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かくよ
文化祭まであと一週間。
僕は最近、少し困っていた。
「先輩!」
「おはようございます!」
「先輩!」
理由はもちろん蓮だった。
朝も。
昼も。
放課後も。
気づけば隣にいる。
まるで大型犬だった。
◇
昼休み。
屋上。
いつもの場所で昼食を食べていると、扉が開いた。
「湊ー」
悠真だった。
その瞬間。
「先輩いた!」
さらに蓮まで現れる。
なぜだ。
僕は少しだけ頭を抱えた。
「失礼します!」
蓮は当然のように隣へ座る。
悠真の反対側。
三人で並ぶ形になった。
妙な空気だった。
「蓮だっけ」
悠真が言う。
「はい!」
「元気だな」
「よく言われます!」
蓮は満面の笑み。
悠真も笑っている。
だが。
二人ともどこか探り合っている気がした。
◇
「先輩」
昼休みの終わり。
蓮が僕を呼び止めた。
「文化祭の話なんですけど」
「うん」
「本当に一緒に回ってくれます?」
不安そうな顔。
「約束したし」
「よかった……」
心底安心したように笑う。
その笑顔を見て。
僕は少しだけ胸がざわついた。
蓮は後輩として懐いているだけだと思っていた。
でも最近。
少し違う気がする。
◇
放課後。
写真部の展示準備。
蓮は脚立に乗って飾り付けをしていた。
「危ないぞ」
僕が言う。
「大丈夫です!」
その瞬間。
バランスを崩した。
「あっ」
ぐらり。
落ちる。
反射的だった。
僕が腕を伸ばす。
蓮の体を支える。
「危な……」
言いかけて止まる。
蓮が固まっていた。
顔が真っ赤だった。
「蓮?」
「……先輩」
「?」
「近いです」
言われて初めて気づく。
距離が近かった。
慌てて離れる。
蓮はさらに赤くなった。
そして。
小さく呟いた。
「やばいな……」
「何が?」
「なんでもないです!」
慌ててそっぽを向く。
その顔は。
どこか切なそうだった。
◇蓮視点
その日の帰り道。
俺は一人だった。
夕焼けの空を見上げる。
胸が苦しい。
理由は分かっている。
今日。
湊先輩に支えられた時。
心臓が止まりそうになった。
優しくて。
静かで。
誰よりも居心地がいい。
気づいてしまった。
これは憧れじゃない。
「……好きだ」
誰もいない道で呟く。
俺は。
湊先輩に恋をしてしまった。
◇悠真視点
一方。
その頃。
俺はグラウンドで練習していた。
だが集中できない。
蓮のことが頭から離れない。
最近。
あいつは湊ばかり見ている。
気のせいじゃない。
そして。
湊も蓮には少しだけ優しい。
それが面白くなかった。
「悠真!」
監督の声が飛ぶ。
「集中!」
「すみません!」
返事をしながらも。
胸の奥はざわついたままだった。
◇湊視点
翌日。
放課後。
展示準備を終えた僕が廊下を歩いていると。
角を曲がった先で声が聞こえた。
「蓮」
悠真だった。
思わず立ち止まる。
見つからない位置。
聞くつもりはなかった。
でも。
足が動かなかった。
「なんですか?」
蓮が答える。
少し緊張した声。
そして。
悠真は真っ直ぐ聞いた。
「お前さ」
静かな声だった。
「湊のこと好きなの?」
僕の心臓が大きく跳ねた。
廊下に沈黙が落ちる。
蓮は数秒黙って。
やがて。
小さく笑った。
「だったらどうします?」
その言葉を聞いた瞬間。
悠真の表情が変わった。
そして神崎も。
初めて見せる真剣な顔をしていた。
文化祭を前に。
二人の想いはついに交差し始める――。
おわりんちょす
また次の作品で
ばいばい
コメント
3件
じじさん、第5話お疲れさまでした!最終回、一気に駆け抜けて読ませてもらいました。 蓮くんの「好きだ」の気づき、夕焼け道でのあの呟きがすごく切なくて、胸が締め付けられました。あの瞬間から彼の湊先輩を見る目が全部恋に変わったんだなって。そして悠真くんの焦り、まさかの直球質問が熱かったです。「だったらどうします?」って返した蓮くん、強気でかっこよかったなあ…。 二人の想いが交差する終盤の空気感、じっとりと甘くて、最後まで素敵でした。じじさん、本当に楽しい時間をありがとうございました🌷
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