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雨が降っている。
しばらく止みそうにない。
そのため、ナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)たちは部屋の中でのんびりしている。
「あれ? シズクがいないな。おーい、シズクー! いるかー!」
ナオトがそう言いながら、お茶の間や台所に行っているとミノリ(吸血鬼)が彼の元にやってきた。
「シズクなら、外にいるわよ」
「外? 外で何してるんだ?」
「さぁ? なんかずっと雨を見てたわよ」
「そうか。ありがとう、ミノリ。助かったよ」
「どういたしまして」
彼が玄関の方に向かったのを見計らうと、ミノリ(吸血鬼)はその場に膝をついた。
「あたしは本能に負けたりしない……。吸血衝動なんて気合いでどうにかしてみせ……」
その時、彼女の頭にチョップした者《もの》がいた。
「ちょ、何すんのよ! あたしは今、危険な状態なのよ!」
彼女が振り返ると、そこにはコユリ(本物の天使)がいた。
「マスターと少し話しただけで吸血衝動に襲われるなんて、あなたらしくないですよ」
「う、うるさい! あんたには関係ないでしょ!」
「いえ、関係あります。あなたが吸血衝動のみで行動するようになったら、マスターが悲しみます。私はそんなマスターの顔を見たくありません」
「あっ、そう。じゃあ、一人にさせてよ」
「それは無理です」
「どうしてよ」
「それは……まあ……あれですよ。とにかく吸血衝動が収まるまでは、そばにいてあげます」
「別にあんたに心配されるほど苦しいわけじゃないけど、まあ少しはマシになるかもしれないわね。えっと、じゃあ、背中|摩《さす》ってもらえる?」
「はい、分かりました」
それからしばらくの間、コユリ(本物の天使)はミノリ(吸血鬼)の背中を摩《さす》っていたそうだ。
*
「よう、シズク。何してるんだ?」
「え? あー、まあ、雨を見てるだけだよ」
「そうなのか?」
「うん、そうだよ」
「そうか」
「……ねえ、ナオト」
「んー? なんだ?」
「私の名前をナオトが付けてくれた時も雨降ってたよね?」
「え? あー、そういえば、そうだったな」
「私ね、その時のことを思い出してたの」
「へえ、なんかいいな。そういうの」
「そうかな?」
「ああ、そうだとも。自然の音を聞くと心が癒《いや》されるし、体も休めることができるから俺は嫌いじゃないぞ」
「そう。じゃあ、私と一緒に雨の音、聞こうよ」
「え? ここでか? 少し寒くないか?」
「大丈夫だよ。ここで座って身を寄せ合えば寒くないよ」
「それは……まあ、そうだが」
そんなことをナオトとシズク(ドッペルゲンガー)が話していると、ルル(白魔女)がスススーッとやってきた。
「二人とも何してるのー?」
「え? いや、別に何も……」
「今からナオトと一緒に雨の音を聞くんだよ。ルルちゃんはどうする?」
「もちろん参加するよー。ほら、ナオト。早く座ろうよー」
「お、おう、分かった」
結局、こうなるのか。
「ついでにナオトの血を吸わせてもらうよー。いいよねー?」
「どうせダメって言っても吸うんだろ?」
「うん、吸うよー」
「ルルちゃんは欲望に正直だね」
「褒め言葉として受け取っておくよー。それじゃあ、いただきまーす」
ルルは白魔女と吸血鬼のハーフであるため、たまにナオトの血を吸う。
ルルは彼の首筋を一度ペロリと舐めた。
その後、優しく彼の首筋に噛み付いた。
「ナオト、私のこと抱きしめてー」
「え? あー、いいぞ。片腕しか使えないけど、いいか?」
「うん、いいよー」
「分かった」
彼がシズクを抱き寄せると、シズクはとても幸せそうな顔になった。
雨はまだ止まない。
いつ止むのかは分からない。
しかし、いつかは止む。
止まない雨などないのだから。