんじゃない? 周りの女性放っておかないでしょ」
きっと何もしなくても雰囲気だけでカッコよさや色気が伝わって来る感じのタイプ。
「まぁ」
まぁって、そこは認めるんかい。
さすがイケメン。自分でモテてる自覚はあるんだね。
「でも、だからってそれで満たされて、本気になれるかっていうと別の話」
うん、きっと周りの女性が本気でもあなた本人が本気になれないだけなんだろうね。
「でもそんな感じでもトキメキ欲しいんだ?」
私の欲しいトキメキとこの人が言ってるトキメキが同じなのかはわからないけど。
「まぁだからといって誰でもいいってワケでもないから」
ですよね。そんな感じなら釣り合う相手もなかなかいないでしょうに。
「じゃあ、そんなあなたにトキメキもらえる相手は幸せモノだ」
ここまで雰囲気あって、いかにもモテそうなこんな男性と今まで出会ったことない私には、到底そんな気持ち感じることはないけれど。
「なら、試してみる・・・?」
すると少し意地悪そうに笑って思いもよらなかった言葉を問い掛けられる。
まさか自分がこのタイミングでそんな言葉をかけられると思ってなくて、不意打ちすぎて思わずドキッとする。
「なるほど。こうやってドキッとさせるワケね」
この人のさり気ない雰囲気と言葉に、素直に反応して一瞬トキメいてしまった。
だけど冷静に言葉を返す。
「ドキッとしてくれたんだ」
少し嬉しそうに、だけど怪しく微笑みながら返って来た意外な言葉。
「まさか自分がそんな不意打ちに言われるなんて思ってなかったし。でも確かにこういう感じだよね。うん、久々味わえたこういうの」
そうそうこういう感じ。
不意にドキドキ出来る感覚。
「あれ?もう今ので満足しちゃった感じ? もっとドキドキしたくない?」
だけど、なぜかまだ彼はさっきよりも色気をプラスして、誘うように意地悪そうに少し笑って煽って来る。
「いや・・それは・・・」
なんとなく、これ以上はこういう雰囲気ややり取りが久々すぎて、どう対応していいかわからなくなり始めてる。
「じゃあさ、一緒に試してみない? その新しい恋愛のカタチってやつ? なんかオレもそれ興味あるし」
そしてまさかの提案をされて戸惑ってしまう。
「私と・・あなたが?」
「そう。ちょうどよくない?お互い求めるモノ一緒だし。面倒なことは一切なし。お互いそのドキドキだけ楽しむ。面白そうじゃん」
そう言われて、なぜかそんな感じならいいかもなんて思いが一瞬頭によぎる。
いや、そうじゃなくて、私。
「そんな冗談みたいな話乗っかると思う?」
危なっ。
一瞬乗っかりそうだった。
「なら・・・本気だって言ったらどうする?」
すると、なぜかまたそんな突拍子もない提案を掲げられて揺さぶられる。
これ・・どう受け取れば?
本気ってどういう意味?
いや、ただからかってるだけのような気もするし。
正直この年齢で、そんなからかわれてるのか本気かもわからない軽いノリに乗っかる勇気はない。
っていうか、それこそ今更面倒。
だけど、彼のその言葉を言った時の視線と表情が、なぜか真剣に感じられて一瞬戸惑う。
「オレ、もっとドキドキさせられる自信あるけど」
戸惑ったまま返答しない私を見て、目の前の彼はひるむことなく、今度は更に自信たっぷりの余裕な顔で言い放つ。
これは駆け引き?
それとも本気?
「そうだな。じゃあ、もしどこかでまた会えたらその時またドキドキさせてよ」
結局私はどちらにも乗っかることが出来なかった。
もしかしたら、この人なら自分が思っていたドキドキやトキメキを感じることが出来るのかもしれないけど。
でも、いざそういう状況になると、なぜか気持ちが前に進まない。
そして結局はこういう場所での軽いノリと同じように、適当な言葉を返して逃げてしまう。
「へぇ・・・。もしまた会えたら今度こそ口説いていいってことね?」
「そういう風に思ってくれるならぜひ」
この人がその時も私をそんな風に意識してくれるとは限らないから。
きっと今の雰囲気で言ってる言葉なだけだろうし。
「あっ、でもこのお店はナシね」
「なるほど。ここじゃない本当の偶然ってことね」
「そっ。それなら運命なんだな~って思ってその誘い一緒に楽しむ」
ここまで言えば大丈夫でしょ。
さすがにそんな奇跡みたいなこと起こるなら、その時は乗っかってもいいかな。
正直こんなイケメンにそんなこと言われて悪い気はしないし、この人ならそういうトキメキだけの楽しみも出来そうな気がする。