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読了しました。第九章、とても温かいエピソードでしたね。 何より印象的だったのは、千弥ちゃんの「しあわせ」という一言。あのシーンで、このお話がただの看病回ではなくて、**家族や周りの人がいるからこそ千弥ちゃんが笑顔でいられる**という構造をしっかり描き切っていたのが素晴らしかったです。 「しろまる」と名付けたテディベア、社員のみんなからのメッセージ……細かいディテールが、世界のぬくもりをちゃんと伝えてくれていました。37.4℃というリアルな熱の数字も、「回復過程」が丁寧に描かれている感じがして好きです。 次章、千弥ちゃんが完全に元気になってまた騒がしい日常が戻ってくるのを楽しみにしてますね。
第九章 みんなの「おだいじに」
朝八時。
結城家のリビングは、いつもより静かだった。
キッチンでは千景がおかゆを作っている。
お米がことことと優しい音を立て、湯気がふんわりと立ち上る。
(少しでも食べられるといいな……。)
時々時計を見ながら、千景は二階の千弥の部屋へ向かった。
そっとドアを開ける。
「ちーちゃん。」
「……ん。」
千弥はゆっくり目を開けた。
昨夜より顔色は良くなっていたが、まだ少し熱っぽい。
「おはよう。」
「おはよぉ……にぃに。」
「眠れた?」
「うん……いっぱい。」
「熱、もう一回測ろうね。」
「うん。」
体温計を脇に挟み、静かに待つ。
ピピッ。
37.4℃
「少し下がったね。」
「ごうかく?」
千景は思わず笑う。
「うん、昨日よりずっといいよ。」
「やったぁ……。」
まだ力はないものの、その笑顔を見て千景の胸のつかえが少し軽くなった。
「少しだけ、おかゆ食べられるかな?」
「たべる。」
ベッドを少し起こし、千景は小さなお盆を運んできた。
湯気の立つ卵入りのおかゆ。
細かく刻んだ野菜。
すりおろしたりんご。
「いただきます。」
「いただきます。」
千弥はゆっくりと一口食べる。
「……おいしい。」
「よかった。」
二口。
三口。
昨夜はほとんど食べられなかったのに、今日は少しずつ口に運べている。
「無理しなくていいからね。」
「うん。」
最後には半分ほど食べることができた。
「えらい。」
千景が頭を撫でると、千弥は照れくさそうに笑った。
午前十時。
ピンポーン。
インターホンが鳴る。
「はーい。」
玄関を開けると、そこには遥が立っていた。
「おはよう。」
「はる。」
遥は両手に紙袋を持っている。
「ちーちゃんのお見舞い。」
「ありがとう。」
中には、消化の良いゼリーや果物、それに新しいテディベアの絵本が入っていた。
はむ
849
臣桜
198
のあるくん8月1日まで活動休止
41
「ちーちゃん、起きてる?」
「うん。」
「会っても大丈夫?」
「もちろん。」
部屋のドアを開ける。
「こんにちは、ちーちゃん。」
「……はるにぃ!」
少し弱々しいけれど、嬉しそうな笑顔が咲いた。
「きてくれた。」
「もちろん。」
遥はベッドの横へ椅子を寄せる。
「熱はどう?」
「さがった。」
「よかった。」
「はるにぃ。」
「ん?」
「ありがとう。」
「何が?」
「きてくれて。」
その素直な言葉に、遥は思わず目を細めた。
「僕も会いたかったからね。」
「これ、お土産。」
紙袋から一冊の絵本を取り出す。
「くまさん!」
千弥の目がぱっと輝く。
「新しく出たテディベアのお話。」
「ほんと?」
「昨日見つけたんだ。」
「うれしい……。」
千弥は大事そうに胸へ抱きしめた。
「あとね。」
今度は小さなぬいぐるみを取り出す。
手のひらに乗るくらいの、小さな白いテディベア。
「わぁ……。」
「会社のみんなと一緒に選んだんだ。」
「みんな?」
「うん。」
「『ちーちゃんが早く元気になりますように』って。」
千弥はしばらく何も言えなかった。
そして、胸いっぱいにぬいぐるみを抱きしめる。
「……うれしい。」
その目には、少し涙が浮かんでいた。
リビングでは、千景がお茶を淹れていた。
遥も降りてきて、二人で話し始める。
「会社は?」
「今日は大丈夫。」
「迷惑かけてない?」
「何言ってるの。」
遥は笑う。
「みんな『社長は今日は絶対に来ないでください』って。」
「え?」
「『ちーちゃんについていてください』って。」
千景は驚いたように目を見開く。
「それからね。」
遥はスマートフォンを差し出した。
社内チャットには、たくさんのメッセージが並んでいた。
『ちーちゃん、お大事に!』
『元気になったらまた遊びに来てね!』
『くぅちゃんにもよろしく!』
『社長もちゃんと休んでください!』
『みんな待ってます!』
『無理は禁物ですよ!』
千景は一つひとつ読みながら、小さく笑った。
「本当に優しい人たちだ。」
「ちーちゃんがみんなに愛されてる証拠だよ。」
午後。
千弥は少し元気になり、リビングのソファで絵本を読んでいた。
左にはくぅちゃん。
右には遥が持ってきた白いテディベア。
「おなまえ……。」
少し考えてから、嬉しそうに言う。
「しろまる。」
「可愛い名前だね。」
千景が笑う。
「くぅちゃんと、おともだち。」
「そうだね。」
遥も微笑んだ。
三人は並んでソファに座り、穏やかな午後を過ごす。
窓から入る風は心地よく、部屋には優しい時間だけが流れていた。
千弥は二人を見上げ、にっこり笑う。
「にぃに。」
「ん?」
「はるにぃ。」
「なあに?」
「ちぃね。」
「うん。」
「しあわせ。」
その一言に、千景と遥は顔を見合わせ、同じように笑った。
「僕たちもだよ。」
「ちーちゃんが笑っていてくれることが、一番幸せだから。」
千弥は少し照れながら、二匹のテディベアをぎゅっと抱きしめた。
結城家には、またいつもの穏やかな笑顔が戻り始めていた。
ーーー
第九章 終わり
第十章へ続く。