テラーノベル
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――でも、確かにあそこにいた。
Mrs. GREEN APPLE の音も、声も、全部。
「……夢じゃ、ないよね」
自分に言い聞かせるように呟くと、ポケットのスマホが震えた。画面には、担任からのメッセージ。
“進路希望、まだ出てないぞ。明日までに考えてこい”
現実は容赦なく追いかけてくる。
「はあ……」
さっき少し軽くなったはずの心が、また重く沈みかけた、そのときだった。
イヤホンから、あの曲の続きを思わせるようなフレーズが流れ出した。
プレイリストに入れていたはずのない曲。
思わずスマホを見る。でも画面には、再生中の表示すらない。
「……え?」
不思議に思いながらも、その音に耳を澄ませる。
“選ばなかった未来も、きっとどこかで笑ってる”
聞いたことのないはずの歌詞なのに、なぜか懐かしい。
気づけば、美咲は駅とは反対方向へ歩いていた。音に導かれるように、細い路地へと入っていく。
やがてたどり着いたのは、小さなライブハウスだった。看板は古く、今にも消えそうな文字でこう書かれている。
「本日限定ライブ」
扉の前で立ち止まる。
入るべきか、帰るべきか。
ほんの少しだけ迷って――
「……行こう」
自分の足で、扉を開けた。
中は意外にも明るく、数十人ほどの観客がすでに集まっていた。そしてステージの上には、やっぱりあの三人。
Mrs. GREEN APPLE 。
今度は、はっきりと現実だった。
ざわめきの中、ボーカルの大森がマイクを握る。
「今日はちょっと特別なライブです」
その視線が、一瞬だけ美咲に重なった気がした。
「誰か一人にでも届けばいい、って思ってやります」
胸がドクンと鳴る。
(……私のこと?)
そんなはずないのに、なぜかそう思ってしまう。
演奏が始まる。
今度の音は、さっき公園で聴いたものよりも、ずっと強くて、ずっと優しかった。
歌詞が、心の奥に入り込んでくる。
“怖くてもいい 止まりそうでもいい
君のままで 進めばいい”
涙が、またこぼれた。
でも今度は、さっきと違う。
悲しいだけじゃない。
少しだけ、前を向けるような涙だった。
曲が終わると、会場は大きな拍手に包まれる。
美咲はその場に立ち尽くしたまま、動けなかった。
すると、ステージの上から声が届く。
「ねえ、君」
顔を上げる。
大森が、まっすぐこちらを見ていた。
コメント
1件
本当に参考にしていい?
りんご三兄弟