テラーノベル
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午前十一時少し前から、さすがに喪服ではないものの、この暑いのにフォーマルなスーツを着込んだ女性が三々五々やって来た。
二十代から三十代らしい、十人の女性が本堂に集まり、普段はだだっ広く感じる本堂がせま苦しく思えるほどだった。
最後に彼女らの上司とおぼしき恰幅のいい中年男性が、これまた暑苦しいスーツ姿で運送業者二人とともに到着した。
あの時と同じように、大きなドローンがケースごとロボットを寺の庭まで運んできた。
本堂の本尊の前にケースを置き、業者たちが上蓋をはずすと、正源は一瞬本物の人間かと目を疑った。
二十代の女性を模したアンドロイド型のロボットで、体形は本物の人間の女性と全く同じだった。よく見ると顔の皮膚は明らかに作り物だと分かるように、わざと合成ゴムが使われていた。
顔までがあまりにも人間そっくりだと、気味悪がる客もいるのだろう。
今回は人数が多いので、横たえられたロボットの正面に正源だけが座り、女性たちにはその後ろに適当に並んで座ってもらった。
最後にやってきた男性上司と業者二人は、入りきれなかったのか遠慮したのか、縁側の板の間の上で胡坐をかいていた。
正源は前回の段取りをなぞって略式の読経をした。ただし、今回は小さな香炉をロボットの頭の脇に置き、女性たちに焼香をしてもらった。
正源が引導の紙をロボットの頭部に置き、供養の終了を告げて振り返ると、女性のほとんどがハンカチを目元にあてていた。正源に一番近い場所に座っていた女性が一礼して言った。
「ありがとうございます、ご住職さま。これで安心してヒトミちゃんを送り出せます」
「坊主の務めを果たしただけでございます。このロボットはヒトミちゃんと呼ばれていたのですか?」
「はい、四年間受付をやってくれました。私たちにとっては、ロボットというより、もう同僚の一人という感じで」
「そうですか、それでわざわざ供養まで。ロボットもきっと喜んでいますでしょう」
業者がロボットをドローンで運び出し、それを見届けた女性たちは思い思いに寺から去って行った。
上司の男が布施を渡すというので、事務所の方へ招き入れた。正源が冷蔵庫から取り出した麦茶を差し出すと、男は心底ありがたそうな表情になって、大きくネクタイを緩めた。
正源が封筒に入った布施を受け取ると、男は好奇心丸出しで訊いてきた。
コメント
1件
うわぁ…第13話、すごく沁みました。 ロボットの「ヒトミちゃん」を同僚として悼む女性たちの姿、正源さんの読経と焼香の静かな尊さが、胸の奥にじんわり響いてきました。 「ロボットというより、もう同僚の一人」という言葉、重いのに温かくて、読んでて涙が出そうになりました。 ダークじゃなくても、こういう「優しい別れ」の話も、菊池川さんの筆は本当に丁寧で、心がぎゅっとなります。 次も読みますね、ありがとうございます🤍🥀