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まえがき

「神」「仏」

誰もがその存在を認めようとしない。

目に見えないものは信じない。

だが「妖怪」「幽霊」という存在は、目に見えなくてもその存在を信じる。

上手く矛盾するものだ。

人間は他人の恐怖こそ求めている。

人間にとって、妖という存在は都合のいいものだろう。

それに比べて、神や仏という曖昧な存在はどうでもいいのだろう。

「 神というものは、世界を説明するために考え出された、ただの言葉にすぎない。」

ギュスターヴ・フローベールの言葉を借りて言うなら、本当にその通りだと思う。

保育園の子供が言うことを聞かない時に「鬼が出るぞー!」と脅しで使うのと同じようなものなのだろう。

勝手な考えだが。

だが、その神の中にも皆が信じる、そして崇める神様がいる。

神は神でも幸せを呼ぶ神ではない。

それは、「死神」である。

- - - - - - - - - - - - - - - - -

「新入生の皆さん、この東改高校にご入学おめでとうございます。」

俺は、高校1年生の莞崎 栞。

新しい高校生活にワクワクしつつ、勉学にも励もうとしている普通の高校生だ。

この高校は、都会と田舎の間に建っていて、何もないとも言えないが、何かあるとも言えない。いわゆる普通の高校である。

「皆さん、各クラスに移動してオリエンテーションを行ってください。」

1年のクラスは2クラスあり、俺は2組。

クラス内の人数も30人前後といったところで、多くも少なくもない。

「2組の皆さん。まず、自分の席に着いて隣の席の人に挨拶を。」

俺の席は廊下側から2列目の前から4番目。

隣の席の人は…

「あの僕、光峰 遊って言います。よろしくお願いします。」

男か…いや、もしかしたら女かも…。

そう考えさせられるほど、可愛い見た目をしている。

髪型はショートカットで、男って感じだが、小柄で可愛い。

思わず見惚れてしまうかのような…

「あの…名前は?」

いけない。思わず見惚れてしまった。

「俺は莞崎栞。よろしく。」

「うん!」

笑った顔も可愛い。

「僕のこと好きに呼んでくれて構わないから」

「じゃあ、光峰でいいか?」

「うん。僕は莞崎君って呼ぶね」

呼び捨てでいいのに。

「よし。隣の人に挨拶は終わったかな?じゃあ次は先生の挨拶をしようか」

そう言った先生は、黒板に自分の名前を描き始めた。

「よし。私は神月 玲。神月先生と呼ぶように。」

そう名乗った神月先生は見るからに若い教師だ。高身長で顔はイケメン。丸眼鏡を掛けた、そこだけ頭が良さそうな教師。

「それじゃあ、先生の事をみんなにもっと知ってほしいから質問タイムといこうか」

そう先生は満面の笑みで言った。

「はい!」

1人の男子が手を挙げる。いかにもこのクラスのムードメーカー的存在だ。

「神月先生はー付き合ってる人とかーいるんですかァー?」

それ女子がする質問だろ。

「いないよ。ちなみに結婚もしてない。」

そう言って先生は左手を挙げた。

指輪はしてないし、していたような跡もない。

クラス内の緊張が解けたのか一気に喋り声が上がる。

「はーい!」

次に手を挙げたのは女子だ。

「じゃー先生は好きな人とかいるんですかー?」

先生を狙っている女子もそう少なくはないだろう。あのルックスじゃあ婿に出来たら万々歳だ。

この質問に先生は頭を抱えて悩んでいる。

「そうだねぇ…」

……?

先生がこっちを見た。

「いるよ。好きな人。」

いや、見たのは俺じゃなくて光峰だ。

「えぇー!誰ですかー!」

先程の何倍もクラス内が騒がしくなる。

俺は先程の視線を確認するため光峰の方を向く。

光峰は前を向いたまま無表情だ。はて、俺の勘違いか。

「よし!先生への質問はそこまでにして、自己紹介プリントを作ってきたから、みんなで書こうか!」

そう言って先生は自己紹介プリントを配り始めた。

自己紹介といってもそう難しいものは書かれてなく、名前・好きな教科・将来の夢・趣味・これからの高校生活について、などごく一般的なものだ。

だが、いざ書こうとすると難しいものである。

何がかというと、将来の夢。

高校生にもなってまだ将来やりたいことが見つからないのだ。

なんて書こうか。

ブツブツと呟きながらその空欄を埋めようとする。

他のクラスメイト達は書き終わってワイワイお喋りしている。

うーん……

「よーし。そろそろ集めるぞー」

その一言で咄嗟に“模索中”と書いてしまった。

「後ろからプリント集めてきてくれ」

俺はスタートから失敗してしまったのでは、と回収されるプリントを目で追いながら悶々とした。

「あれ、1人名前を書いてない人がいるぞ」

けれど書き方が小学生ではない以上恥ずかしくはないだろう。

「誰も出てくる気配がないから1つづつ読み上げていくぞー」

何故か皆が急に静かになるのでこちらも自然と先生に耳を傾けた。

「好きな教科は特になし、将来の夢は模索中?…ふふ、面白い。えーっと、趣味はお寺や神社巡り…」

聞き覚えのあるワードが飛んでくる。

自己紹介プリントって回収されたら読み上げるって言ってたっけ?

「名前無しだぞー誰かなー」

そうだ。将来の夢に気を取られすぎて書くのを忘れてた。

「あの、俺のです」

そう言って小さく手を挙げる。

「お、プリントを取りに来て名前を書くように」

皆の視線が俺に集まる。

その中立ち上がり前へ歩くのは苦痛である。

「あの、すみませんでした」

「いいや、いいんだよ。それにしても面白いことを書くね。莞崎くん」

そう先生は笑顔で言った。

あれ俺…

「名前、」

もう顔と名前が一致してるのか。

「あぁもしかして間違ってた?名簿の中から適当に言ったんだが」

適当かよ。

「はあ、そうなんですね。名前書いてきます」

当たってます。なんて言いたくない。

「ねぇねぇ」

席に着くなり光峰が俺の肩に触れてきた。

「ん?どした?」

「莞崎くんって、お寺とか神社巡りが趣味なの?」

いきなり問われて驚いている気持ちと、なぜ知っているのかという疑問が一瞬で混ざる。

「なんで知ってるんだ?」

「いや、さっき神月先生が言ってたから」

あーそういや言ってたな。

俺が名前を書き忘れてしまっただけで皆に俺の事を知られてしまった。

一躍有名人ってわけだ。

「そうだけど、なんで?」

「じゃあ、学校の近くにある神社、知ってる?」

学校の近くなら2つあった気がする。

「あの金運の神社?」

「ううん、違う。もっと近く」

「学問の?」

「いやもっと近く」

そんな近くに神社なんかあっただろうか。

学問の神社でもここから近いが、せいぜい自転車を全力でこいで30分と言ったところだ。

それ以上近くにあるならリサーチ済みだが。

「学校から出て歩いてすぐの所に神社があるの」

「へぇ、なんの神様?」

そう聞くと光峰は少し険しい顔をした。

「それは、その場に行って見た方がいいと思う」

まぁ、それも神社巡りの面白さである。

「じゃあ、なんて名前の神社?」

そう聞くとまた同じような顔をした。

「それも、その場に行って見た方がいいと思う」

こいつ教える気更々ないんじゃないか?

行き方くらいは教えてくれないと困るんだが。

「それは教えるよ!えっとね、」

教えてくれた。

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