コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
私は決して裕福な育ちではなかった。身体を動かすことが大好きだった私は、幼稚園の友達が綺麗なバレエを踊る姿を見て、私もこんなふうになりたいという軽い気持ちでバレエを始めた。上品な習い事とも言えるバレエは、かなり背伸びをした習い事だった。それでも好きなことだったから続けたかった。
「来月からお金が払えなくなるの、ごめんね。」
ある日突然、バレエを金銭的な理由で辞めざるを得なくなってしまった。決して上手だったわけでもなかった。せっかくソリストの座を手に入れたのに、発表会に出ることはできなかった。その日から、自分の可能性を信じることができなくなった。誰も悪くない、仕方がないことなのに。
何年経ってもバレエを辞めた、あの日のことが忘れられなかった。だからかな。キラキラする世界は厳しいだろつけど、厳しいなりに思いっきり楽しんで、人に勇気や希望を届けられる来都くんが私の心の支えだった。
それからは、大学に行くために高校の推薦を狙って、苦手な勉強を頑張って、欲しくもない資格の勉強をして、点数を稼いで成績優秀者を貫いた。大学はずっとバイト漬け、毎日朝から夜まで頑張った。画面越しの来都くんからいつもエールをもらって、卒業できたんだ。
好きなことを学んだから、4年間があっという間に過ぎていった。振り返ってみれば、今の私を支えてくれたのはいつだって来都くんだった。
私のやりたいこと…「あの時のバレエをもう一度やりたい」私は不意にそう呟いた。来都くんは隣に来て、私を見て微笑んだ。「それでいいんだよ。絶対バレエやってたよね?姿勢も歩き方も、バレリーナみたいだよ。だから、ももは今でもバレエ、きっと踊れるよ。」やりたいことをやる。そんな人生うまく行ったらどんなにいいことだろう。私にはきっと無理、まだそう思ってしまった。
「僕ね、実はダンスも得意と思っていないんだ。好きなことも何かわからなかった。勉強ができて、せっかく良い高校に入ったけどアイドル活動をするために辞めた。自分が見えなくなった時なんて、僕だってあるんだよ。」少し俯きながら、長いまつ毛に水が浸った。泣いているのか、雨なのか。わからなかった。「なんで僕が今の人生を歩もうと思ったか。それはチャンスがあったから。その道で生きていきたい、そう思えるチャンスがあったから。安定しないし、みんなに嫌われたら終わり。でもね、そんなこと言ってたら好きなこともできない。それは、僕の人生じゃない」途中、声を詰まらせながら、それでも力強く私に話してくれた。どれだけ私を心配して、どれだけ私のことを想って言ってくれているのかがものすごく伝わった。今の環境を変えるには、自分が変わらないとダメだ。来都くんのおかげで、自分の失っていた自分に気付くことができた。その瞬間、来都くんが崩れるように倒れた。