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「すみません、早く救急車…来てください」
私はずぶ濡れになりながら必死に電話した。誰かに見られないように、誰かに知られないように。彼の立場を守って、知らない人が倒れていることにした。
「私がここに着いた時、すでに倒れてまして…」
私は必死に、早く目覚めてほしいと願った。私のせいでこんなことに…何度も溢れ出しそうになる涙を堪えた。
「それでは病院に向かいますので、ご報告ありがとうございました。」救急隊員が来都くんを運び出そうとした瞬間、私の手を誰かに握られた。「この人も連れてってくだ…」
意識がはっきりしない中、私の手を握って離さなかった。そのまま救急車に乗り込み、病院に向かった。
ずっと目を閉じたまま、意識がない来都くん。鳴り止まない電話…おそらく事務所からの連絡だろう。ごめんなさい。どうしよう。これで目が覚めなかったら…自分の元から来都くんがいなくなってしまうのを、私は心の底から嫌だと思った。
「過労によるものです。ご安心を」
医師の判断は早かった。彼の職業も知っていて、ここら辺の人だということもあってか前々から気にしていたらしい。
医師は私の椅子を用意しながら、そっと囁いた。
「この間のあなたと同じですよ。彼は」
えっ、と思う間も無く走って部屋を出ていってしまった。そっか。きっと来都くんは私が過労で倒れたことも知っていたんだ。そう診断されたのを、彼が彼なりの優しさで言わないでいてくれたんだね。
もし、私がこの仕事を疲れるまで頑張りたかったら…過労って言葉で頑張る気力を失ってしまうとか考えちゃったんだろうな。
私も、来都くんには伝えないでおこう。言葉選びを考えていたら、何だか眠たくなってきた。あの時の来都くんのように、布団を枕にして眠った。